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行方不明の姉を探しに異世界までやって来た。  作者: 手島雨水
第四章『地球とミッドナイト』
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第24話「山犬」

宗教団体。宗教活動のための団体。宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、および信者を教化育成することを主な目的とする礼拝の施設を備える団体をいう。また、これらを包括する団体でもそうである。宗教団体は、宗教法人法に従って宗教法人になることができる。


港町ヴィクトリアには、そう言ったものと似たような団体が存在するらしい。


「ジャッカル……山犬?」


俺とエレンは宿の料理人に頼んで昼食を作ってもらい、ロビーでそれを食べていた。無言で食事する習慣がないドワーフであるエレンが、ジャッカルなる組織の話を持って来たのがこの会話の始まりだ。


「はい。最初にこの町に来たとき、噴水広場で演説をしていた人が居ましたよね? その人がジャッカルのリーダー、ダミアン・スターライトさんなんです」

「あぁ……金髪の……」


彼の金髪は俺のようにただ派手で鮮やかな偽物感満載の猿真似金髪ではなく、北国の人のように薄い爽やかな白に近い金髪なのである。


「シンヤさんと同じくらいハンサムさんで、女性からの支持が高いらしいですよ」

「ふーん。自分に惚れた女性をマインドコントロールする賎しい宗教団体なんじゃないの?」

「それは違います」


エレンの声が強くなった。


「ダミアンさんはそんな人じゃありません。ジャッカルのメンバーになるには条件がありまして、ワイルドキャットの被害にあった人しか入団できないんです。ダミアンさんは大切な人を殺された方々の心のケアを行っている優しい人なんです」

「で、エレンはどうしてそんな話を?」

「あ、あたしはシンヤさんとお話がしたくて。シンヤさん、どんな話題が好きなのか分からなかったので……ごめんなさい」


少し涙目で斜め下を見ながら謝るエレンを見て、俺は顔を赤く染めた。


「うっ―――?!」


そして白身魚の団子がのどに詰まった。


「大丈夫ですかシンヤさん! はい、お水です!」


エレンは慌てて瓶ごと水を渡してくれた。俺はそれをゴクゴクと喉を鳴らしながらすべてを飲みほした。


「ぷはあぁ……エレン、ちょっと出てくるよ。夕飯前には戻るから。そしたら、また夜風に当たりながら何か話そう」

「……はい!」


エレンは満面の笑みを見せた。




とはいうものの、もう大体のところは観光してしまった。特に行きたいところもない。そろそろ恵土に行くための荷造りでも始めようかな。


「あ、でも金ないや」


俺は普段、金を地球から持って来た財布に入れているのだが、その財布を宿に忘れてきてしまった。


「ふぅ……」


とりあえず噴水広場のベンチに腰を落とす。


「そういや船って幾らかかるんだろ?」


なんてことを考えながら生き行く人々の間から見える噴水を眺めていると、一人の男が近づいて来た。


「……」


しかし何も言わず通り過ぎてしまった。人を避けながら歩いていたらたまたまこちらに近づいてきただけなのだろうか。

そう思った次の瞬間、再び彼の姿が見えた。今度は顔をはっきりと。そしてその人物には見覚えがあった。


「やぁ」


声を掛けられたが、俺は男にナンパされる趣味はないので、まずは無視をする。


「君だよ。金髪の東洋人くん」


これを言われちゃ黙ってられない。


「どうしてそれを?」

「初めて君がこの町に来た日から君のことを調べていたよ。西から来たんだってね? リザードマンの剣を持った金髪の東洋人、マヨナカシンヤくん」

「まぁ、そうだね。俺のことだよ」

「僕は―――」

「ダミアン・スターライト」

「……よくご存じで」

「あんたのことも初めて来たとき目にしたよ。何やら難しい呪文みたいな演説をしているから、賎しい宗教団体かと思ったけど、そうじゃなさそうだね」

「今日、僕が君に会いに来たのはスカウトするためだよ。君に僕らジャッカルに入ってほしいんだ」


初めてのスカウトは映画俳優のスカウトがよかった。


「……悪いけど、俺はべつにワイルドキャットに恨みなんか―――」

「君の力が欲しい。奴らに恨みを持っている人々ばかりを集めているわけじゃない。僕らの考えに賛同さえしてくれればいいんだ。警察は役に立たない。僕らが彼らに罰を与えなければならない。奴らの悪行は留まることを知らない。このままでは、近い将来、世界中が山猫の支配下に置かれてしまうんだよ」

「う~ん……」


確かにそれは困る。姉ちゃんを見つける前にそんな北斗の拳みたいな世界になったらそれこそ面倒くさい。


「もとに戦おう、同志よ―――」


なんて真っ直ぐな目をしているんだ。その青い目が綺麗なんじゃない。目の奥の心の中にある希望の光が内から輝いているんだ。

俺は操られるように、彼の手を握った。




実に賑やかだった。まるでモンスターハンターに出てくる酒場のような雰囲気だ。可愛らしいフリルの付いたミニスカートを穿いた人間の女性が飲み物や食べ物を次から次へと運んでくる。


「はあぁ……神も悪魔もない。どちらも人を苦しめる」

「お前飲み過ぎだぞ」


酔いつぶれる人やそれを看病する人。


「お前の恋人はいつも笑っていていいよな」

「あんなの、心からの笑みじゃない」


女の話に浸っている人たちもいる。


人間だけじゃない。中にはエルフやドワーフもいる。


「―――やぁダミアン」

「ビリー。紹介しよう、マヨナカシンヤくんだ」

「へぇ君があの……俺はビリー・モート。よろしく」


自己紹介をしてきたのはまたもや金髪の男。イギリスの紳士がかぶるような長い黒帽子が印象的だ。タレ目でダミアンとは違い、色気のある目をしている。しかし、どういう人なのかよく分からない。彼の何かが俺を遮断しているような感じがする。


「俺もダミアンもシンヤも金髪。まさに黄金色の三銃士(ゴールデン・マスケティアーズ)

「銃士? 俺らが」

「おいビリー。その呼び方はやめろと言っただろ」


そうは言ってもダミアン、満更イヤそうでもない表情だ。


「ジャッカルについてはある程度ダミアンから聞いていると思うが、実はそれだけが顔じゃない。ジャッカルは慈善団体としても、冒険者ギルドとしても市に登録している」


前にチラッとギルドについては少し話しただろうが、もう少し詳しく解説しよう。


西欧の中世都市においては、市参事会を通じた市政運営を都市の成立・発展に大きく寄与した大商人(遠隔地商人)によって組織された商人ギルドが独占していた。しかし、商人ギルドによる市政独占に反発した手工業者たちは職業別の手工業ギルドを結成し、商人ギルドに対抗して市政参加を要求した。この両集団の闘争はツンフト闘争とも称され、闘争を通じて手工業者にも市政参加の道が開かれることになった。


少し長かったが、以上である。ただこの世界のギルドなるものが地球と同じ認識をされているかは分からない。


「つまりここに入ればギルド入りしていることになり、船の運賃が割引されたり、立ち入り禁止の危険区域にも入ることが許される」

「何だって?!」


それは良い事を聞いた。


「どうだ? ギルドとして見るなら、可愛いウェイトレスもいて、依頼数も多い。かなりいい場所だと思うんだが?」

「う……そ、それは……」

「ビリー。あまりシンヤを困らすなよ。いいんだシンヤ。無理に入れとは言わない。今日は見学させるために連れてきた」

「今日はもう疲れただろ。宿に帰ってゆっくり休むといい。もしその気があるなら、また来いよ。いつでも大歓迎だぜ」

「その通りだシンヤ。僕らはいつでもここにいる」

「……あ、ありがとう二人とも」


最後にそれだけ言い、俺はギルドを後にした。




その日の夜。ジャッカルにて。


「おやすみ……」

「ああ、また明日」


ギルドのメンバーがダミアンにあいさつをした。


「ダミアン、まだ眠らないのか?」


そこへビリーやがやってくる。


「ビリー……彼、どう思う?」


「あのガキのことか? 面白そうなガキだった。何か、普通じゃないというか、お前とはまた違う、特別な何かを感じた」

「そうか……」

「ダミアン」

「なんだい?」

「……いいや、おやすみ」

「おやすみ」


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