ショコラティエの小さな決意
すぐに気付いた。あの袋は"パティスリー レイル"の物だ。大きさからして小さめの焼き菓子数個のラッピングか、ショコラ数個くらいのちょっとしたプレゼントだろう。
プレゼントだと思ったのは、あの袋の紐を小さな両手でしっかりと持ち、時よりスマホを気にしては嬉しそうに、ちんまりと膝の上に乗ったその袋に目を向けていたからだ。それに加えてその袋の中にもう一つ同じ紙袋が見えた。
彼女のわくわくを力添えするその小さな紙袋が少し悔しく思えた。
けどあそこは確かに素晴らしい店なのだ。彼女のわくわくを乗せるだけの、ちょうどいい甘さが揃えてある。
有楽町に着く頃を見計らって彼女は席を立つ。スラリと伸びた背筋に、長めのフワリとしたスカートだけが揺れ、どうしても絵になる。
でも… 手元の紙袋にもう一つ…。彼女に似合うような淡いオレンジ色のリボンをかけたいと思った。
よし、今日も誰かが誰かに届けたくなるような、そんなショコラを作ろう。