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偽りステータス冒険者は神秘級ステータス  作者: すみ 小桜


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038 ☆グレイブの心境☆

 冒険者ギルドの二階には、部屋が十個ほどあった。その一つにグレイブさんと一緒に通され、待っている様に言われた。

 ここは窓もなく、開け閉めするのには、鍵が必要だった。つまり私達は、監禁された……。


 これって逃げると思われているとか? あの人達の仲間と思われている?

 それとも……。


 「ごめんな……」


 向かい側に座るグレイブさんがボソッと言った。

 部屋には椅子が二つとテーブルが一つあり、私達は椅子に座っていた。


 「俺が君達を巻き込んだ……」


 「え? いえ、グレイブさんも知らなかったんだから……」


 グレイブさんは、首を横に振る。


 「俺がマーリンさんと一緒に仕事させてしまったから、カムラッドに入る事になってしまって……」


 「あ、でも、それがなくても私達カムラッド探していたからきっと……」


 「君に鑑定出来るかテストするのは知っていた」


 私の言葉に被るようにグレイブさんは言った。


 「彼らが俺を客引きに行かせている間に、何かしているのも薄々気が付いていた……」


 「え……」


 グレイブさんは、俯いたまま更にそう言った。


 「客なんて来るわけない。大抵の人は冒険者ギルドを通す。訳ありかそれを知らない者だけだ……。それなのに行かされていた。だから俺がいたら邪魔なんだと思い、時間をいつも潰していたんだ……」


 そうだったんだ。だからマーリンさんの事も知らなかったんだ。

 あれ? でもなんで試験までしてマーリンさんは、カムラッドに入ろうとしたんだろう? って、試験いらなくない? 一応知り合いだったんだよね?


 ……まさかと思うけど、私達に接触する為にとか?

 いやでもそんな偶然……。


 アーチさんは、マーリンさんに予知があって私達に接触できたんだろうって言っていたっけ……。

 でも、随分回りくどい事するよね? 殺すだけなら寝込み襲うとか出来たよね?


 寝込み……わ、私の体も目的だったから?

 それもで、あの夜にリーさんを殺してからなら可能のような……。


 うーん。それ以外に何か目的でもあったのかな?

 例えば、あの場所じゃないといけなかったとか?


 ガチャ。

 突然ドアが開きは、私達は振り向いた。


 「よう、お待たせ」


 入って来たのは、アーチさんとリーさんだった。


 「今更だけどフェアル、怪我はないか? ……って、何か顔が赤くないか?」


 アーチさんは私にそう言ったあと、チラッとグレイブさんを見た。

 グレイブさんが何かしたと思っているんじゃ……!


 「あ、えっと。ちょっとこの部屋暑いかも……」


 「うん? そうか?」


 私はアーチさんの返事にうんうんと頷いた。


 「リー……。すまなかった!」


 グレイブさんは立ち上がって、リーさんに頭を下げた。


 「え? あ、いえ。グレイブさんが知らせに行ってくれたので、俺達助かったんですよ? お礼を言うなら俺達です。ありがとうございます」


 リーさんも、軽く頭を下げる。

 そう言われれば、そうだね!


 「ありがとうごいます!」


 私も慌ててそう言って、頭を下げた。


 「礼を言われる事なんてないさ。客引きに言っている間に、何かしているのだろうとは思っていたんだから……。もっと早く確かめていればこんな事にはならなかった……」


 「なるほど。何かが行われているとは、思っていたという事だな」


 アーチさんの言葉に、グレイブさんは素直に頷いた。


 「グレイブさんに聞きたいんだけど、あのカムラッドに入ったのはいつから? どんな風に入ったの?」


 アーチさんではなくて、リーさんが質問をした。グレイブさんは少し驚いた表情を見せるも語り始めた。


 「俺は剣士で魔力3だった。剣士なんてありふれた職業だし、中々受け入れてくれるところがなくて。そんな時に声を掛けられたんだ。カムラッドを設立したから仲間にならないかって。剣士だけのカムラッドだからと……」


 それを聞いた、アーチさんとリーさん二人共が険しい顔つきになった。二人はもしかしたら同じ事を考えているのかもしれない……。

 後でリーさんに聞いてみよう!


 「マーリンが入る事になったきっかけは? 剣士だけのカムラッドになぜ彼が?」


 アーチさんが質問をする。


 「よくわからないけど、他国から来た者で行くあてがないからって、個人の依頼を受けて仕事が出来るようならって……。でもマーリンさんって、ムイさん達の知り合いだったんですよね? もう何がどうなっているやら……」


 グレイブさんは、困惑した顔つきになった。

 そうだよね。知り合いなのにテストするなんて、おかしいもんね。

 やっぱりそうなると、私達と接触する為にやっていたって事だよね? あの日、私達がカムラッドを探しに来る事がわかっていた……。


 そう考えると、予知って凄い!!


 「で、あの部屋には一度も入った事はなかったのか?」


 「魔法陣が描かれていた部屋ですか?」


 アーチさんの質問にそう聞き返す。


 「そうだ」


 「いえ、入った事はあります。でも、一、二年したらあの部屋に鍵を掛ける様になって、それからは見た事はなかったです」


 その答えに、アーチさんは頷いた。

 グレイブさんって確か23歳だったよね? 15歳で冒険者になったとして、六、七年前からあそこで鑑定をしていたって事?


 「ちょっと待てよ。あの魔法陣ってマーリンが描いたんじゃないのか?! まだ15歳にもなってないだろう?!」


 アーチさんが驚いたように言った。


 うん? 本当だ!! マーリンさんって確実にグレイブさんより年下だもんね。もしマーリンさんが描いたのなら凄い才能あったんだよね、きっと。素晴らしい魔法陣だって、アーチさんが言っていたし……。


 「賊の中に魔法陣が描ける奴がいて、マーリンに鑑定をさせていたって事か?」


 アーチさんは、難しい顔をしてそう呟いた。


 「これはあいつらを絞らないとダメだな」


 あいつらってムイさん達の事だよね? なんかアーチさんが怖い顔つきになってる! 本気だよ!


 「あ、そうだ、フェアル」


 「はい……?」


 アーチさんは怖い顔つきではなく、ニコッと話しかけて来た。それはそれで、何か企んでいるようで怖いんですが……。


 「お前、ブラックバードに入るか?」


 「うん? バード? 鳥?」


 「ちょ……それ、断りましたよね?」


 私の代わりにリーさんが、そう答えた。


 「今はフェアル自身の事だろう?」


 「えっと、何の話かわからないんだけど……」


 私はアーチさんとリーさんの顔を見比べた。


 「お前達を助け出した奴らいるだろう? 事務所に乗り込んだ奴らも同じ者だ。そいつらがブラックバード。Bクラスのカムラッドの連中だ」


 「え? B?」


 それって上から二番目のランクのカムラッドでは? 何故そこに?


 「お前は、魔力7あるし問題ない」


 「魔力の問題じゃないだろう? 入ったところで何も役に立たない!」


 「え……。フェアルさんって魔力7? リーより上!?」


 グレイブさんが凄く驚いて私を見ている。

 やっぱり凄いのかな? でもリーさんの言った通り役に立たないと思う。魔力じゃない!


 「あ……俺の事はいいから二人共そこに入りなよ。俺は……冒険者辞めるよ。賊と一緒に居た奴なんて、受け入れてくれる所なんてないだろう?」


 グレイブさんは、悲し気な顔でそう言った。

 確かに同じカムラッドだった人だと、入れてもらえなさそう……。


 「なるほど。それもそうだな。じゃお前達、どうせだからカムラッド立ち上げろ!」


 立ち上げろって、そんな簡単に……。お金かかるんじゃなかったの?


 二人を見れば、リーさんもグレイブさんも、アーチさんの提案に凄く驚いた顔をしていた。

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