む
あんな悲劇をもう二度と繰り返させはしない。
私は再三のつぐみさんの制止を振り切り、箕舟高校に辿り着いた。
納得しないつぐみさんを、私と七瀬の間にあった中学時代の事件の話をして説き伏せた。途中から彼女は私を止めようとしなくなった。
昇降口に着き、見慣れた血痕を見つける。──いちの足跡だ。
私は迷わずそれを追う。この先に七瀬がいるのだ。いちが導いてくれている。
「助けて」
いちの声が蘇る。
「助けるわ。必ず私が!」
もう遅いだなんて言わせない。今度こそ、間に合うんだ!!
足跡が途切れる。
正確には、ある教室の中へと続いていた。
後ろからついてきていたつぐみさんが、あれ? と声を上げる。
「私たちの教室……」
そう、そこは紛れもなく、つぐみさんの通う教室だった。
私はそれを疑問に思うこともなく、扉を開けた。
何故なら──
「七瀬っ!!」
「安塔?」
「先生?」
私と中にいた人物、つぐみさんが声を上げたのはほぼ同時だった。
教卓にぐったりと七瀬がもたれかかっている。私は弾け飛んでしまいそうな理性を必死に抑えながら、彼女に駆け寄り、教壇から降りて近づいてきた教師を睨み付ける。
彼はつぐみさんの呟きのとおり、このクラスの担任だ。
何故、最初に会ったときに気づかなかったのだろうか。
坂垣さんの遺体が発見されたあの日、私は彼に気づいていなかった。
雰囲気こそ、柔らかに変わっていたけれど、顔は当時の面影を残している。
そう、彼は。
「お久しぶりね、風成くん。いえ、今は風成 章也先生、と呼んだ方がいいかしら?」




