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勝利の女神が教えてくれたこと  作者: 大栄カケル
7/7

7話

翌日、学校で友達にさりげなく、普段どこで髪を切っているかを聞いて回ってみた。それこそ人それぞれの回答で、僕と同じで近所の1000円カットに行っている人もいれば、親に切ってもらっている人や、床屋に行ってる人もいたが、美容院に行っている人が多くて驚いた。もちろん蓮も美容院に行っている人の一人だった。


「ねぇ蓮、頼み事があるんだけどさ」

「なに?」

「その美容院に僕も連れて行って」

「あーいいよ、今週の日曜空いてる?俺も行くから一緒に行こうよ」


その話を近くで聞いていた、蓮ファンクラブ3人組から「美容院に行くなんて意外!」「そういうの興味ないと思ってたわ」など言われ、僕はムっとして言い返した。

「どういう意味だよ」

3人は目を合わして、それぞれ思いつく限りの、僕のダサい部分を指摘し始めてた。

「だってねぇ、あんたお洒落とかって興味なさそうじゃん」

「そうそう!寝癖とかいつもすごいし~」

「髪モサモサだし~」

「小学校の時は坊主だったのにね~」


恐ろしい評価だった。

もしチャイムが鳴らなかったら、永遠と酷評を聞かされるところだった。

どうやら僕の外見評価は自覚している以上に最低の様だ。

今の髪型だって、小5の頃にクラスの女子達が『坊主は恋愛対象外だね』っていうのが聞こえて以来、髪を伸ばして、当時人気だったロックバンドのボーカルを意識していたつもりだった。しかし結局のところ、自分で思う格好良さと女子が思う格好良さは違った様だ。



そして僕は約束の日曜日に蓮に連れられ、駅から少し離れたパスタ屋さんの二階にある、お洒落な美容院へ着いた。普段の床屋とは雰囲気が違いすぎて、一人じゃまず入る勇気はなかったと思う。店に入ると蓮が受付のお姉さんと親しげに話して、担当の人に連れられてお店の中へ入っていった。僕の方は問診表に記入して待っていると、奥から店長と呼ばれる茶色の長い髪を片側にまとめた綺麗な女性がやってきた。


「こんにちは、今日担当させてもらいます市川です」

そう言って笑顔で挨拶をしてもらい髪を切ってもらう事になった。

「蓮君から聞いたけど、格好いい感じに変身したいんだって?」

「え、あ、はい…」

あの野郎、嘘ではないとはいえ、なんて恥ずかしい事を言うんだ。あー帰りたい。なんていうか僕みたいなのが、格好良くなりたいなんて言ったら、バカにされるのではないか?そんな不安があったからだ。


でもそれはただの杞憂だと、市川さんの真剣な目を見て、直ぐにわかった。


「任せてね!どんな髪型にしたいとかイメージはある?」


「特にないです…とりあえずバッサリ切りたいなーとは思います」

「それじゃあ、こんなのはどうかな?」

そう言って市川さんはカタログから、いくつか候補をあげてくれたが、正直自分じゃどれが似合うか、皆目見当がつかなかった。僕の様子を見て「これなんかいいと思うよ!」顔の形や髪質から提案してくれたもに対して「じゃあそれで」とお願いした。


カットの間、気がついたら僕は自分の話をたくさんしていた。

それを笑顔で聞いてくれるので、なんとも気持ちの良い時間だった。

それと初めて眉カットをしてもらった。


全てが終わり、髪をセットしてもらうと、さっきまでの、もっさりした自分は消え、さわやか”雰囲気”イケメンへと変身を遂げた自分がいた。


「おおお!!本当に格好良くなったな!」

なんて蓮が言ってくれるので、嬉しかった。


僕たちがお会計を終えて、帰ろうとした時に

一人の女の子が入ってきた。


「あ-蓮!来てたんだ!」

「いまから帰るところだけどね」

――あっ市川美結だ。


まだ僕とは面識がなかったので、この時初めて、蓮に紹介してもらう形で、挨拶を交わした。どうやらこのお店は市川のお母さんが経営するお店だそうだ。


「バド部の人だよね?」

「あれ、市川知ってるの?」

蓮が驚いて聞いた


「だって私は女子バスケだから、たまに練習隣になるじゃん?だから見たことあるよ!」


「そういやそうだな、じゃあさ、こいつどう?格好良くなった?」


「うん!すごいカッコ良くなったね!」


男というのは単純だ。褒められると嬉しくて、機嫌が良くなる。しかも好きな人から言われたら、誰だって有頂天になる。僕は軽い足取りで帰宅して、そのままニケに報告した。



「あら、良かったじゃない!」

「ところで、モテる男の条件ってわかる?」


「そりゃーイケメン、高身長、優しいとかかな-?」


「他には-?」


「えーっと、運動神経が良い、勉強ができる、面白い、お洒落、声が格好いい、歌が上手い、ギター弾ける…」


「そうね、本当にたくさんあるわね。そんな訳で今日の課題はせっかくだから、モテる事に繋がる課題にするわ」


「おおお!」

これは期待に胸が高鳴る。


『聞き上手になりなさい』


「聞き上手ですか」

これは確かどこかの恋愛指南サイトでも見たことがある事だ。話下手でも聞き上手になる事でモテるといった内容だったと思う。


「あなたも聞き上手はモテるって事は知っているわね?」

「はい、聞いた事はあります…」

「でも、実践はしてないの?」

「はい…」


「それじゃあ、これからは意識してやってもらうわ。面白い話をするのは、難しいけど、聞き上手にはコツを掴めば誰でもなれるわ。その為のポイントを頭に叩き込みなさい」


「はい!」

僕はニケの教えノートに書き取る用意をして、ニケの言葉に集中した。


「まず基本は相槌&質問の繰り返しね。相手の話に共感したリアクションと相槌をうちながら聞いて、適切なタイミングで、相手の会話の中の情報から、質問して掘り下げる事」


「そして聞き上手の神髄は相手に興味を持つ事よ、つまり愛が大事ね。あとは無闇に自分の反対意見を言ったり、相手を論破しない事。特に討論は女の子が嫌うから要注意ね」


「なんとなくわかったけど、共感したリアクションって何の事?」


「それは、ただ相手の話に対してへー・うん・そっかーって無表情で言うんじゃなくて、相手が嬉しい話をする時は笑顔で聞いて、驚いた話ならビックリしたリアクション、愚痴なら一緒に怒ったりする感じかしら?誰だって自分の話を無表情で聞かれたら、つまんないのかな?って思うじゃない?そうじゃなくて相手を『喜ばせる相槌』をマスターする事が大事なの」


「なるほど…難しそう」


「とりあえずやってみることね!あと、あまりオーバーにリアクション取ったりすると、相手を怒らせる事になるから、そのへんは上手い人を観察するなりしなさいね」


ニケの課題 5

≪聞き上手になりなさい≫

友人関係から恋愛に仕事、大事なのは面白い話をするより、聞き上手になること。人は元来、話す事が好きな人が多いんです。是非、やってみて下さい。

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