は
二つ折り携帯の時計表示画面に電話番号が表示されている。
見覚えがある、というか、今まさにかけようとしていた相手、新田さんの番号だ。
何故伊織さんの携帯に? と疑問は過ったけれど、知っている人物からだという安堵が勝り、特に警戒もせず、電話を取った。
「もしもし、新田さん?」
「……」
名前を呼ぶけれど、沈黙しか返ってこない。
「新田さん?」
「…………で」
「えっ」
微かに聞こえた声に私は意表をつかれる。
交番に電話をかけてきた女の子の声だったのだ。
「あなた、どうしたの? あ、新田さんに保護されたのね。よかった……」
「いいえ」
はっきりと答えが返ってくる。その冷たい声に、私は背筋に悪寒が走るのを感じた。
「え、その……違うの?」
「伊織の側にいるでしょう?」
女の子は答えず、逆に私に問いかけてきた。私は冷たい声を無視することができず、ええ、と返した。
「伊織を、眠らせてあげて」
「どういう意味?」
「伊織は、ずっと苦しかったの。伊織は、ずっと堪えてきたの。だから、もう大丈夫だよって、眠らせてあげて。いちが伊織をそんな風にした人たちを、みんなやっつけるから、もう大丈夫だよって」
やっつける? まさか……!
「あなた、人を」
「もう遅いよ。一人やっつけた」
流暢に話すようになった女の子──"いち"は無邪気に告げた。
「ねぇ、いちは今、どこにいると思う?」
冷たい汗がつぅっと一筋、伝い落ちた。
聞きたくない。けれど、震える唇で、先を促してしまう。
「どこに、いるの?」
私の問いにいちが悪戯っぽくふふっと笑う。それはどこか得意げにも聞こえた。
ゆっくりと、はっきりと彼女は告げた。
し、た、い、の、ま、え──と。