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勝利の女神が教えてくれたこと  作者: 大栄カケル
4/7

4話

「おかえり。学校はどうだった?」

ニケは眠っていたのだろう、目をこすりながら言った。カラーボックスの上段を寝床としているようだ。中段には突っ張り棒とタオルでシャワーカーテンを作りあげて、お風呂スペースを用意していた。僕が元々置いていたフィギュアと本は、さも当然の様に、床に放り出されていた。ニケには言いたい事が山ほどあったが、僕は床の掃除をしながら、学校での報告を優先した。これが大人の対応だ。

「人を喜ばせるって思ったより難しかったよ。でも、やってみると気持ちが良かったよ」

僕の正直な感想だ。それを聞いてニケも嬉しそうだった。


とはいえ、僕がやった事といえば、消しゴムを持ってくるのを忘れた友達に貸してあげた事、黒板が消されていなかったら、進んで消した。それくらいだ。


ただ、そういった行動をとるのは気恥ずかしさがあった。それに疑問も浮かんできた。僕はこんな事をしたくらいで人生の勝利を手に入れる事ができるのだろうか?クラスの女の子からモテモテになんてなれるのか?それに人を喜ばせるなんて事を僕がしたって、ただの偽善なのではないか。

こんなので僕は変われるのか疑問をニケにぶつけてみた。


「でも僕は本当にこんな事で変われるのかな」

ニケは小さくため息をついて言った

「そんなに私のいう事が信用できないの?」

「いや、そういう訳じゃなくて…なんか、あの、必殺技?みたいな、方法を伝授して貰えるのかと思ってまして」

するとニケは少し考えてから言った。

「例えば『バドミントンで相手が取れないスマッシュ』とか『必ず成功する告白方法』とかのこと?」

「そうそう!そういうやつ!」

「そんなの、これ見たら書いてあるわよ」

そう言って渡されたのは僕の携帯だった。

どうやら勝手に使っていた様だ。

「例えばこれとかーーーあぁこれもでしょー」

そう言ってニケが見せてきたのは僕がブックマークしていた『バドミントンのプロ選手が鮮やかにやっているプレー動画』だったり、『吊り橋効果という心理学を用いたデートテクニックのサイト』だった。プレイバシーの侵害もいいところだ。恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になっていた。


「この選手のプレーは凄いけど、結局基礎があってこその技よね。吊り橋効果を実践するのもいいけど、まずその前に遊園地デートとか誘わないと無理な話ね。」


「ま、要するにあなたが言っている事は『楽して、成功したい』っていう甘えん坊ちゃんってこと」

ニケには僕の全てが見透かされている様でなんとも惨めな気持ちになった。


「運動も恋愛も交友関係も基礎練習が大事なの」


「じゃあ人を喜ばせるっていうのも基礎練習なんですか?」

「その通りよ、今は騙されたと思って、常に人を喜ばせたいアンテナをフル活用することね、それと思うだけっじゃなくて、行動する事が大事だから肝に銘じておきなさい」


「それじゃあ、新しい課題を発表するわ」

「は、はい」

『毎日ストレッチをしなさい』


「ストレッチ・・・ですか?」

「そうよ、これから死ぬまで毎日続けなさい」

「なんで毎日やるのか、その、理由を教えてもらってもいいですか?ケガ予防の為なら、部活の前にやっているし…」


「それじゃあ立ってる状態から前屈してみて」

僕は指の先と床との距離が15cm以上あいていた。

「次は開脚してみて」

「うっ…」

90度が限界だ。


「ストレッチは練習後にしっかりやるのも大事なのよ。それをサボってきた結果がこれよ」

「だって、下校時間ギリギリまで練習してるから、時間ないし、疲れて帰ってきてるから、ストレッチするの、なんとも面倒くさいんだもん」

「面倒と思わなくなるまで、まず毎日やりなさい、そのうち歯を磨くように、しないと逆に気持ち悪くなるから」

「あと面倒くさいとか、やる気が起きない時は、やる気が出るように工夫するのも大事ね」

「ストレッチやったら、アイス食べてもいいみたいな?」

「それは外因性の動機ね。でも継続してやるなら、内因性の動機にした方がいいわ」

「なにそれ」

僕は首をかしげた。

「例えばお金が貰えるから絵を描く、これは外因性の動機。絵が書くのが好きだから描く、これは内因性の動機よ」

「あぁそういことか、なんとなくわかったけど、ストレッチの場合どうしたらいいの?どっちかっていうと身体硬くて、ストレッチ好きじゃないんだけどさ」

「それならストレッチをする事のメリットを調べてみたり、筋肉について勉強してみたりするのもいいわね」

「なるほどね、じゃあなんで外因性の動機じゃだめなの?」

「ダメって訳じゃないの。ただ継続してやる為の動機としては内因性の動機の方がモチベーションを保ちやすいからよ」

たしかにニケのいう通りだ。勉強なんかも1時間頑張ったらゲームできるって思うより、将来いい高校、大学に入る為に頑張るって思った方が捗るもんな。


「それにしてもニケ、そんな難しい言葉よく知ってたね」

「あ、当たり前でしょ!神様なんだから!」


その後気がついた話だが、僕の携帯の履歴に『勉強 やる気』と検索されたものを発見した。とんだ嘘つき女神ニケ。彼女は今日も元気にお煎餅を貪りながら、お茶をすすっている。

ニケの課題 2

≪毎日ストレッチをする≫

身体が硬い人には特に辛い課題に感じるかもしれません。ストレッチをやる際は、勢いをつけず、ゆっくり息を吐きながら、どこの筋肉を伸ばしているか意識するのがポイントです。ストレッチをすると疲れがとれやすい身体になったり、新陳代謝が上がり美しい身体になったり…!自分の一日の行いを振り返る時間として、お風呂上がりにやってみて下さい☆


継続して行うが大事です。

ニケからの課題、実践して下さいね

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