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偽りステータス冒険者は神秘級ステータス  作者: すみ 小桜


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036 ★腹黒上司は語る★(リー視点)

 パタン。

 俺は静かにドアを閉めた。


 「で? 俺に話って何ですか?」


 ムイさん達が連行され、俺に話があるとアーチさんが俺だけマスターの部屋に呼んだ。

 あぁ、フェアルに色々口止めする暇がなかったが大丈夫だろうか?


 「まあ、座れ」


 ドサッとソファーに座ると、俺にも勧める。言われた通りアーチさんの前のソファーに座った。


 「お前さ。もう少し魔法陣の勉強しておけよ。何でそれだけ知識がないんだか」


 俺の知識の大半が自動鑑定によるものだからだよ!

 自動鑑定は魔法陣に使えない。いや使いたくない。大きさに関係なく、大量の情報によってブラックアウトするから。まあそれでも、目が覚めればちゃんと鑑定は終わっているけど。


 俺は職業鑑定の魔法陣を一度鑑定してしまった事があった。だからあれが本物だとわかった。


 「で、あいつらと何があったか話せ」


 足を組みソファに踏ん反り返る様な格好でアーチさんが聞いて来た。

 困った。フェアルと打ち合わせをしていない。


 「あいつらはフェアルと俺に、あのファビオンさんが連れて来た三人の男を鑑定させようとしていた」


 俺が話終わってもジッとこっちを見ている。


 「うん? それだけか?」


 「それだけです」


 こういう時は嘘は言わない方がいい。


 「お前、もっと細かく報告すれよ。そんなのあの状況見ればわかるだろう?」


 報告って……。

 呆れた様にアーチさんが言うが、俺はあんたの部下じゃない!


 「それより俺は、あなたに嵌められたんですよね? あいつらが賊だって知っていて紹介状書いた。違いますか?」


 「勿論そうだが? それをわかっているのに何故細かく報告しない」


 「俺はもう、あなたの部下じゃありませんので!」


 俺がそう返すと、怖いぐらい鋭い目つきで見据えられた。そして、背もたれに預けていた体を起こした。


 「そうか……。じゃ、部下になったら話してくれるって事だよな?」


 「………」


 何だそれ? 職業鑑定の仕事に戻すって事か?

 何を企んでいる?


 「お前、俺を鑑定した事あるだろう?」


 「え?」


 何だいきなり……。それとこれと何の関係が?


 「フェアルだけじゃなく、他の奴らから聴取したらきっとわかると思うけど?」


 「何がいいたい?」


 「お前は詰めが甘い。証拠を残しすぎ」


 証拠って……。俺は今回何もしてないんだが。


 「だからきっと、今回も証拠が残っている……自動鑑定した証拠がな」


 腕を組んでニヤッとして、自信満々に言った。

 俺はごくりと唾を飲み込んだ。


 そうだった。この人は、俺が自動鑑定のバットスキルを持っているのを知っているんだった。だったら俺が、ファビオンさんの名前を言い当てた事がわかれば、職業鑑定した事がバレるって事か……。


 参ったな。これはフェアルを口止めしてもダメだ……。


 「で、お前本当はMPいくらあるんだ?」


 「自分のステータスなんてわかるわけないでしょう?」


 せめて自分のは出来ない事にしておかないと……。

 この国は、鑑定できる場所が限られている。余程優秀な者じゃないと、今のステータスの確認なんてしない。そうそれで事足りるって事だ。


 「何お前、フェアルに鑑定してもらってないのか?」


 あぁ、そういう意味だったのか。


 「してもらってないですね。俺はあなたと違って、ステータスに興味はありませんから」


 「そうか。じゃ、本題に入ろうか」


 スッとアーチさんは真面目な顔つきになった。


 「一応、合格だ。だから俺の部下にしてやる」


 「………」


 部下にしてやるって……俺はなりたくないんだが!

 ってもしかして俺を嵌めたんじゃなくて、試したのか?


 「お前は勘もいいし、その場を切り抜ける頭も持っている。だが詰めが甘い。今回はいい勉強になっただろう?」


 「えぇ一瞬、俺を嵌める為にあの人達を利用したのかと思いましたよ」


 素直に感想を言うと、ニヤッとする。


 「ご期待通り、次はそうしてやっても構わないが?」


 それぐらい簡単だって言う、脅しかよ……。

 って、この人の目的って何だよ。俺が自動鑑定で職業鑑定が出来る事、この様子なら王宮に告げてないよな?


 「俺に何をさせたい?」


 「うん? 今日一緒に来た奴ら知ってるだろう?」


 「あぁ、ブラックバード……」


 Bランクのカムラッドの連中だ。多分実力は、Aランクだと思う。

 そう言えば、アーチさんが動く時はよくこのカムラッドを使っていた。今回のように……。


 「あいつらも俺の部下」


 そう言ってニヤッとすると、今回のあらましを語り始めた――。



 アーチさんは、このマッターリ街の冒険者ギルドマスターになって、賊に不審な動きがあるのに気が付いた。

 情報が筒抜けになっているようだと感じた。


 情報の漏えい。それがあるとすれば、リーダー会議しかない。カムラッドのリーダーを月に一度集め話し合いを行う。余りにも働きが少ないと判断した場合、解散や合併を促したり、また大きな仕事の割り振りを決めたり。


 その中に、賊の情報も含まれていた。情報を提供しあい、合同で捕らえる為の作戦を行ったりする。

 その情報が洩れている。そう感じたアーチさんは、ブラックバードを使い探りを入れていた。


 ブラックバードの連中は、王宮付きの時にカムラッドの様な組織で一緒だった者達で、元々アーチさんはリーダーだった。だからそのまま引き連れてきた。


 そしてどうやら、カムラッド竜牙に賊の者が出入りしているようだと突き止めた。それがマーリンだった。死んだ彼を職業鑑定するまで、アーチさん達も女性だと思っていたらしい。


 マーリンさんが出入りする時に、必ず訪ねて来る人物がファビオンさんだった。彼の内偵が密かに行われた。そして驚く事実が発覚する。ファビオンさんは、隣国の者でどうやら人身売買を行っているようだった!


 彼がその商品となる者達を毎回連れて来ていた。そうなると竜牙で行われているのは、職業鑑定! そう憶測をした。


 現場を押さえる為に、着々と準備をしている最中さなか、マーリンと俺達が試験を受ける為に山に行くと聞いて、アーチさんはブラックバードを引き連れ山に向かった。


 マーリンの目的がわからないが、俺達を見つけた時には、マーリンが死亡、俺が瀕死の状態だった。

 マーリンが死亡した為、今日予定されていた密会がなくなるかもしれない。この日の為に準備した事がパーになる。そこで、鑑定できる俺を送り込んだ。


 だが一つ疑問があった。マーリンには職業鑑定が出来るスキルがなかった。そうなると何が行われていたのかという事だった。

 俺を送り込んでも意味がないかもしれない。そう思い見張っていたらしい。


 だがファビオンさんは現れた!

 しかもグレイブさんが、職業鑑定が行われていたと密告をしてきた。自分達の憶測があっていたと確信したアーチさんは、乗り込んできたのだった――。

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