レベル23の猛攻
私の持っているゲパードM1の銃身の脇には、5発の弾丸が入ったホルダーが用意されている。再装填用の3発の12.7mm弾と、12.7mmキャニスター弾と、12.7mm焼夷弾だ。
力也さんやエミリアさんの持っている武器の弾丸はマガジンに入ってるんだけど、私のゲパードM1にはマガジンがないし単発だから、ホルダーの弾丸と今装填している分の弾丸を撃ってしまったら、私は弾切れになってしまう。
鎌の刃を展開したアンチマテリアルライフルの銃身を振り回しながら、私は燃え上がる館の上空で、あの太った人が召喚したポリアフという氷の精霊と戦っていた。これが、力也さんの考えた作戦だった。
このポリアフは、氷を自由自在に操る氷の精霊。その精霊に命令を出すことで、あの太った人はポリアフの持つ氷の力を敵へと向ける事が出来る。
つまり、私がポリアフと戦っていれば、あの太った人は力也さんたちへとポリアフの持つ氷の力を向ける事が出来ないということ。太った人の猛攻の中からポリアフの攻撃をなくすことが出来れば、力也さんたちはステータスが上の相手の攻撃を迎え撃つ事が出来る。
『はぁっ!!』
私はポリアフが放ってきた氷の矢を熱で溶かして防御すると、私の髪に髪留めのように止まっているナパーム・モルフォから火の粉を散らしながらポリアフへと接近した。弾丸を叩き込むためではなく、鎌の刃であの子を切り裂くためだった。
ポリアフは、私のような幽霊ではない。あの転生者が端末で生み出した能力だ。だから、彼女はさっきから無表情のままだった。
蒼いマントを身に纏った私と同い年くらいの幼い少女が、氷の杖で私の鎌を受け止める。私は歯を食いしばりながら鎌を押し込もうとするけど、ポリアフは無表情のまま両手で氷の杖を握り、私を押し返してくる。
『くっ・・・・・・!』
彼女から離れて、弾丸で狙撃しようかな? でも、私のゲパードM1の弾丸の数は力也さんのアンチマテリアルライフルよりも少ない。まだ撃つわけにはいかない。
『!』
その時、ポリアフが杖から左手を離し、左手の手の平に小さな氷の矢を生成し始めたのが見えた。鎌を押し込もうとしている私の腹を、その氷の矢で貫くつもりだ。
私はすぐにゲパードM1を彼女の氷の杖から放すと、燃え上がっている館に向かって飛んだ。
飛んできた氷の矢をゲパードM1の鎌で次々に叩き落とし、私は燃え上がる館の屋根の上に舞い降りる。
『お願い、ナパーム・モルフォ・・・・・・!』
炎を自由自在に操るナパーム・モルフォから力を借りたおかげで、私も炎を自由自在に操る事が出来る。ナパーム・モルフォや自分が生み出した炎だけでなく、館で燃えている炎も操る事が可能だった。
力也さんが最初に館を火炎放射器で燃やしたのは、あの転生者を外に出すためだけではなく、周りに炎を用意することによって、一対一でポリアフと戦う私を少しでもサポートするためだった。
力也さんはとても優しい人だった。私が最初に力也さんの前に姿を現した時は怖がってたけど、次に姿を現した時は、私のことを怖がらずに話し相手になってくれたし、私の事をまだ怖がっていたエミリアさんに私は怖くないから大丈夫って言ってくれた。
力也さん、ありがとう。
『――――おいで、ポリアフ』
屋根の上に降り立った私に、燃え上がっていた炎が集まってくる。私は集まってきた炎を次々に炎の矢に変形させ、その照準を上空で無数の氷の矢を準備しているポリアフに向けながら呟いた。
おそらく、彼女が用意している氷の矢の数は、私が生成した炎の矢と同じくらいかもしれない。
私は烈火の中で彼女を見上げると、周囲に浮かせていた無数の炎の矢をポリアフに向けて放った。
カレンがぶっ放したライフルグレネード弾が、オタクの腹にめり込んでから爆発した。爆発で吹っ飛ばされたオタクに、今度は俺とエミリアとギュンターの3人の銃弾が一斉に襲いかかる。エミリアとギュンターのフルオート射撃が爆発で吹っ飛ばされたオタクの腕や肩にめり込み、俺が放つレイジングブル・バントラインスペシャルの強烈なマグナム弾が、起き上がろうとしたオタクの額を殴りつけた。
前に戦った時のように、弾丸が全く効いていないというわけではないようだ。でも、弾丸はあいつの体にめり込むだけで、まだ1発も貫通した弾丸はない。
マグナム弾を5発撃ち尽くした俺は、シリンダーを横に出して中から空の薬莢を館の庭の石畳の上にすべて落とすと、ポケットから取り出したスピードローダーを素早く押し込み、薬莢が石畳に落ちる音を聞きながらシリンダーを元の位置に戻して再装填を終えた。
エミリアは空になったマガジンを取り外しているためフルオート射撃を中断しているけど、100発の弾丸が連なったベルトを用意しているギュンターは、雄叫びを上げながらオタクに次々と7.62mm弾を叩き込んでいた。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!! よくもミラの喉をぉッ! 死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!」
「ぐっ・・・・・・痛いっ・・・・・・!」
次々に弾丸に殴りつけられながら、オタクがゆっくりと立ち上がろうとする。俺はレイジングブル・バントラインスペシャルのスコープを覗き込み、カーソルをオタクの頭に合わせると、頭に向かってマグナム弾を1発ぶっ放し、すぐに照準をずらしてから体を支えている腕に合わせると、その腕にもマグナム弾を叩き込んだ。
起き上がろうとしたオタクの脂肪だらけの体が、無数の弾丸に殴りつけられながら再び石畳に叩き付けられる。もしギュンターのPKPが弾切れを起こして再装填をする羽目になったら、きっとあいつは立ち上がり、キレながら攻撃してくるだろう。
自分の武器を取りに行くなら、今のうちに行くべきだ。
「3人とも、頼む!」
「任せなさい!」
立ち上がろうとするオタクの両腕を、俺と同じようにマークスマンライフルで次々に狙撃しながらカレンが答えた。
俺はギュンターの雄叫びと、カレンのマークスマンライフルの銃声を聞きながら、燃え上がる館を囲んでいる防壁の外側へと向かって走り出す。
敵兵たちを殲滅した際、あいつらは逃げ出した奴隷たちを追撃する準備をしていたらしく、防壁にある門は開けられたままになっていた。俺は防壁の門を潜って外に出ると、そこに立てかけておいた愛用のアサルトライフルを腰の後ろに下げ、OSV-96を折り畳まずにそのまま肩に担ぐと、すぐに再び門を潜り、庭へと向かって突っ走った。
「力也、再装填だ!」
「任せろぉッ!」
OSV-96のT字型マズルブレーキをオタクへと向け、左手でキャリングハンドルを握った俺は、スコープを覗き込み、オタクへと向かってトリガーを引いた。
「ギャッ!」
12.7mm弾が、近くに転がっていた大剣を拾い上げようとしていたオタクの頬に叩き付けられたらしい。まるで殴り飛ばされたようにオタクは吹っ飛ばされると、再び石畳に顔面を叩き付けられる。
12.7mm弾が命中した頬は真っ赤になっていた。アンチマテリアルライフルの弾丸でも貫通できないのかよ。ゴーレムやアラクネだったらもう粉々になってる筈だぞ。
「お、お前らぁ・・・・・・・・・!」
大剣を拾い上げ、鼻血と鼻水を垂らしながら立ち上がるオタク。豪華な服の袖で自分の鼻水と鼻血を拭い去ると、汗を浮かべながら俺たちを睨みつけてきた。
確かにこいつと俺のステータスはかなり差がある。でも、必死にレベル上げをしたおかげで、ダメージを与えられるようになっている。
「クズが・・・・・・! 僕よりもレベルの低い雑魚がッ! 調子に乗るなぁッ!!」
「うるせえんだよ、ブタが」
「な、なんだとぉ・・・・・・!?」
やかましい奴だ。俺はアンチマテリアルライフルを肩に担ぎながら、必死に叫ぶオタクを睨みつけた。
「よし、次は接近戦だな」
「援護するわ」
「頼むぜ」
マークスマンライフルを構えるカレンに微笑みながら言うと、ギュンターがPKPの再装填を終えたのを確認してからエミリアの隣に立つ。
接近戦が得意なエミリアは、もう既に腰の鞘からペレット・サーベルを引き抜いていた。
アンチマテリアルライフルを折り畳んで背中に背負うと、俺も腰の鞘から93式対物刀とペレット・ダガーを引き抜き、オタクへと向かって走り始めた。
エミリアも片手で頭上の迷彩模様の軍帽を押さえながら、サーベルを構えて走り始める。
俺がかぶっている返り血だらけの迷彩模様のフードの上で、レベル上げをしていた時に仕留めたハーピーの真紅の羽根が揺れた。大量のハーピーたちの死体の中から持ってきた戦利品だ。
返り血だらけの制服を身に纏って走りながら、俺はラトーニウス王国の森の中で戦ったフランシスカの事を思い出していた。確か、彼女も返り血だらけの状態で俺に襲い掛かってきたな。
「雑魚がぁッ!」
「だからうるせえ」
オタクが叫びながら大剣を振り下ろしてくる。俺はその一撃を回避すると、左手で逆手に持ったダガーをオタクの顔面に叩き付けるために振り払おうとして―――途中でダガーを持った左手を止めた。フェイントだ。
「!」
ダガーをガードするためにオタクがスピードのステータスを利用して、すさまじいスピードで大剣を持ち上げる。でも、今の攻撃はフェイントだ。ガードしようとしても意味はない。
大剣をガードのために持ち上げたせいで、脂肪だらけの腹ががら空きになる。エミリアは左手で軍帽を押さえながらニヤリと笑うと、漆黒の刀身をオタクの腹へと叩き付けた。
「うぐっ!?」
やっぱり、彼女のサーベルでもこのブタ野郎を切り裂くことは出来なかったか。でも、全然効いてないわけではないようだ。
俺は93式対物刀を思い切りブタ野郎の顔面に叩き付けると、そのまま横へと回り込み、ペレット・ダガーのグリップの後ろにある小型の散弾の銃口をブタ野郎の耳へと押し付けた。
エミリアも反対側に回り込み、俺と同時にペレット・サーベルのグリップの後ろにある銃口を反対側の耳に押し当てている。
通常の小型の散弾を叩き込んでも、あまりダメージは与えられない筈だ。だから、このサーベルとダガーに装填されているのは通常の散弾ではない。
炎の散弾をぶっ放す、ドラゴンブレス弾だ!
「エミリア!」
「ああ!」
ブタ野郎が大剣を振り回す前に、俺とエミリアは銃口を耳に押し当てたまま同時にトリガーを引いた。
「ギャアアアアアアアッ!!」
炎の散弾がすべてブタ野郎の耳に命中し、銃声が鼓膜に叩き付けられる。オタクは絶叫しながら大剣を放り出し、ドラゴンブレス弾に被弾して燃え上がった両耳を押さえながらのたうち回り始めた。
「2人とも!」
「おうッ!」
「行くわよッ!」
俺とエミリアが接近戦をやっている間に、カレンとギュンターは攻撃準備を終えていた。
ギュンターはPKPの銃身の下に装着されたロケットランチャーの照準をブタへと合わせ、カレンはライフルグレネードを装着したM14EMRのスコープを覗き込んでいる。
俺とエミリアはオタクから離れると、手に持っていた剣を鞘に戻し、足元に転がっていた2人分の燃料タンクを持ち上げ、両耳を燃やされてのたうち回るオタクへと向かって投げつけた。
俺たちが投げつけたのは、最初に火炎放射器で攻撃した際に背中に背負っていた、火炎放射器の燃料タンクだ。タンクの中にはまだ燃料が残っている。
「撃てぇッ!」
「燃え尽きろ、クソ野郎ッ!!」
ギュンターが叫びながら、カレンと同時にロケットランチャーのトリガーを引いた。
ロケットランチャーから放たれた2発のロケット弾と、マークスマンライフルの銃口に装着されたライフルグレネードが同時に放たれた。カレンとギュンターが放った攻撃は、絶叫しながらのたうち回るオタクの体を次々に殴りつけると、脂肪だらけの腹にめり込みながら爆発を起こした。
もちろん、被弾したオタクの足元にはまだ燃料の残った2人分の火炎放射器の燃料タンクが転がったままだ。ライフルグレネードと2発のロケット弾の爆風はオタクの体だけでなくその燃料タンクも飲み込んで、燃え上がる館の庭に巨大な爆炎を生み出した。
庭に植えられていた花壇の植物たちが次々に燃え上がり、館の庭を火の粉が舞う。
「考えが浅いんだよ。ブタ野郎が」
俺は呟きながら、ブタ野郎を飲み込んだ巨大な爆炎を睨みつけた。




