028 ☆絶望の淵☆
私を庇ってリーさんは、マーリンさんの魔法で突き飛ばされ気を失った……。
私がリーさんのいう事を聞いていれば、こんな事には……。
どうしたらいいの?
「さて、とどめを刺し……」
「やめて! もういいでしょう? 狙いは私なんだよね?」
マーリンさんは、ちらっと私を見るもリーさんに向き直る。
「二人よ。まずは確実に彼をね。恨むなら私を信じた自分自身を恨むのね!」
そう言うとまた、手を広げた!
ウィンドバーストを使う気だわ!
「リーさん!」
私はリーさんに抱き着いた!
「バカね」
マーリンさんは一言そう言うと、手を私達に向けた。その手からは風が刃の様に迫りくる!
――お願い反射して!!
私はギュッと『反射』と書かさった葉っぱを握り目を瞑った!
それは無意識で、リーさんを助けたい一心からだった!
バチッ!!
「きゃー!!」
悲鳴が聞こえ、そっとマーリンさんを見ると血だらけになり倒れ込んでいた!
反射が成功した?
「な、何故あなたが……反射……を?」
そう言ってガクッと完全に倒れ込む。
助かった?
そう安堵するも、マーリンさんは声を発する。
「逃げて……君だけでも逃げて……」
マーリンさんが何故かそう呟く。
何どういう事?
その時、どこからか、カツカツと音が聞こえて来る。
何の音だろうと思っていると、その正体がわかった。靴音だった! それはリーさんが来た穴から聞こえて来た!
え? マーリンさんの仲間?
「大丈夫か?」
そう顔を覗かせたのは、驚いた事にアーチさんだった!
「ア、アーチさん……うううう」
「よし、よく頑張った!」
そう言ってアーチさんは、私をギュッと抱きしめた。私はそのまま胸に顔を埋めて泣き叫ぶ。
「リーさんが、死んじゃう!」
「大丈夫だ。回復魔法を使える奴も連れて来たから……」
え? どういう事?
「残念ね……。次に期待だわ……」
後ろからそう聞こえ、チラッと見るとマーリンさんはぐったりしていた。そして、マーリンさを抱き起した男の人が首を振った。
「そうか。じゃその者の鑑定をヌティーナにさせてくれ」
そうアーチさんが叫んだ。
次って……? マーリンさんを鑑定って?
目の前がぐるんぐるん回る……。
「おい! フェアル!」
アーチさんの声が遠のいて行った――。
△▽△▽△▽△▽△▽ △▽△▽△▽△▽△▽
目を覚ますとベットの上だった。
「目を覚ましたか?」
声のする方をチラッと見ると、アーチさんがベットの横の椅子に足を組んで座っていた。
「リーさんとマーリンさんは?」
そう問うと、アーチさんの反対側のジッと見つめ、顎をクッとした。
「そのカーテンの向こうに、リーはまだ寝ている。回復魔法で回復したからもう少しすれば目を覚ますだろう」
アーチさんは私の右側にいるので、リーさんは左のカーテンの向こう側で寝ているみたい。
「よかった。マーリンさんは?」
アーチさんは、首を横に振った。
え、死んだって事?
「何があった?」
アーチさんに問われるも、何も考えられない!
私が殺した! マーリンさんの魔法を反射して私が!!
「ううう……」
「フェアル。君も冒険者だ! 死と隣合わせだ。悲しむなとは言わない。でも泣いていても仕方がない。……何があったんだ? どうしてこうなった?」
声を出そうとしても出ない!
「ご、ごめ………い」
やっと出た言葉はそれだけだった。
アーチさんは、スッと立ち上がる。
「もう少し休め。落ち着いたら話せよ」
そう言うと、アーチさんは部屋から出て行った。
冒険者は死と隣り合わせ……。そんな事は知っていた。……わかっているつもりだった。でも、同じ冒険者に命を狙われるなんて!
そしてその相手を殺してしまうなんて!
無理! 私にはもう無理!
マーリンさん!
どうして命を狙ったの!? あなたが言っていた女性って誰?
フッと、ヌティーナさんを思い浮かべる。……違うよね? そこまでしないよね?
もう誰を信じていいかわからない!
私は布団の中で泣きはらした……。




