010 ☆いざ、決戦!?☆
「起きて、フェアルさん」
私は揺り起こされて目を覚ました。目を開けて飛び込んで来たのは、リーさんの顔だった!
「………!」
そうだった! 昨日あれから色々やって寝るのが遅くなって。でも眠れなくて……きっと一時間ぐらいしか寝ていない。
「君って神経図太いね。ぐっすり寝れるなんて羨ましい」
「………」
うん。一時間ぐらいぐっすりね!
って、言うか図太くないと、この作戦出来ませんから!
心臓の音が高まって行く中、身支度をして宿の外に出た。
そこには、ヌティーナさんが待っていた。
「「おはようございます」」
「おはよう」
私達は声を揃え、挨拶をする。
今日はヌティーナさんは機嫌が良さそう。
ニヤニヤしている……。
「そう言えばあなた、鑑定師なんですってね」
「ちょっ……」
ヌティーナさんはそう言って、スッとリーさんの眼鏡を取り上げた!
「あら、眼鏡外すと意外と面構えいいじゃい」
人差し指でリーさんの顎をクイッと上げ、にっこりと言った。そして暫くそのまま、ニヤニヤとしてリーさんの顔を見つめる。
これ絶対わかってやっているよね!?
「………」
「褒めたんだからお礼ぐらい言ったら?」
「知っていてやってますよね? 眼鏡返して下さい」
キッとリーさんは、ヌティーナさんを睨み付け言った。
ムッとしてヌティーナさんは、顎から指を放す。
「あら怖い。やっぱり眼鏡はいるわね。ないと目つき悪すぎだわ」
そう言いつつリーさんの顔に、眼鏡を返した。
「う……」
その途端リーさんは、崩れる様にしゃがみ込む。
きっと頭痛とかで気分が悪くなったんだ!
「リーさん、大丈夫!?」
「たかが数分でそれ? だから魔力6あっても王宮に入れなかったのよ! 使い物にならないものね?」
「そんなに王宮の人って偉いの!? わかっていてやるなんて酷いじゃない!」
つい私は、ヌティーナさんに返した。
「小娘が盾突くんじゃないわよ!」
「何ですって!」
「フェアルさん! いいから! 大丈夫だから!」
リーさんはそう言って、スクッと立ち上がる。
「……でも、そこまで言うのならフェアルさんの鑑定、ヌティーナさんが行って下さいよ。俺に見せつけて下さいよ、職業鑑定を!」
って、リーさんが挑発してるんですけど! 大丈夫なの?
「そうね。やりましょうって言いたいけど、私が決められる事じゃないからね。来たわよ。さっさと乗って! 出発よ!」
馬車が到着し、私達は王都に向けて出発した。
今回は襲われる事無く午後に無事、王都に着き王宮の中へ案内された。
まさか王宮に連れて行かれるとは思わなかった。チラッとリーさんを見ると、大丈夫と頷いた。
ここまできたらやるしかない!
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私は王宮内にある鑑定の間の魔法陣に立たされた。
ここに居るのは、白い衣装に身を包んだ四代表の一人、ハシントさん。四十代ぐらいの渋いおじさま。王宮内を仕切っているらしい。碧い髪と瞳が衣装に合っていてカッコいい!
でも四十代って、父さんと一緒なんだよね……。
そして後二人、私以外にいた。一緒に来たリーさんとヌティーナさん。
着いた時にヌティーナさんでと言うと、あっさりOKをくれた。誰でもいいんだ。出来る人なら……。
「では、ヌティーナ。宜しく頼む」
「はい!」
ハシントさんに言われ頷いて、私の前にヌティーナさんが立つ。
「では、始めます!」
これで運命が決まる!
私は目を瞑った。
感じる。手に握ったカードが反応しているのが……。一先ず成功している様子。
「どうだ? ヌティーナ」
「……はい。もう少しお待ちを」
またカードが反応している。今のところ大丈夫そう。
「ヌティーナ?」
しびれを切らしたように、ハシントさんが名を呼んだ。
「……申し訳ありません。読めません!」
「読めないだと?」
眉間に皺を寄せハシントさんは呟くと、リーさんに振り向く。
「リー、君には読めたのだな?」
「はい。ですが、魔力までです」
「確かに7だったのか? 君は確か6だったな」
「はい……」
頷きリーさんは返事を返した。
「よし、わかった。カードをここに!」
「何をなさるのですか?」
ハシントさんの言葉にリーさんが聞く。
「カード師も鑑定の能力があると聞いている。魔力が7もあるのだ。余裕で鑑定できるだろう」
「自分自身でさせるという事ですか?」
「そうだ」
リーさんの質問に、ハシントさんは頷いた。
暫くするとカードが数枚、ハシントさんの手元に届く。
「では、お願いしよう」
そう言ってハシントさんは、カードを私に手渡す。私は震える手でそれを受け取った。
私は唾をごくりと飲み込む。
緊張から呼吸が苦しい。
「大丈夫。君になら出来る」
リーさんを見ると、力強く頷いた。
そうね。やって見せるわ!
「いきます!」
私は右手でカードを持ち、左手をギュッと握り胸に当てた。
スッと文字が浮かび上がる。
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名前;フェアル
職業:カード師
熟練度:54
性別:女性
種族:人間
年齢:16
魔力:7
HP:150/150
魔力:99/100
攻撃力:22
防御力:35
持久力:100
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魔法:―
スキル:カード転写レ
ベルMAX/文字サイ
ズ固定
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「できた!」
「成功だね!」
私が喜ぶと、リーさんも小さくガッツポーズをする。
「………」
だけど、ハシントさんは難しい顔つき。
そりゃそうでしょうねぇ。期待ハズレもいいところ。だってスキルはカード転写しかないのだから。レベルがMAXだとしても納得はいかないかも。
「ひとつ聞くが、これで精一杯か? この続きは無理か?」
「続きと申しますと?」
私は知らないフリをして聞く。
属性と加護は書きだせないかと聞いてるのだと思うけどとぼける。
チラッと、ハシントさんがヌティーナさんを睨み付ける。
このステータスで、職業が読めない訳がないからね。
ヌティーナさんは、ビクッと肩を震わす。
「ヌティーナ、君は本当に見えなかったのか?」
「……はい」
俯き消え去りそうな声で答えた。
ちょっとかわいそうな気もするけど、自業自得よ! 思い知ったか!
「そうか。職業鑑定はこれにて終了にする。三人とも待機しているように」
私とリーさんは、ふうっと胸を撫で下ろす。
後は王宮入りにならない事を祈るだけ。
リーさんは、魔力6だったけどスキルなどの関係で入れなかった。その事を踏まえると、私も入れない確率がある!
私達は応接室で、結果を待った。