014 ☆こんな事になるなんて☆
次の日、鑑定の間に通された。行うのは嫌みのヌティーナさん。
ヌティーナさんが鑑定を行うと、紙が消滅するのがわかる。三回行った後、ハシントさんから声が掛かる。
「どうだ? ヌティーナ」
「……はい。もう少しお待ちを」
そう答え、ヌティーナさんが、また挑戦してくる。紙が手の中で消滅する。
「ヌティーナ?」
しびれを切らしたように、ハシントさんが名を呼んだ。
「……申し訳ありません。読めません!」
とうとうヌティーナさんがギブアップ!
やったわ! 作戦大成功!
そしてリーさんが言っていた通り、私自身に鑑定させようとする。
「カード師も鑑定の能力があると聞いている。魔力が7もあるのだ。余裕で鑑定できるだろう」
「自分自身でさせるという事ですか?」
「そうだ」
ハシントさんにカードを渡される。
緊張してきた。息苦しい。
これが成功しないと、さっきした事の意味がなくなる。
「大丈夫。君になら出来る」
リーさんが、力強く頷く。
そうよね。やって見せるわ!
私は祈る様な気持ちで鑑定を行った!
カードは二枚になった。
二枚目に目をやると……スキルにはカード転写レベルMAXと文字サイズ固定の二つのみ! その後の表示もない! やったぁ! 大成功!
叫びたい!
リーさんも小さくガッツボーズをしている。
後はハシントさんが納得してくれればいいけど……。
結局は納得してもらえず、違う鑑定師エルネスさんの登場。
って納得してないどころか、疑いまくりだった!
目の前で着替えろと言われた時はどうしようかと思った!
一応、乙女ですから!
「うむ。その胸では隠しようがないな……」
しかもなめる様に見ておきながらこの台詞!
エルネスさんは、マジで触るし……。
最悪な二人だった。
そして……。
「どうだ?」
ハシントさんの問いかけに、エルネスさんが首を横に振った!
鑑定結果は、私の完全勝利!
ふふふ……。
紙……カードは、『鑑定拒否』の文字分の大きさにして、指と指の間に挟めていたのさ! 指まで丁寧にチェックされていたらバレたけど、相手はカードという認識だからこうすれば大丈夫。と言っていたリーさんの言う通りだった!
こうして大成功を納めた!
これも全てリーさんのお蔭――。
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「ちょっと、起きてよ! フェアルさん! 起きてってば!」
「うーん……」
揺り起こされ……目の前にリーさんの顔!
「君ねぇ……! 朝一の馬車行っちゃったんだけど!」
「え? 馬車? あぁ!!」
ガツン!
ガバッと起き上がると、リーさんのおでことおでこがごっつんこ!
「いったぁ……」
「はう~~」
「はう~じゃない! もう勘弁してよ……」
おでこを擦りうずくまって、リーさんは言った。
ううう。痛いです。これで目が覚めました……。
「まったく。もうこの寝坊助め!」
クスッと笑いながら、リーさんは言った。
「マッターリ街に帰るよ」
「うん……」
おでこを擦りながら答えてリーさんを見ると、満面の笑みだった。
「よく乗り切ったよ。……ありがとう」
私は首を横に振る。
ありがとうという台詞は、私の台詞だ。
「それは、私の台詞。ありがとう。私……冒険者になれた」
「うん。こんなにうまくいくなんて、俺も驚いている。じゃ、着替えたら行くよ!」
こうして私達は、街に無事に帰った。
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馬車の中で一晩過ごし、次の日の昼前にギルドの前に到着した。
あぁ、数日間なのに、何故か懐かしい。
ギルドの建物を見上げ懐かしむも、そんなに思い出はない。
「アーチさんに、挨拶して帰ろう」
「うん。そうだね」
馬車に揺られたから疲れた。今日は挨拶を済ませたら早く家で寝たい。
マスターの部屋に着くと、リーさんがドアをノックする。
「リーです。今、着きま……」
リーさんが言ってる途中でガバッとドアが開いた。そこにはアーチさんが、怖い顔で立っている。
え? 何で怒ってるの? もしかして戻って来るのが遅くなったから?
「二人共入れ。大事な話がある」
私達は顔を見合わせから部屋に入った。
ドアをアーチさんが静かに閉める。
「お前達、一体何をした?」
どすの聞いた声がアーチさんから聞こえた!
どういう事?
「な、何って……。何もしてないけど? 何か連絡でも……」
ビクッとして、リーさんが恐る恐る言う。
「あぁ。リー、お前は職業鑑定を下ろされた! 一体何をしたらそうなる? フェアルも王宮入りにならなかったみたいだな!」
そうアーチさんが怒鳴る!
私達はすくみ上った。
向こうは諦めてないというか、許してくれてなかった!
こっちかがその気ならって事なんだろうけど……。
チラッとリーさんを見ると青ざめている。
「俺、首?」
「あぁ。何もしてなくて、こうなるか? 正直に言え!」
「……何もしてない。あっちが勝手に勘違いしているだけです」
リーさんがそう答えると、アーチさんがギロッと私を睨む。
怖いんですけど!
「あの……。リーさんは、冒険者じゃいられないの?」
何故か声が震えた。
「いや、逆だ。普通の冒険者になった! 戦闘が出来ないリーじゃ、これから先困るだろうな! フェアル。君なら王宮に入れると思ったんだが……何があったか正直に話すんだ」
後半は優しく話掛けて来る。
どうしよう……。
私のせいで、リーさんが……。
俯いて唇を噛む。
「俺なら何とかしてやれるかもしれない。取りあえず話してくれないか?」
アーチさんならどうにかしてくれる?
話したら、私は王宮入り……。
でもこのままだと、リーさんを犠牲にしてしまう。
「あの……」
「もしかして、アーチさんにも何かお咎めがありましたか……?」
口を開こうとした時、リーさんがアーチさんに質問した。
「あぁ、減俸になった! 不正があったようだとな!」
「えぇ!!」
私は声を上げた!
内容はバレてないけど、不正は行ったとみられていたんだ!
だったら正直に言った所で、罰せられるだけでは……。
チラッとリーさんを見ると、ムッとして睨まれた。
はう。ご迷惑掛けました……。
「ご迷惑をお掛けし申し訳ありません。何もしていないと言ったのですが、信じてもらえていなかったようです」
そういいながらリーさんは、アーチさんに頭を下げた。
私も慌てて下げる。
「もういい! 明日には代わりの者が来るから、宿舎から今日中に出て行け! いいな!」
そう言ってアーチさんは、私達に背を向けた……。
まさか、こんな事になるなんて!