002 ☆カードで鑑定Ⅱ☆
マルモンドさんは遠くを見つめ少しだけ語り始めた。
「ワシも十六の時に冒険者になった。カード師と言うよくわからない職業だったが嬉しかった。だが現実は厳しくてな。カードに移し出すだけだと何も役に立たない。わかるのは魔力だけ。だから私の仕事はもっぱら、君が受けて来た職業鑑定の仕事のみだった……」
「あ、なるほど……」
言われて気が付いたけどこの能力じゃ、戦闘に向いていない。冒険者としては役立たず!?
「あの、私もそうなるのかな……?」
「いや、君には可能性がある。ワシは、魔力までしかわからなかった。だから職業鑑定しかできなかったが、魔力が7もあれば他の事も出来るかもしれない」
「うん? 魔力7って凄いの?」
マルモンドさんは、私をジッと見つめ力強く頷いた。
「魔力と言うのは、その者の総合ランクのようなものだと言われている。十段階に分かれていて、最低が0。最高は9だ。勿論その者が強くなれば数値も上がる」
「えっと……」
「カード師などの職業とかの数値ではなく、個人の能力を数値化した物だという事だ。だから君次第で冒険者として上を目指せるだろう」
そ、そうなのかな?
今の所、モンスター退治には向いていなさそうだけど、上手くやればそれ以外の事で役に立つかな?
取りあえず自分のステータスを見てみるかな……。
「あ、自分のを見る時はどうするの?」
「カードを持って、自分に手を当てればよい」
「なるほど」
右手にカードを持ち、左手を胸に当てた。するとカードにスッと文字が浮かび上がった。
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名前:フェアル
職業:カード師
熟練度:2
性別:女性
種族:人間
年齢:16
魔力:7
HP:150/150
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HPの最大値が150ある。
え~と確か……。
私はHPっという単語をどこかで聞いた事がると思い出そうとしていた。
そうだ! 確か体力的なモノだったような。えっと、右側が最大値だったはず……。思い出せてすっきりしたぁ!
次はっと……。うん? あれ? 白紙のカードがない?!
「あの……カードってこれだけですか?」
私の質問にマルモンドさんは、ハッとした顔つきになる。言わずともこれだけだという事みたい。
「すまない。4枚しかなかったんだった!」
「やっぱり!! これ、消せないんですか?」
「……消せないな。あ、紙師を紹介しようか?」
紙師? あぁ、紙を作る仕事をしている人か……。あれ? これって自分で作ったんじゃなかったっけ?
「あの、カードって自分で作ったんじゃなかったんですか?」
「紙を切ってな。紙自体は作る能力はないからな……」
「なんですと!!」
私はがっくしと肩を落とした。自分の一番知りたい能力が見れない。紙って作るのにいくらかかるんだろう……。
はぁ……。
「すまない。引退しかたら余ったのしかなくてな」
「いえ……。色々勉強になりました」
手に持っているカードをしみじみと私は見た。
よくわかんないけど、これアーチさんに見せれば何か仕事をくれるかもしれない。このカードはもらっておこう。
「これ貰ってもいいんですよね?」
「え? あぁ。いいが……。がんばれよ」
「はい! ありがとうございました!」
私は立ち上がると深々と礼をすると、マルモンドさんは私の頭を撫でた。
「一つだけ言っておく。冒険者を辞めても封印されない限りは能力は使える。君の描いていた冒険者としての生き方でないのなら、別に違う道に進む事も考えるといいだろう」
「はい。ありがとうございます。今日は一旦家に戻ります。紙の事はアーチさんに聞いてみます」
マルモンドさんは頷いた。
「気を付けてな」
「はい! 本当にありがとうございました!」
私が手を振ると、マルモンドさんも手を振ってくれた。大きな通りに出て馬車が通るのを待つ事にする。
家に帰って両親に報告して、明日アーチさんに相談しよう。作ってもらうより売ってるのを買う方がもしかしたら安いかもしれないし……。
一般の人達が紙など買う機会など殆どない。高いんだろうなぁ……。
一時間程待っていると馬車が来たので乗って家の近くまで移動した。着くころには、空はもう日が落ち星が瞬いていた。
「ただいま~」
私は元気よくドアを開け家に入ると、父さんと母さんは嬉しそうに出迎えてくれた。
「遅かったわね。お腹がすいたでしょ」
「どうだった?」
「あなたったら……。まずは食事にしましょう」
私は苦笑いする。カード師だったと聞いたらどんな反応をするかな?
でもまずは、夕飯を食べる事にする。歩き回ったからお腹が空いたわ。
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「ごちそうさま」
がちゃがちゃと母さんが片づけを始める中、待ちきれないのか父さんが聞いて来た。
「どうだったんだ?」
「うん。この通り冒険者になったよ」
左手を上げ見せながら私は伝えた。きっと気づいてはいたとは思うけど、私の口から聞きたかったんだと思う。
「……で?」
両手をテーブルに付き、私の顔を覗き込む様に母さんは聞いて来る。父さんにあーだこーだと言いながら、気になって仕方なかったみたい。
「……カード師だって」
「カード師? あなた、聞いた事ある?」
「ないな」
だよね。私も聞いた事なかったから、どうしようかと思ったもん。
「えっと。カードに相手の能力を書き出す能力みたい」
私はテーブルの端に置いてあったカードが包まっている布を手元に持って来た。二人もずっとこれは何だろうと気になっていたらしく、この布をジッと凝視する。
布から出したカードを私はテーブルの上に置いた。
私が転写したマルモンドさんのカードと、自分自身を転写したカード。
「このカードの人が私の師匠だよ。もう冒険者は引退してたから尋ねに行ってきたんだ」
マルモンドど名前が入っているカードを指差し言った。
「この方が……」
母さんがそのカードを手に取る。
「こっちのカードはなんだ?」
父さんがマルモンドさんのステータスの続きを手に取った。
「それは母さんが持っているステータスの続き」
「ステータス?」
父さんの呟きに私は頷く。
「そういう数値をステータスと言うみたい」
「へえー。こんな事が出来るのね」
母さんはそう言いつつ、カードをひっくり返し裏を見ている。父さんも真似して見た。
「これがフェアルのステータスか? で、この続きは?」
「カードがそれしかなくて、続きはないんだ……」
私のステータスを手に取り父さんが聞いて来たので素直に答える。
「このカードって売っているものなのか?」
「紙を買って作るみたい」
父さんは渋い顔をする。やっぱり紙は高いみたい。
「えっと。冒険には役に立たなそうだけど、マルモンドさんは、職業鑑定の仕事をやっていたみたいだから、少なくともそれは出来るかなって……」
冒険者になっていいとは言っていたけど、さっきの反応を見ると反対されそうでつい言ってしまった。でも私としては冒険者として冒険をしてみたい。
「そうか。それなら安心だな」
父さんの言葉に、私はうんうんと頷いた。
「そうね。命を落とす様な冒険には、行かなくてすみそうね」
母さんの言葉に、今度は父さんが頷く。
私はカード師でも働き口があるからって意味だったんだけど。どうやら父さん達は、私の身を案じて反対していたみたい。
「と、取り合ず明日、冒険者ギルドに相談してみるよ……」
二人共それがいいと力強く頷いた。
ごめんね。父さん、母さん。私は暫くは内勤で頑張るけど、最終目標は冒険だから!