018 ★偽りのステータス★(リー視点)
次の日もダウスさんが迎えにきた。
この日連れて行かれたのは、鑑定の間だった。
「今日は君に、鑑定を行ってもらう」
「私がやり方を教えるからやってみてほしい」
ハシントさんが言うと、エルネスさんが俺にそう話しかけた。
魔法陣には、女性が立っていた。
エルネスさんにやり方を教わり、職業鑑定を行う。
頭に女性のステータスが浮かび上がる。だが、本には記録されなかった!
そっか、普通の人はこんな感じなんだ!
ダウスさんの言う通り、本は自動鑑定で鑑定した物しか記録されない事がわかった。
今度は男性が立った。
さっきやったみたいに鑑定すると、この人は鑑定拒否を持った人だった。
その事を伝えると、ハシントさんは満足げに頷いた。
「では次は、この物を鑑定してもらうかな」
エルネスさんが言う場所を見ると、なんかツボのような物が置いてあった。
やり方を教わり、それも鑑定する。
鑑定内容を教えると、周りはどよめく。
「では次に眼鏡を外し、自動鑑定を行ってほしい」
エルネスさんは、そう言った。
「え? 自動鑑定?」
「その能力も知りたいのでね。鑑定が終われば眼鏡を掛けていいから、やってみなさい」
エルネスさんにそう言われ、頷いて眼鏡を取った。
鑑定する物に集中する。
そしてすぐに眼鏡を掛ける。
鑑定結果をエルネスさんに伝えると、ハシントさんが近づいて来た。
「では、こちらも鑑定してみなさい」
そう言って突然、眼鏡を外された!
いきなり周りの情報が入って来て目を瞑る。
「目を瞑っていては、鑑定できないだろう。目を開けて鑑定をしなさい!」
ハシントさんに言われて渋々目を開け、言われた物だけに集中する。
しかし鑑定する物には、魔法陣が描かれていた!
やばい!
そう思って、ギュッと目を瞑るも既に遅かった!
魔法陣は情報量が多いのは、前に鑑定してしまった時にわかっていた。鑑定を掛けてしまったので、目を瞑った所で鑑定した物の情報は流れ込んで来る。
「う……」
凄い頭痛と吐き気に見舞われ、俺は座り込んだ。そして我慢できずに嘔吐した!
「貴様! 神聖な場で何をやっている!」
頭上から激怒した声が飛んでくる!
そんな。やれって言ったからやったのに……。
俺は頭痛に耐え切れなくなり、意識が飛んだ。
△▽△▽△▽△▽△▽ △▽△▽△▽△▽△▽
「まったく、このガキやってくれたよな」
うん? 俺の事か?
意識が戻り目を開く。
ハッとするも眼鏡は掛けていた。
「本当だよな。鑑定師なんて魔力が高くたって、予知持ってなきゃ職業鑑定しかやる事ないだろう。しかもジャンプなんていらないスキル持ってるしな。鑑定師が使うかよってんだ」
「………」
俺は泣きたくなってきた。
魔力6だから王宮に入れると思っていたけど、そうじゃないらしい。
「だよな。おまけに魔力6で属性も加護ないんじゃねぇ。でもダウスも同じじゃなかったか? あぁ、直接鑑定があったっけ? でも手順だか必要ないだけだろう? それで王宮勤めって……。もう歳だし引退が囁かれているけど、代わりにこいつ入れたりしないよな?」
「ないだろう? あんな失態したんだし、ハシント様が凄く激怒してたじゃん! 鑑定拒否ついているから凄いのかと思ったけど、バットスキルが凄かっただけみたいだな」
カーテンの向こう側から、男たちの会話が聞きたくないのに聞こえてしまった……。
「今回の件でダウスが引退したらその地位に次は誰がつくかな? やっぱエルネスさんか? あの人も上手く取り入って、ハシントさんに気に入られているもんな。まあ予知持ちだしなぁ」
俺のせいでダウスさんが……。
涙が溢れてきた。
眼鏡を外し、そっと腕で涙を拭う。拭き終わった時、つい目を開けてしまった。自分の腕が目の前にあり、自動鑑定が行われた!
驚いて眼鏡を掛ける。
自分のステータスが情報として入り驚く。職業鑑定って出来たんだ……。
あれ? 属性に時間って……。それに神秘級のスキルがある。
図書館で見た本は、スキルと魔法の解説書だった。そこには、神秘級はレベルMAXの上となっていた。
空間鑑定神秘級。――建物などを立体的に鑑定でき、見取り図などを作れてしまうスキル。それが神秘級だと違わず作成出来る。
「でもよ。もしこのガキが入ったらどうする?」
「バカだなぁ、お前。上手く丸め込むに決まってるじゃん! 魔力6だぜ。入ってしまえば、いずれ上にあがるだろう? 一緒に美味しい汁を吸うのさ」
「やっぱ? ダウスは堅物だったからなぁ……」
何こいつら!
こんな奴らがいる王宮なんて入るもんか!
抱いていたイメージと違う世界。俺は幻滅してしまった!
この王宮で出会った人で、まともなのはダウスさんだけだと思った。
トントントン。
ドアがノックされ誰かが入って来た。
「ダウスさん、お疲れ様です。リー君はまだ寝てます」
「そうか」
何が寝てますだ!
俺はガバッと体を起こす。
「起きていたのか?」
カーテン越しでも俺が起き上がったのが見えたのか、カーテンを開けダウスさんが声を掛けてきた。
俺達の悪口を言っていた二人組が目に入る。
こいつらのステータスってどんなだよ!
二人のステータスを見てやろうと、眼鏡に手を掛ける。
「あぁ、俺達はこれで……」
聞かれていたかもという顔をして、二人は逃げる様に部屋から出て行こうとする!
「待て!」
眼鏡を取って追いかけようとするが、その手をダウスさんに捕まれた!
咄嗟にダウスさんを見る。
「え……」
ダウスさんのステータスが情報として流れて来るが変だった! 何度も鑑定が行われ、その度に少しずつステータスが違うのだ!
「何これ……」
「眼鏡を掛けなさい。また頭が痛くなる」
俺の手から眼鏡を取り上げると、俺に眼鏡を掛ける。
「私の情報は、本に刻まれたかな?」
「え?」
茫然とする俺に、そう言ってほほ笑んだ。
ダウスさんは、書き変え、予言、直接鑑定、執筆不可のスキルがあった。しかも加護持ちだった!
「どういう事?」
「ワケあって、ステータスを偽っている。だから内緒な」
唇の前に人差し指を立て、ダウスさんは言った。
「しかし、自動鑑定で職業鑑定まで出来るなんてな。それは絶対に知られるんじゃないぞ」
「うん……」
「私が信じられなくなったか?」
俯いて返事をしたせいか、そう質問された。
「ううん。ここで信用出来るのはダウスさんだけだよ! でもどうして……俺のも嘘ついたよね?」
「そうか。自動鑑定で自分自身も鑑定したのか。……私の予言がそう告げていたからな。だが私は、君のような頭の中に書き留めておける本などない。文字も書けないので記録することも出来ない」
「え? じゃ、忘れちゃう事もあるの?」
「そうだな。だが、ハッと思い出したのだ。……もし君がまた、ここに来る事があったならば、その時に一緒だった者を助けるのだ」
「うん……わかった」
俺は力強く頷いた。
「頼んだぞ」
そう言って、頭を撫でる。
「……ダウスさんは、その時にいないの?」
「この王宮にはいないだろう」
頷いてそう答えた。
トントントン。
ドアがノックされハシントさんとエルネスさんが入って来た。
「体調はどうだい? リー」
「もう大丈夫です。ご迷惑をお掛けしました」
ハシントさんに頭を下げる。
「そうか、それはよかった。君はまだ能力が安定してないようだ。今、冒険者になる事も出来るが、活動してもらうのは安定するという十五歳からになる」
「はい。わかりました。それでいいです」
ハシントさんにそう言われ、頷いて返す。
「では、エルネス」
「はい」
エルネスさんは、俺の左手の中指に指輪をはめた。
「君は今日から冒険者だ。名に恥じぬ行動を心がける様に。活動は十五歳になってからでよい。その際、近くの街のギルドを訪ねるといいだろう。もし何かあれば、連絡をするので宜しく頼むよ」
「はい! ありがとうございます!」
俺は二人に深々と頭を下げた。
その後、ダウスさんとはすぐに別れ、俺は両親と村に戻った――。




