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 箕舟の町外れにある寂れた公園に来た私とつぐみさんをある人物が待っていた。

 その人物はキィコキィコとブランコを軽く揺らしながら、私たちを見た。

「あなたが、安塔 枝祈さん?」

「はい。はじめまして、細川 詩織さん」

 私を見上げたその面差しに少し胸が締め付けられた。やっぱり、姉妹なんだな。伊織さんとよく似ている。

 夏だというのに彼女──伊織さんの姉、細川 詩織さんは長袖のジャージを着ていた。まあまだ始まったばかりの夏だから、そんなに暑くはないのだが、ファスナーをきっちり上げている姿がなんだか息苦しく感じられた。

「いちなら、ここにいるわ」

「ええ……」

 詩織さんはキィコ、と漕ぐのをやめ、膝元に置かれた市松人形を示す。豪奢な着物、絹糸のような黒髪、涙で紅色に濡れた顔は間違いなくいちだった。

「安塔さん、隣、どうぞ」

「失礼します」

 私は隣のブランコに腰掛けた。キィ、と軽く、軋む音がした。

 少し頼りない気もするが、確かに私や詩織さんを支える錆だらけの鎖越しに詩織さんが一つ、視線で問いかけてくる。その視線を追うと、つぐみさんを見ていた。

「彼女は伊織さんと同じクラスのつぐみさん。箕舟高校の最初の事件の第一発見者で、あなたからのメッセージを私に届けてくれたの」

「伊織のクラスメイト、ね」

 私の発言を反復した詩織さんの声は暗い。その暗さにつぐみさんが思わずじり、と一歩退いてしまう。その様子に闇を宿しかけた表情を一変、柔らかく微笑んだ。

「大丈夫よ。伊織の復讐ってあなたや他のクラスメイトを殺すつもりはないから。ただ、伊織のことを傍観していた分、あなたたちには知ってもらいたい。だから、あなたはクラスへのメッセンジャーになって。だから、話を聞いてちょうだい」

「わ、わかりました」

 まだ僅かに陰の見える笑みに怯えながらも、つぐみさんは聞く姿勢になった。

「いちは、多分もう逃げないわ。いえ、私は、かしら?」

「だから、あの教室に、あのノートをわざわざ置きに来たのよね?」

 自身の罪を明かすために。

 そう付け加えた私に、彼女はほろ苦く笑う。きゅ、とその両手がいちの肩を抱くのを視界の片隅で捉えた。

「そう、よ」

 固い声で答えると、詩織さんはおもむろにジャージのファスナーを下げた。その中を見たつぐみさんが絶句する。つぐみさんも伊織さんの日記を読んで事前に知っていたはずだが、やはり、現実を見るのは少々きつかったようだ。

 ファスナーを下ろしていちの肩に手を戻し、覚悟を宿した真っ直ぐな眼差しの詩織さんに真っ向から視線を返す。

 静かに事実を確認した。

「細川 詩織さん、あなたは伊織さんが亡くなったあの日、彼女の両親を──自らの両親を、彼女の目の前で殺しましたね?」

「はい」

 頷いた彼女のジャージ下の白Tシャツは返り血で紅く染まっていた。



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