奴隷が傭兵ギルドと共に機関銃で報復するとこうなる
端末を操作してMP443とSV-98の装備を解除し、仲間たちの装備をいつもの装備に切り替えた俺は、迷彩模様のフードをかぶってから地下室の扉を開き、1階へと続く階段を仲間たちと共に駆け上がり始めた。
既に奴隷たちは救出した。ギュンターの妹のミラも、階段を駆け上がるギュンターの後ろについてきている。
もう敵に見つからないようにする必要はなくなっていた。あとは端末で装備したいつもの武器で、館を警備している兵士たちとリーダーを皆殺しにするだけだ。
俺は腰の後ろに下げていたサムホールストックのAN-94を取り出すと、銃身の下に搭載されているグレネードランチャーに40mmグレネード弾が装填されているか確認してから、銃身の右側に折り畳まれている漆黒のスパイク型銃剣を展開した。
他に装備した武器は、愛用しているレイジングブルとOSV-96で、腰にはペレット・ダガーと93式対物刀を下げている。それと、迷彩模様のブーツには、ブーツナイフも装備してある。
俺の後ろを走るエミリアが持っているのは、銃身の下にM26MASSのように小型化されたロシア製ショットガンのサイガ12を装備したアサルトライフルのAEK-971だ。銃身の右側に折り畳まれて装備されているナイフ形銃剣は、もう既に展開されていた。俺は基本的にフルオート射撃よりも2点バースト射撃を多用する戦い方なんだけど、エミリアは接近戦を得意としているため、基本的にいつも近距離でフルオート射撃をぶっ放すことが多い。だから、至近距離でショットガンを連続でぶっ放せるように、小型化されたサイガ12を彼女のライフルに装備しておいたんだ。
階段を上り切って廊下へと飛び出た俺は、左右に銃口を向けて敵兵がいないか確認する。真っ赤なカーペットが敷かれた廊下の上には、潜入する際に俺がヘッドショットで仕留めた敵兵の死体が転がっているだけで、他に敵兵は見当たらない。
でも、俺たちが潜入してきた時より騒がしいようだった。おそらくさっき逃げだした奴隷たちが見つかったのか、俺たちが片付けた敵兵の死体が見つかったんだろう。
俺は敵兵がいないことを確認すると、まず庭へと向かうことにした。あそこにはまだ警備していた敵兵が残っていた筈だし、彼らを攻撃すれば俺たちに対処するために屋敷の中から他の警備の兵士も出てくるだろう。わざわざ屋敷の中で敵兵を探して始末する必要はない。
もう既に、俺たちの弱みはなくなっているんだ。
廊下を走って玄関のドアの前へと到着した俺は、後をついて来る仲間たちの方を振り向いてから頷いた。
「カレン、頼む」
「了解」
彼女が装備しているM14EMRからは、既にサプレッサーは外されている。彼女はそのマークスマンライフルを背中に背負うと、俺が端末で用意したクレイモア地雷を2つ腰から取り出し、後ろにある階段のところに仕掛け始める。
「いいわよ」
「よし、戦闘準備」
ドアの向こうから警備している兵士たちの声が聞こえてくる。あいつらはまだ、庭にいるようだ。
仲間たちが武器を構えたのを確認すると、俺は数歩後ろに下がってドアから距離を取り―――左手をグレネードランチャーのトリガーへと伸ばし、トリガーを引いた。
AN-94の銃身の下に装着されたグレネードランチャーから放たれた40mmグレネード弾が、黄金の装飾がついた豪華なドアのドアノブへと突き刺さり、ドアノブを粉々に吹き飛ばす。立派な白い壁から木製のドアが外れ、玄関の外側へと倒れていくのを確認すると、俺はそのままアサルトライフルを構え、仲間たちと共に木片の舞う中へと突っ込んだ。
玄関の外に飛び出てから、すぐに後をついて来る仲間たちの邪魔にならないように右に移動し、俺はアサルトライフルのドットサイトを覗き込んだ。庭には、やっぱり生き残りの警備の兵士たちがいた。逃げ出した奴隷たちを追撃するために門の外へと向かう途中だったんだろう。俺がドアを吹き飛ばす直前まで、彼らは俺たちに背を向けていたようだった。
「―――撃ちまくれッ!」
吹っ飛ばされたドアの向こう側から外に出てきて、銃を構える仲間たち。俺は驚く敵兵に照準を合わせながら叫んだ。
いつもは2点バースト射撃を多用するんだけど―――今日は俺もフルオート射撃に切り替えていた。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!」
俺の号令の直後に、叫びながら無数の弾丸を驚く敵兵たちに叩き付けたのは、やっぱり最愛の妹の喉を潰されて怒り狂っているギュンターだった。俺たちの屋敷の地下で訓練をしていた時に使用していた汎用機関銃のPKPを2丁も構え、無数の7.62mm弾を庭で慌てて戦闘態勢に入る敵兵たちに容赦なくぶっ放す。
凄まじい銃声の中でも、ギュンターは絶叫を続けながらトリガーを引き続けていた。次々にベルトが彼の持つ銃の中に吸い込まれて行き、空の薬莢が排出されていく。
敵兵たちは「侵入者だ!」と叫び、ギュンターが機関銃を2丁も乱射しているにもかかわらず、腰からロングソードを引き抜いて突っ込んでくる。
俺たちはさっきまで潜入していたから、敵兵は俺たちがモリガンだという事を知らないんだ。だから銃を向けられても突っ込んでくるんだ。
「ギャッ!?」
「ガァッ!」
「ぐあぁぁぁっ・・・・・・!」
敵兵は金属製の防具を身に着けていたけど、激昂しているギュンターが凄まじい勢いで放ち続ける7.62mm弾の群れを防ぐことはできなかった。剣や矢を弾き飛ばす事が出来る防具でも、銃弾を防ぐことはできないんだ。
次々に弾丸が金属製の防具ごと敵兵の人体を食い破り、湿った風が血の臭いで汚れていく。その弾丸から隠れようと物影に向かう敵兵を機関銃の弾丸で粉々にしたギュンターは、PKPのグリップを素早く離し、銃身の下に搭載されているロケットランチャーのグリップを握ると、照準を敵兵が隠れた木の幹へと向けてトリガーを引いた。
「ギャアアアアアアアアアッ!!」
ロケット弾が木の幹に突き刺さり、爆風が太い木の幹を簡単に叩き割った。舞い散った木片を一瞬で焼き払った爆炎と爆風が、その木の陰に隠れていた敵兵に襲い掛かり、彼らを木端微塵に粉砕していく。
「くそ、再装填ッ!」
「了解ッ!」
もう100発分も弾丸を撃ち尽くしてしまったらしい。次のベルトを準備するギュンターを援護するため、先ほどまでギュンターに援護射撃をしていた俺は、フルオート射撃のまま銃口を今の乱射を生き残った敵兵へと向けた。
「撃てッ!」
捕虜を取るつもりはない。敵兵は皆殺しだ。
俺はドットサイトの向こう側に見えた敵兵を睨みつけながら、その敵兵の頭にフルオート射撃で5.45mm弾を叩き込んだ。
潜入する時も敵兵を何人も片付けたから、そろそろ庭に残っている敵兵も全滅する頃だろう。俺はギュンターに再装填が終わったら屋敷の中から来る敵兵を狙ってくれと伝えようとしたんだけど、その時玄関の奥にあった階段から、カレンが仕掛けたクレイモア地雷が爆発する音と、数人の敵兵の断末魔が聞こえてきた。
どうやら敵の増援らしい。
「屋敷の中だ! 庭は任せろ!」
「了解!」
『了解ですっ!』
「任せなさい!」
「了解だ!」
おそらく、庭に残った敵兵は2人か3人だろう。俺のマガジンの中にはまだ10発くらい弾丸が残っている筈だ。
フルオート射撃から2点バースト射撃に切り替えた俺は、生き残った敵兵を始末するために庭へと向かって走り出した。
カレンが仕掛けたクレイモア地雷は、敵兵を5人も巻き込んだらしい。仕掛けろって指示したのは力也なんだがな。
もうPKPの再装填は済んでいた。銃身の下に搭載されているRPG-7にも、次のロケット弾を装着してある。
「敵だッ!」
「くそ、何だよあの武器は! 見たことないぞ!?」
「モリガンだ! ネイリンゲンの傭兵ギルドだ! 気をつけろ!」
「うるせぇッ! クソ野郎がぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
よくも俺の最愛の妹をさらって、喉を潰してくれたな! お前らのせいでミラは、もう二度と声を出す事が出来なくなっちまったんだぞ!?
間違いなく、ミラの目の前でこんなにキレたのは初めてだ。両手に持ったPKPの銃口を階段の上から駆け下りてくる敵兵に向けながらちらりとフィオナちゃんが庇っているミラの顔を見た俺は、再び敵兵を睨みつけ、奴らをズタズタに引き裂いてやるためにトリガーを引いた。
庭で警備していた敵兵は木の陰や花壇の陰に隠れる事が出来たが、階段から下りてくる奴らの周りには隠れられる場所がない。俺の弾丸から逃れるには、さっさと階段を下り切って下にある彫刻の陰に隠れるか、階段を上へと引き返すしかないんだ。
だが、間違いなく奴らが隠れたり逃げたりするよりも、俺の弾丸が敵兵を引き裂く方が先だ。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ミラの喉を潰しただけじゃない。俺の仲間たちは、お前らに何人も殺されてるんだ! 鰐や魔物の肉を取りに行くためにボロボロの剣を持たされて湿地帯に放り込まれた奴や、過労死しちまった仲間だっているんだ!
全員殺してやる! 命乞いしてきても絶対に許さねえ!!
俺の弾丸で、豪華な装飾がついた階段の手すりが穴だらけになっていく。真っ白な壁も敵兵の血で真っ赤に汚れ、装飾の破片や木片が突き刺さっている。
敵兵たちは引き返そうと今度は階段を上り始めるが、階段を昇れば今度はエミリアのアサルトライフルのフルオート射撃と、カレンのマークスマンライフルの正確な狙撃の餌食になる。
つまり、あいつらはもう俺らに撃ち殺されるしかないってわけだ。
「弾切れか・・・・・・!」
せっかく再装填したのに、もう100発撃ち尽くしてしまったらしい。俺はまたグリップから両手を離すと、今度はロケットランチャーのグリップを掴み、俺の連射が止まったせいで動き出した敵兵へとロケット弾の照準を向け―――2発のロケット弾をぶっ放した。
ロケット弾が、館の豪華な階段を手すりごと木端微塵に吹っ飛ばす。爆音が兵士たちの絶叫と断末魔を飲み込み、階段の破片と肉片が燃えながら飛び散っていく。
断末魔を飲み込んだ轟音が、残響を引き連れて屋敷の中へと響き渡っていった。
「・・・・・・全滅したようだな」
「ああ。・・・・・・だが、奴らのリーダーは?」
こいつらのリーダーは手強いとピエールが言っていたな。まさか、今吹っ飛ばした中にリーダーもいたのか?
「―――ひひひっ。まさかこいつらを全滅させるなんてねぇ」
「!?」
「誰だ!?」
PKPを再装填しておこうと思ったその時だった。
階段の上から、気色悪い声が聞こえて来たんだ。
庭で生き残っていた兵士は2人だった。木の陰と花壇の陰に隠れていたそいつらに5.45mm弾をお見舞いして始末した俺は、アサルトライフルを担ぎながら館の玄関の方へと向かう。
もう、玄関の方から聞こえていた銃声は止まっていた。最後に聞こえてきた爆音は、ギュンターがロケットランチャーを館の中に向けてぶっ放した音だろう。
でも、この兵士たちのリーダーは? ギュンターたちが倒しちまったのか?
そう思いながら仲間たちの元へと向かう俺。玄関のところで銃を持っている仲間たちの向こうでは、木端微塵に破壊された階段と兵士たちの肉片が転がっているのが見えたけど―――どうやらまだ終わっていないようだった。
「まさか、僕の兵士を全滅させるなんてね。ひひひっ」
粉々に吹っ飛ばされた階段の踊り場の上に、人影が見えた。
貴族が身に着けているような装飾だらけの派手な服を身に纏った、太った男だ。そいつは気色の悪い笑い方をしながら、踊り場の上から俺たちを見下ろしている。
何だあいつ? 貴族みたいな服を着ている以外は、まるで俺が転生する前の世界にいたオタクみたいなやつだな。まさか、こいつがリーダーなのか?
ピエールは、こんな奴が手強いって言ってたのか!?
「何だお前」
「この湿地帯の領主さ」
「領主ですって?」
そいつにマークスマンライフルを向けていたカレンが、そのオタクみたいな奴を鼻で笑った。
「残念ね。この湿地帯も、私のお父様の領地なの。もう少ししたら私が引き継ぐことになるけどね」
「へぇ。ということは、君は領主の娘なんだ? ひひひっ」
「き、キモい・・・・・・」
俺はAN-94のマガジンを交換してからそいつに銃口を向ける。こいつが兵士たちのリーダーならば、こいつも倒さなければならない。
「覚悟しろ。今からお前もぶっ殺す」
「ぶっ殺す? ひひっ。・・・・・・・・・やってみろよぉ!」
あのオタクみたいな奴は、武器を持っていない。どうやって戦うつもりだ? 魔術でも使うつもりか? それとも格闘術か?
その時、そのオタクみたいな奴は服の内ポケットへと手を突っ込んだ。内ポケットの中に武器を隠していたのかと思ってたんだけど―――そいつが取り出したのは、武器ではなかった。
なんと、俺の持ってる端末と同じ端末だったんだ!
「なっ!? お前、その端末は―――!?」
「力也の端末・・・・・・!?」
「ひひひっ! 何だ、お前もこの端末を持ってたのか!」
まさか、こいつも俺と同じ転生者だというのか!?
端末を取り出したそいつは、端末をタッチして巨大な蒼い剣を装備すると、その大剣を肩に担ぎながらニヤリと笑う。
俺はそのオタクみたいな奴に銃口を向けながら、ドットサイトの向こうを睨みつけた。




