001 ☆カードで鑑定Ⅰ☆
見えて来た風景は、私が住んでいた村と変わりなく畑が広がっていた。
確か煉瓦の赤い家……。
アーチさんに聞いたマルモンドさんの家の特徴です。というか、その一軒だけ離れているらしい。
暫くして、ポツンと建つ家が見えてきた。
「降ります!」
私は馬車を降りた。そして、小走りに家に向かい出す。最後は全力疾走だ!
はぁ。はぁ。
「つ、着いた……」
ドンドンドン!
「すみません!」
私はドアを叩く。
「うん? 何かな?」
「うわぁ」
思わぬところから人が現れた。右手の壁からヌッと現れたのは、麦わら帽子に小汚いタオルを首にかけ、クワを持ったご老人だった。
ほとんど白髪になっているけど、元は茶色だったみたい。瞳が茶色。
「えっと……マルモンドさんですか?」
「そうだが?」
「え!?」
ここにいるのだから本人かもと聞いてみたが、想像してる人物像とはだいぶ違っていた。私が想像していたのは、いわゆる冒険者の格好で、麦わら帽子やクワなんて想像していなかった。
一応左手を盗み見てみると、かつて冒険者だった証の指輪が中指にあった。冒険者を辞めても指輪は外される事はない。
冒険者を剥奪される者には、指輪の上に更に指輪が被されるらしい。その指輪は能力を封印する力があるとかないとか……。
「で? ワシに何か用事かな?」
「あ、はい。私はカード師として冒険者になったんですが、アドバイス頂けませんか? お願いします」
深々と頭を下げた。頼れるのはマルモンドさんだけなのだから。
「おぉ、ワシが生きている間にカード師の能力があるものが現れたか! ちょっと待っておれ」
持っていたクワを壁に立てかけ、家の中に入って行った。数分するとヨレヨレの布に包んだ何かを持って出て来た。
「よいしょっと。ほれ君もここに座りなさい」
マルモンドさんは、大きな石? 岩? に腰掛けた。普段から椅子代わりにしているんだと思う。私も言われた通り、隣に腰掛ける。
「ほれ、これをやろう」
「これって何ですか?」
差し出して来た布を恐る恐る受け取り聞いた。
それは思ったより軽い。
「ワシが作ったカードだ。カード師に必要な道具だな。もう使わないから君にやろう」
「あ、ありがとうございます!」
やったー!
道具を手に入れた!
私は布を膝の上に乗せ、布の中のカードを見てみる。
出て来たのは何も書かれていないまっさらのカード。大きさは多分十センチもない正方形。
スッとそのカードに手が伸びて来た。勿論隣に座るマルモンドさん。そしてポンと肩を叩かれた。
「ふむ。君はフェアルと言うのか」
「え!?」
そう言えば私、名前伝え忘れていた! ってなんでわかったの?
私は自分の体を見渡すも、名前がわかる様なものはない。
「これだよ」
そう言って見せてくれたのは、私の膝の上から持って行ったカードだった。そこには私の名前が書かれていた。いやそれだけじゃない、職業名も書かれている。
マルモンドさんからカードを受け取りマジマジを見つめた。
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名前:フェアル
職業:カード師
熟練度:0
性別:女性
種族:人間
年齢:16
魔力:7
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名前だけじゃなく、性別、年齢までわかるんだ。熟練度……聞いた事がある。その職業の経験値みたいなもの。私は一度もカード師として何もしていないからゼロだった。
驚きなのは、私にも魔力があった事。この数字が多いか少ないかはわからないけど、まあ少ないんだろうけど……。
「まあ、こんな感じで触った相手の情報をカードに書き込む事が出来る。やってみるか?」
「え? 私にも出来るの?」
マルモンドさんは頷いた。
「相手が自分に対し警戒していなければ、カードを持った状態で相手に触れれば出来るはずだ」
私は右手にカードを持ち、左手でマルモンドさんの腕にそっと触れた。そうするとスッとカードに文字が浮かびあがった!
――――――――――――――――
名前:マルモンド
職業:カード師
熟練度:27,956
性別:男性
種族:人間
年齢:75
魔力:2
HP:35/35
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うん? マルモンドさんがやった時と違う。文字の大きさも違うけど、内容が増えてる。HP? なんだっけこれ?
「こ、これは!」
「これは?」
「ワシより能力がありそうだな」
思わせぶりに言っておいて、それだけですか?
「えっと、見方を教えて欲しいんだけど……」
「そうだな。熟練度ぐらいは知っているだろう? その職業をどれだけ鍛錬したかの数値だ。魔力はその者の能力値だ。剣士のような者でも1は必ずある。つまり冒険者は1以上だ。後は……わからん」
「え? わかんないって?」
頭をかきながらマルモンドさんは頷いた。
「ワシの能力は魔力が見れるまでだった。どんなに鍛錬しても魔力が上がらず能力は伸びなかった。見てわかるだろう? 君はワシより多くデータを取っている。まあ、あれだ。確かめの為に自分自身のステータスも確認するといいだろう」
「ステータス……」
私は数値が書かれたカードを見た。
これをステータスって言うんだ。
そっか。私自身のステータスを自分でカードに読み取れば、マルモンドさんとの能力の違いがわかるって事ね。
私は新しいカードを手に取った。するとスッと文字が浮かび上がる。
「え?!」
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MP:9/10
攻撃力:8
防御力:7
持久力:2
魔法:―
スキル:カード転写レベル1
属性:―
加護:―
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これってもしかして、マルモンドさんのステータスの続き?
「………」
マルモンドさんも私のカードを覗き込み言葉を失っていた。
私だって逆だったらそうなる。長年カード師としてやってきたのに、初めて行った転写でここまで違いを見せつけられれば……。
「えっと……」
「よかったな。これで虐げられる事もないだろう」
「え?」
マルモンドさんは、にっこりほほ笑んで安堵したように私に言ったのだった。