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「おかしいと思ったんです」

 つぐみさんの声にはっと我に返る。

「多分、安塔さんも気づいたと思いますが、この事件に関して、警察の対応が明らかにおかしいです。安塔さんや風成先生といた湊さんしか、動いていない──むしろ、いちちゃんの行動を容認しているように、私には見えます」

 いちの行動を容認する。それはつまり、殺人を容認するということ。

「例え、実行しているのが人ならざるものでも、許されていいことだとは思えません」

 熱のこもったつぐみさんの宣言に私も同意する。

 私の意志を確認し、つぐみさんは何か決意したように鞄を開ける。

「今見せた事件だけじゃなく、他にも何件も不審死が続いています。多分、安塔さんがあまりテレビを見ないことを知っていて、隠し通せると思ったんでしょう」

 確かに、私は焦ると周りが見えなくなり、目の前にある情報すら見失っている。──テレビを見ないのか、と大地さんに指摘を受けたときもそうだった。

 それを利用された。

「そんなことをする人たちなんて信じられません。だから」

 つぐみさんは数冊の大学ノートを差し出した。

「これ、今回の事件の重要な手掛かりになると思います。あの日、教室の細川さんの席に置いてありました」

「え?」

 そんな、証拠品を勝手に持ち出して?

「本当は悪いことだってわかってます。でも、安塔さんに渡したかった。安塔さんじゃなきゃ、この事件を止めてくれないと思ったんです。それに」

 彼女はそこで目を伏せた。

「細川さんが亡くなった日には、こんなノートはなかった……人形がわざわざこんなことまでするとは思えません。それにそのノートは血に濡れていない。それは──他の誰かが持ってきたことを示しています」

 他の誰か。それが何を示すのかは、はっきりとわかった。

 とても、悲しいことだけれど、頭の片隅にはあった可能性。

「いちの凶行を、人間が手助けしているかもしれないのね?」

「はい」

 そしてその人物が、伊織さんの机にこのノートを置いた。何かを伝えるために。

 私はノートを一冊開く。


「伊織の日記」


「それは細川さんの日記と、彼女の夢が綴られたノートです」

 つぐみさんは悲しげな表情のまま、言った。おそらく、事前に中身を読んだのだろう。

「読んでみてください。安塔さん、細川さんの夢、知りたがってましたよね?」

「ええ。それがきっと、いちを止める鍵にな」

 私は答えながら別なノートを開き、息を飲んだ。

 見出しにはこうあった。


「断罪人形 -ツミタチノヒトカタ-」



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