021 ☆検証☆
目の前に立つアーチさんは、昨日の様に怖い顔つきではなかった。怒りは納まったのかな?
「リー話がある」
「俺にはありませんけど」
アーチさんに速攻そうリーさんは返す。
ちょっとそんな反抗的な態度取って大丈夫なの?
「昨日は感情的になって悪かった。話があるからこい。フェアル、君もだ」
今度は答えを聞かずクルッと背を向け、アーチさんは歩き出す。
はぁ……と小さな溜息を付くと、その後にリーさんは続く。私もついて行った。
向かった先は、ギルドマスターの部屋。
「まあ、座れや」
そう言われ、大人しくリーさんが座ったので、その横に私も座ると、目の前にアーチさんも座った。
「昨日の件についてはもう聞かない。今日呼んだのは、これからどうするかという事だ」
「それってアーチさんに関係あります?」
「相変わらずだな、お前は。一応ギルドは、冒険者に仕事を提供するところだからな。それに五年程一緒に仕事をした仲だろうが」
少し呆れ顔でアーチさんは言った。
そう言えば、リーさんはアーチさんの補佐やっていたんだっけ?
「リー、何か武器扱えるのか?」
「扱えると思います? 鑑定師ですよ?」
「スキルに不可とない限り、武器自体は扱える。それには職業は関係ない」
アーチさんは、フッと真面目な顔つきになってそう答えた。
そういうもんだったんだ……。って不可って……バットスキルって事だよね? そういうバットスキルも存在するんだ。
「じゃ俺もナイフ扱えますか?」
「あぁ。モンスター相手に素手だと大変だろう? 基本ぐらいなら俺が教えてやる」
「アーチさんってナイフも扱えるんですか?」
「俺はナイフが専門だ」
うん? 専門? あれ、この人魔剣士じゃないの? う~ん……。
「フェアルも一緒に覚えるか?」
「君は、自分のカード師のスキルを扱えるように練習した方がよくない?」
アーチさんが言うも直ぐに、リーさんがそう言ってきた。つまりアーチさんに私を近づけたくないという事だよね? もう何も言わないって!
「じゃ、私はカード師のスキルのお勉強をするわよ!」
ちょっとムッとして返すも、リーさんはつらっとして頷くだけだった。
トントントン。
ドアがノックされ、私達はドアに振り向く。
「どうぞ」
アーチさんが、そう答えると、失礼しますと白に緑の縁取りの制服を着た女性が入って来た。ヌティーナさんだ!
彼女は、キッと私達を睨む。
「ちょうどよかった。紹介する。そこに座っている男がリー。前職業鑑定師だ」
アーチさんは立ち上がり、ヌティーナさんに近づきながらそう言った。
「そして、こちらが……」
「知ってますよ。王宮から来たヌティーナさんでしょう? 鑑定を失敗してここに飛ばされて来たの?」
「なんですって!」
ちょっと! いきなり何煽ってるのよ! この人、滅茶苦茶怖い人じゃん!
「お前ら知り合いなのか? じゃ自己紹介いいか。うんじゃ制服を……」
「まさか私にそれを着れというの?!」
ヌティーナさんが、アーチさんの制服を見て言う。
そうだよね。服的にもランク下がるよね……。
「当たり前だ。いやなら王宮に帰れよ。まあそのまま首だろうけどな」
流石アーチさん。腕を組んで余裕でヌティーナさんをあしらう。
ヌティーナさんは唇を噛み、何故か私達を睨んだ。
ひ~! やっぱり怖いんだけど!
「わかったわ。着るわよ制服」
「そうか」
ヌティーナさんの答えを聞き、アーチさんは奥の棚から制服を取り出し彼女に渡した。
「このサイズで大丈夫だと思うが、胸が入らなかったらワンサイズ上の……」
「これで結構です!」
キッと睨み付け答える。
「彼女はもしかしたら、偵察する為にに送り込まれてきたかもしれないから気を付けてよ」
ボソッとリーさんが呟いた。
なるほど! 名誉挽回しに来たのね!
「うんじゃ、行くか。悪いがそれ着て留守番頼むわ」
「え?」
アーチさんが、ヌティーナさんにサラッと言う。
リーさんが立ち上がったので、私も立ち上がる。
「ちょっと! 留守番って何よ!」
「……一応言っておく。俺は王宮の者で、君より位から言っても上だ。もう少し言葉を選べ。じゃ行って来る」
鋭い視線でそう言ったアーチさんに何も言い返せず、ヌティーナさんは悔しそうに頷いた。
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私は二人と別れて、街の中をブラブラとする。そして公園へ……。
カードのスキルの勉強と言ってもね~。何をどうすればいいのか……。
って、カードにするものが無いとダメじゃない?
私は辺りを見渡した。
ここはちょっとした自然公園で、小川が流れていて木があって……ベンチもあって。ってそれしかない!
葉っぱでも代用出来るのはわかってるけど、何せ小さい。あの森の葉っぱの半分ぐらいしかない。あの時だって四行程しか表示されなかった。こんなの使ったらその半分しか表示されない。
私は落ち葉を拾い見つめる。
確かに文字サイズ固定は面倒ね。
って、本当に文字固定なのかな? 最初から入るように表示ってやったら出来たりして?!
よし! 試してみよう!
辺りをまた見渡すも冒険者は、こんな所では勿論見当たらない。うーん。冒険者探さないとね……。
試そうにも、ここには冒険者らしき人物はいなかった。
そうだ! カムラッド街に行ってみよう!
カムラッドを結成した冒険者は、受付となる場所が必要になって、ギルドが用意した格安の部屋を事務所にしている所が多い。
って、冒険者ギルドの裏手の通りなんだけどね。
わぁ。ごつい人たちがいっぱいだ……。
噂は聞いていたけど、来たのは初めて。
あ、地図がある!
カムラッド街の地図。
近づいて見てみると、得意分野で文字が色分けされていた。
赤がモンスター退治専門で、青が魔法が扱える者が多数いる所、白が複合らしい。
って別に事務所は尋ねないけど、やっぱり白い文字が一番多い。少ないのは青い文字。
魔法って扱える人少ないんだ……。
じゃヌティーナさんって魔力4だけど、やっぱり凄いんだ! 予知持ちでもあるって言っていたっけ? 予知って未来が見えるって事なのかな?
「おじょうさん」
声を掛けられ振り向くと、若いお兄さんが立っていた。皮の鎧に剣。頭には……バンダナ? 青紫の髪に青いバンダナをしている。
なんでバンダナ?
「依頼先探してる?」
「え? えーと……」
私はスッと、左手を後ろに隠した。
この人のステータスを見てみよう。私が冒険者だとバレると警戒されるもんね。ってどうやって触ろうかな?
「えっと、お兄さんって剣士ですよね? 私、剣士って憧れで……。それでえっと……あ、握手して下さい!」
俯いて言ったけど、もっと何かなかったか私!
「……あぁ、いいけど」
スッと右手が出て来た。チラッと見るとジッとこっちを見ている。
文字を全部表示!
私はギュッと彼の手を握った。
「あ、ありがとうございました!」
私はダッシュで走り出す!
「え? ちょ……」
男の人は驚いているけど追ってはこなかった。
今度行くときは、何か作戦考えて行こう!
冒険者ギルドの前まで戻り、ふーっと息を吐く。そして辺りを見渡した。色んな人が行き交うが、私には特段注目をしていない。これぐらいの年から冒険者も珍しくない。
私はギュッと握っていた手を開く。葉っぱは緑の汁を出していた……。
これ、文字読めるのかな?
枯れ葉だったら、バラバラだった。葉っぱをそっと開く。
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名前:グレイブ
職業:剣士
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やっぱり二行……。これじゃ葉っぱ十枚とかないと全部見れないよね。いや、それ以上か……。
消せるんだから、何か大きな物に書きだすとか? う~ん何があるかな?
フッと、このステータスのグレイブさんのバンダナが頭に浮かぶ。
そっか。布。バンダナじゃなくても、ハンカチとか手ぬぐいとか……。
ステータスを確かめるのはそれにして、コピーする時はこういう葉っぱでいいかも。
私は文字が書かさった葉っぱを見つめる。
今思ったけど、これに全て書き込んだら字小さくて読めないかも……。
うんじゃこれはやっぱり、コピー用っと。
私は葉っぱの字を消した。……そうしたらまた文字が浮かび上がった!
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熟練度:1,602
性別:男性
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これって……消したら次のが現れるんだ! おぉ、大発見!
また消してみる。
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種族:人間
年齢:23
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やっぱりそうだ。でもこれはメンドイかも。何度もやらないと全部見れない……。まあ書きだす物が一つしかない時に使えるけどね。やっぱり大きい物にだね。
色々確かめて、一回で全部表示される大きさを探すかな。
ってこれって何に役立つの?
私はそれに気づいてしまい、大きなため息をついた。




