009 ☆フェアルの選択☆
どうして? もしかして王宮の人が私を?
「ごめん、不安にさせて。別に意地悪で、君を王宮に入れたくなくて言ってるんじゃないんだ。逆に教えないかなって思ったけど……。やっぱり7は、脅威過ぎる」
「え? 脅威?」
リーさんは、頷きつつ体を起こす。
「君の事を知っているのは、俺とマスターのアーチさん。後は王宮の数名だと思う。もしあの賊が、ギルドの馬車と知って襲ってきた場合、中の人間がターゲットで間違いない。見ればギルドの馬車だとわかるし、俺はわかって襲ったのは確実だと思っている」
「そ、そんな……」
「今、トップにるのは四名。皆魔力9の人達らしい。次が魔力7の数名。その下が魔力が5と6者達。王宮では魔力4以下は、下っ端扱いだと思う。それでもヌティーナさんの様な予知持ちだと優遇される」
なんか凄いところなんだ。優雅にまったり楽しくは過ごせなさそうね……。やめようかな王宮に入るの。勧誘受けても街に戻ろう!
ヌティーナさんみたいな人達相手にしていたら、胃に穴が空く!
「嫌になった?」
「え? まさか嘘!?」
青ざめている私の顔を見てそう言った。まさか意地悪とかないよね?
「今言った事は本当だよ。きっと二手に分かれるだろうね」
「二手?」
私が首を傾げると、そう二手と頷いた。
「君に媚びを売る者と邪険にする者の二者。はっきり言えるのは、王宮内には味方はいないだろうね。しかも君に賊をけしかけた相手がいるかもしれない」
「………」
そんな事を聞いたら王宮に入りたいなんて思う訳ないじゃん!
今すぐ帰りたい!
「なんで、そんな話聞かせるのよ! もう今すぐ帰りたいじゃない!」
「君の為だよ。俺も今では王宮に入りたいなんて思ってないからね。ただ多分、カード師の特徴を知っていれば、絶対王宮入りだよこのままだと」
「え? 私に選択権ってないの?」
こくんとリーさんは頷いた。
「まず職業鑑定をされる。これは全てね。スキルとか全て。君、加護持ちだし間違いなく王宮入り。だから覚悟しておいた方がいい。下手したら……」
「下手したら……?」
そこまで言っておいて、いきなり黙り込んだ。
ちょっと脅しすぎだってばぁ!!
「こ、殺される?」
リーさんは、首を横に振る。そして神妙な顔で口を開く。
「スパイみたいな事をさせられると思う。イレーズも持っているんでしょ? 王の直々の命令とか受けて、逃れなれなくなると思う」
「え! そんな! スパイなんて嫌よ! って、突拍子過ぎない?」
「いや、これを読むかぎり可能性は十分ある」
鞄からカード師の事が書いた紙を出し、私に見せながらそう宣言した!
「で、ここから君に選んでほしい」
「選ぶ?」
こくんとリーさんは頷く。
「実は今は王宮には、魔力6以上の鑑定師はいないんだ。だから君が俺の話を聞いて、王宮に入りたくないっていうのなら方法はある。但し、冒険者でいられなくなる可能性もある」
「それって……」
王宮に入る事が条件で冒険者になるって事と同じじゃ……。入らないなら冒険者を諦めろって事?
「……そんなの選べない!」
「そっか。ごめん、忘れて……」
そう言うと、ごろんとリーさんは横になった。
ちょっと! そこまで言っておいて方法は言わないの!? 気になるじゃない!
「あの……今は選べないけど、方法聞いたら選べるかもしれないから……」
リーさんはチラッと私の方を見るもこちらは向かない。
「その方法は、俺も加担する事になるから。君の覚悟がないなら言えないよ」
「え!?」
それって、バレれば自分も危ういのに、提案してくれたって事?
そこまでして……。
『一つだけ言っておく。冒険者を辞めても封印されない限りは能力は使える。君の描いていた冒険者としての生き方でないのなら、別に違う道に進む事も考えるといいだろう』
ふと、マルモンドさんの言葉が浮かんだ。
そうだよね。ここまでしてくれようとしてるんだから、きっとスパイみたいな事をさせられる可能性が高いんだよね。私はそんな事はしたくない!
「覚悟きめたよ。私、王宮には入らない。それで冒険者になれなかったとしても……」
そう言うとリーさんは、起き上がり私の方を向いた。
「じゃ誓って。絶対に誰にも言わないって。君と違ってバレれば俺は、死刑になるかもしれないからね」
「え! ……言わないけど、その方法って絶対にばれないの?」
「成功すればね……」
いや成功すればそうでしょうけど、失敗しないのって事なんだけど!
大丈夫かな……。私の為に命まで投げ打ってくれるって事だよね? って、なんで?
「あの、なんでそこまでしてくれるの?」
「……なんでだろうね? まあ、一つはヌティーナさんに会ったからかな。君にあんな風になって欲しくない。でもこのまま明日向かえば、王宮入りは免れない。悪あがきをしてみようかなと。まあ失敗したら、よくて冒険者剥奪になるね、俺は」
これってリーさんの運命も背負うって事じゃ……。
いや、リーさんにとっても私の運命を背負うって事になる。
「リーさんはいいの? リーさんにしても私の運命を背負うみたいになってるけど……」
「あ、嫁にはもらわないよ」
にっこりほほ笑んで何を言っているのでしょうか!
自分の顔が火照っているのがわかる。きっと真っ赤だよ顔。
「もう! 誰もそんな事言ってないでしょ!」
「よかった。じゃ作戦だけど……」
何でしょうか。このつらっとしているのは!
緊張はほぐれたけどさ。リーさんのやり方なんだろうけど、私には刺激が強すぎなんですって!