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 ひっ、とつぐみさんが声を上げる。彼女も気づいたのだろう。

 市松人形が身の丈より大きな鉈を携えて現れたことに。

「風成先生、うし、ろ」

 震える声でつぐみさんが指摘する。


「もう、遅い」


 低い、地を這うような声が届く。

「う、うわああぁっ!?」

 いちの姿に気づいた風成くんが悲鳴を上げ、


 ばすんっ


 それを断ち切るように、鉈が振り下ろされた。




 聞きたくなかった。


「もう、遅い」


 聞きたくなかった。その言葉だけは。

 けれど、今、私は止めなかった。いちが彼を殺すのを、止めなかったのだ。

 小さな女の子に、罪を重ねさせたくない。──なんて、偽善なんだろう。

 私は、罪を着せてしまった。それどころか、自分の憎しみをあの子に託してしまった。

 こんなだから、私はいつも間に合わない。

 なんて、浅はかなんだろう。私の正義への意識は。

 罪を断とうとする、意志は。


 無力感に苛まれながら、私は七瀬を抱きしめたまま、倒れた風成くんの向こうでいちが血の涙を流すのを見、気を失った。



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