011 ☆エロ親父たちの敗北!☆
待つ事三十分。ハシントさんが部屋に入ってきた。
その顔は険しい。
「申し訳ないが、もう一度だけ職業鑑定をさせて頂く。フェアル、君だけついてきなさい」
「え?」
諦めてくれない訳?
チラッとリーさんを見ると、リーさんも焦り顔。
「お待ちください。ヌティーナさんが行って、本人も目の前で行ったのに、それで納得いかないのでしょうか?」
リーさんがそう言うと、スッとハシントさんが目を細めリーさんを見た。まるで見透かされているようで、何も言えなくなる。
「ヌティーナをと言ったのは君だったな。何かからくりがあるのではないか? 何を企んでいる?」
凄い疑われている!?
やばいよ、リーさん!
「お待ちください! 私はこの者達と結託などしておりません!」
「そうか。だとしたら、先ほどの結果は君の能力の結果というわけだな」
「………」
ハシントさんの言葉に、ヌティーナさんは何も言い返せない。そうですと答えた所で、自分の能力はそんなもんですと言っている事になる。
「わ、わかりました。もう一度受けます。それで誤解が解けるならもう一度受けます!」
もうヤケだわ! どちらにしても最初の予定通りよ! 向こうが用意した鑑定師を黙らせる!
「大丈夫?」
心配そうに声を掛けるリーさんに、私は頷く。
そして私は、ハシントさんの後をついて行き、鑑定の間にもう一度入った。
そこには一人の男性が立っていた。
黒に近い紫の髪に、髪と同じ鋭い瞳。ヌティーナさんと同じ白い制服。三十代ぐらいに見える。
「こんにちは。私は王宮鑑定師のエルネス」
私が到着するとそう挨拶をしてきた。
「あ、はい。私はフェアルです」
「では、フェアルさん、ここでこれに着替えて下さい」
「え!?」
二人はジッと私を見つめる。
何これ! 拷問? 見てる前で着替えるの?
エルネスさんは、手に持っていた服を私に突き出している。仕方なくそれを受け取った。
「せ、せめて後ろを向いていてくれませんか……」
顔を真っ赤にし、何とか発する。
「五分やろう」
そうハシントさんが言うと、二人は後ろを向いた。
五分って! 短いよ!
泣きそうだ……。こんな目に遭うなんて!
何とか五分で着替え終わるも、脱いだ服は畳む暇はなかった。足元に脱ぎっぱなし。
「うむ。その胸では隠しようがないな……」
ハシントさんは、私を頭からつま先まで、なめる様に眺めると言った! 大きなお世話よ!
大きく胸元が開いた袖がない服とスカートが繋がった服。確かワンピースとかいう服だったか。って、私はスカートなんて履いた記憶がない!
普段は農作業の仕事をしてるし、おしゃれして出掛ける場所もお金もない。
それにしてもこれ、体にぴったりフイットしてるんですけど! スカート丈も短い。
「では、手を開いて両腕を上げて下さい」
真顔でエルネスさんが言った。
「え? 何故ですか?」
「身体検査をするからだ」
私の質問にハシントさんが答えた。
またもや、二人はジッと私を見つめる。まるで嫌なら本当の事を言えと言わんばかりに……。
ここまで来たら……。女は度胸!
手を上げると、エルネスさんが私の体をなでるように、ボディチェックしていく。
エロオヤジ達、覚えてろよ!!
「何も所持していないようです」
「そうか。では始めてくれ」
「はい」
私が脱いだ服を拾い上げると、ハシントさんは後ろに下がった。
「そこへ」
エルネスさんに魔法陣を指差され、私はそこに立つ。
もう、早く終わって!
私は目を瞑る。
「………」
「どうだ?」
ハシントさんがエルネスさんに声を掛けると、エルネスさんは首を横に振った。
「わかった。いいだろう」
そうハシントさんは言うと、ドアに向かう。
終わりなの? ちょっと待って! 服を返して~!
エルネスさんもハシントさんに続き、無言でドアに向かう。私も仕方なくついて行く。
「あの……服を……」
通路では誰もすれ違わなかったけど、こんな格好恥ずかしいってば!
部屋の前に来てやっと、ハシントさんが持っていた私の服を無言で突き出し渡してくれた。
エルネスさんがドアをノックし、中に入って行く。ハシントさんが入ると私も入る。
「お帰り……え?」
リーさんは、私の格好を見て驚く。まあこんな服を着て帰ってくればそうだよね。恥かしくてリーさんの顔をまともに見れない。
「なんでそんな恰好を? そんな恰好をさせる事ないだろう!」
「ううぅ……」
リーさんの怒鳴り声を聞いたら急に、成功したんだと安堵した。そうしたら涙が止まらない。その場にいた全員がギョッとしているのがわかる。
「大丈夫?」
リーさんがギュッと私を抱きしめる。
「………」
これはこれで、恥ずかしい……。
「ここまでして、満足ですか?」
ドキっとした。
とても低い声だった。
チラッとリーさんを見ると、二人を睨み付けていた。
「疑ってすまなかった。謝罪として宿を用意しよう。今日はそこで、ゆっくり休んでくれ。でだ、もう決定事項なので伝えておこう。フェアルは、一冒険者として頑張ってほしい。以上だ」
よかったぁ。何とかなったわ! こんな格好までさせられて、王宮で働けって言われたらどうしようかと思った。
二人はいう事だけ言うと、バタンとドアを閉め出て行った。
「ご苦労様」
もう一度ギュッとリーさんに抱きしめられる。
いやもう、いいんですけど……。
「どういう事? 私を嵌めたの?」
あんまりにも静かだったから、ヌティーナさんの事を忘れていたわ!
ムッとして私達を睨んでいる。
「嵌めるとは? 俺達が何をしたと?」
つらっとリーさんは、ヌティーナさんに言うと、彼女は唇をかみしめる。
「いちゃついていないで、さっさと王宮から出ていきなさいよ!」
ふんっと、捨て台詞を言ってヌティーナさんも部屋を出て行った。
別にいちゃついてないけど……。
「まあ、これからだよね」
何か視線を感じると思ったらリーさんが、私の胸をジッ見て呟いていた!
「もう着替えるから出て行ってよ!」
私は服で胸を隠し叫んだ!
もう男どもは!
ごめんっと笑いながら言って、リーさんも部屋を出て行った。