012 ☆立てた作戦はこうでしたⅠ☆
私達は用意された宿屋を見上げていた。
王宮を出た後、王都に戻り観光してから来てみたものの、敷居が高いです……。
中をチラッと覗けば、ビシッとした服を着たお金持ち風の方々がいらっしゃる!
「うわぁ。俺達場違いじゃない? こんな高級そうな所に泊まれるのは嬉しいけどさ」
「うん……」
私も同意見です。もしかして嫌みで? それとも本当に謝罪の気持ちで用意してくれたのか? どちらにしても入りづらい。
声を掛けた途端、追い出されたらどうしよう……。
「取りあえず、入ろうか……」
私はリーさんの後をついて入って行く。
何の事もない。普通に部屋に通された。私とリーさんの部屋は別々で、昨日泊まった所の倍の広さがありそうな立派なお部屋だった。
「ひろ……」
私はまた、ドアの前で立ち尽くしてしまう。
逆に広すぎて、落ち着かない。
ここは夕飯もついていて、宿内にある食事処でリーさんと一緒に食べ、それぞれの部屋に戻った。
「朝早い普通の馬車で戻るから、寝坊しないようにね」
リーさんに釘を打たれ、私は頷く。
「おやすみなさい」
私は挨拶をして部屋に戻った。
ごろんとベットに横になる。
はぁ……。
ため息が漏れた。
これでよかったんだよね?
目を閉じると、昨日の夜の事を鮮明に思い出す――。
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「よかった、じゃ作戦だけど……」
私の緊張をほぐしたリーさんは、立てた作戦の説明を始める。
「まずは説明しやすいように、俺を鑑定してみて」
「え? でも、カードが……」
そう言うとリーさんは、カード師の事が書かれた紙を目の前に掲げる。
「何でもいいんでしょ? この文字を消して、ちぎってカードにしてみて」
「え? 消しちゃうの?」
驚いて言うと、リーさんは頷いた。
「もう俺達には必要ないでしょ? 消せるかも見てみたい」
「わかった。やってみる」
私はリーさんの側に行って紙を受け取ると、そのままその場に座すわった。
どうやっていいかわからないけど、取りあえず『消えろ』と念じながら文字の上をスッと手でなぞった。そうすると、文字は綺麗に消えた!
「き、消えた……」
「これが、イレーズの威力。俺のも消えたね」
私は頷いた。
紙はまっさらの状態に戻った。自分でも信じられない。
私はビリビリと紙をちぎる。
あまり小さいと二枚必要になるので紙を四分の一にする。
「じゃ行くよ」
私は深呼吸してリーさんに触れる。一度は成功しているけど、あの時はリーさんは寝ていた。
文字が浮かび上がり、私は安堵する。
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名前:リー
職業:鑑定師
熟練度:164,251
性別:男性
種族:人間
年齢:21
魔力:6
HP:80/80
MP:12,077/16,540
攻撃力:10
守備力:12
持久力:8,200
魔法:―
スキル:鑑定拒否/空間鑑定神秘級/
ジャンプレベルMAX/自動鑑定
属性:時間
加護:なし
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これがリーさんのステータス。そう言えば、途中までしか見てなかった。凄い……熟練度が十万超えてる! それにMPが半端ない……。
「ここ見て、この鑑定拒否ってスキル」
考え込んでいると、リーさんがスキルを指差した。
鑑定拒否? これってどんなスキル? スキル名からすると、鑑定を拒否するって事かな?
「このスキルを持っていると、魔力が同等以上の人じゃないと鑑定出来ないんだ。俺の場合は、魔力が6以上の人が鑑定した場合見る事ができる」
「え? そうなの? じゃ5以下だと見れないの?」
リーさんは、力強く頷く。
「これを利用しようと思う。俺の知っている限りでは、王宮にいる鑑定師は魔力5が最高のはずだから」
いや私は持ってないんだけど……?
私が首を傾げると、リーさんはニヤッとする。悪だくみをしようとしてる顔になってます!
「君には、スキルをコピーする能力がある。それを使って俺の鑑定拒否をコピーする」
「え?! やった事ないけど……出来るかな?」
「それを今から練習するの! 鑑定拒否って文字が載るぐらいの大きさに紙をちぎって!」
私は紙をちぎった。
「どうやるの?」
「俺に聞かれても困る。自分で色々試してみて」
え~! 知ってるんじゃないの?
仕方がない。試してみますか。
まずはさっきみたいに念じてみますか。
――リーさんの鑑定拒否をコピー!
紙を持ったまま念じるも、コピー出来ない。
じゃ次は、タッチしてみますか。
――リーさんの鑑定拒否をコピー!
紙を握りしめ、タッチするも何も表示されない。
また失敗。
「うーん。後は何かあるかな?」
他の方法が浮かばない……。
「そうだね。後は、紙自体を相手に付けるぐらいしか思いつかないな」
リーさんも腕を組んで困り顔で言う。
これが成功しないと、作戦が成り立たない。
「やってみる!」
ドキドキしながら、紙を持って用意する。
――リーさんの鑑定拒否をコピー!
ぺたりと紙で触れてみると、文字がスッと浮かび上がった!
やったぁ!
「できたぁ!」
「よし! じゃこれから俺が、君を鑑定するから」
あ、なるほど。それで鑑定できなければ成功なのね!
私は頷く。
「俺の予想では、そのスキルはバシップスキルだから自動で発動すると思うんだよね」
「そうなんだ」
「用意はいい?」
私は紙を握りしめ頷く。
リーさんは、眼鏡を外した。
その瞬間、紙がスッと消えた!
「え?」
「成功みたいだね。読めなかったよ」
リーさんは、眼鏡を掛けつつ満面の笑みで言った。
一先ずは成功したみたい!