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魔王VS吸血鬼の王 

ついにレリエル戦スタートです。


 ザウンバルク平原は、オルトバルカ王国の北東部に広がる草原だ。かつてはダンジョンだった場所なんだが、そこに魔物が住み着く前は、レリエルが世界を支配していた時代に騎士団の生き残りが吸血鬼たちへと最後の決戦を挑み、玉砕した古戦場でもある。


 そんな伝説があるせいなのか、夜明けに訪れたザウンバルク平原を覆う草原が、まるでこの地で玉砕していった騎士たちの鮮血で今だに紅く染まっているかのように見えてしまう。解放感を感じる事ができないほど禍々しい雰囲気を放つ場所だ。


 その禍々しさを更に底上げしているのは、草原の真っ只中に鎮座する血のように紅い魔法陣だろう。明らかに普通の草原には存在することのない魔法陣。半径4mほどの魔法陣で、複雑な記号や模様を巨大な円が囲んでいるのは一般的な魔法陣と同じだ。しかし、俺はあまり魔術には詳しくないんだが、その魔法陣に描かれている記号や模様はフィオナや他の魔術師が魔術を使用する際に形成する魔法陣とは違うような気がする。どうやら、人間が使っている魔術とは方式が異なる魔術のようだ。


 人間の魔術と吸血鬼の魔術の方式が異なるのは当たり前だろう。しかも、おそらくあの魔法陣を形成した張本人は、大昔から生き続けている伝説の吸血鬼なんだ。


 バイクから下りた俺は、ガルゴニスがバイクから下りたのを確認してから端末を取り出し、バイクを装備から解除した。ホルスターの中からプファイファー・ツェリスカを引き抜き、銃口を目の前の地面に描かれている魔法陣に向けながらゆっくりと近付いていく。


「――――安心しろ。これは罠ではないぞ」


「分かるのか?」


「私は最古の竜じゃぞ? 廃れた魔術もすべて知っておるわ。・・・・・・これは別の次元へと移動するための魔法陣じゃな。大昔のダークエルフが編み出し、今から200年前に廃れた大規模魔術じゃ」


 武器も構えずに魔法陣に近寄ったガルゴニスは、まだ警戒を続ける俺を見上げながら説明した。さすがエンシェントドラゴンだ。人間の知らない知識を数多く持っている。


 魔界というのはこの世界のどこかにある場所ではなく、異次元空間の事だったんだろうか? もしレリエルが今までそこに潜んでいたというのならば、今まで世界中で吸血鬼の目撃情報が確認されなかったことも納得できる。


「・・・・・・帰って来れるんだろうな?」


「魔法陣の記号は覚えた。もし帰れなくなっても、私が同じ魔術を使って家まで帰してやるわい」


「ありがと、ガルちゃん」


「ふん」


 構えていたリボルバーを下ろし、俺も魔法陣へと近付いていく。


 ゆっくりと紅い魔法陣に片足を近づけてみると――――魔法陣を踏みつけた片足が、まるでプールに片足を突っ込んだかのように沈み始めた。反射的に魔法陣から足を引き抜こうとしたんだが、レリエルが待っているのはこの先だ。どの道この魔法陣から魔界へと入らなければならない。


 息を呑んでから左足を持ち上げ、俺は魔法陣の中へと沈んでいった。


 紅い光が俺の身体を包み込む。まるであの禍々しかった草原が沸騰して吹き上がったかのようだ。荒々しい光がいくつも俺の頭上へと押し上げられていく。


 いつまでこの紅い光が上へと押し上げられていく光景の中で、本当に俺は妻たちと子供たちのいる世界へと帰る事ができるのかと不安になり始めると同時に、俺の両足が硬い何かを踏みつけた。


 まるでレンガや石畳を踏みつけたような音だ。気が付くとあの紅い光は全て消えていて、俺の周囲には真っ白なレンガ造りの建物が連なる街並みが広がっていた。


 空を見上げてみると、街の上を血のように紅い空が覆っている。浮かんでいる雲は闇のように黒い。頭上の空は、俺の知っている空の色と反転してしまっている。


 周囲に建つ建築物は、王都やヴリシア帝国の帝都の建物と比べると古いような感じがした。俺が転生してきたあの異世界の建物は中世のヨーロッパのような建物なんだが、この街の建物はそれよりも古いような感じがする。まるで古代ギリシアの都市に迷い込んだかのようだ。


 街並みを眺めていると、俺の隣の空間にまるで石を投げつけられた窓ガラスのような亀裂が生まれ、その亀裂の中から俺にそっくりな顔立ちの赤毛の幼女が姿を現す。ガルちゃんも無事にここへとやって来たらしい。


「ここが魔界か?」


「――――そうよ」


 聞こえてきたのは、幼女の姿になっているガルちゃんの幼い声ではなく、彼女よりも大人びた少女の声だった。


「――――アリア」


「約束通りに来たのね。・・・・・・1人じゃないみたいだけど」


「安心しろ。決闘に参加するのは俺だけだ」


「へえ。じゃあその幼女は何なのかしら?」


 腰に片手を当て、もう片方の手で日傘を差しながら言うアリア。ガルちゃんは決闘を見届けに来ただけだと彼女に言おうとしていると、それよりも先に俺の隣から幼い声が聞こえてきた。


 その声が纏うのはいつもの可愛らしい雰囲気ではない。幼女としてのガルゴニスではなく、かつてこの世界に初めて生まれ、変異し、あらゆるドラゴンの始祖として君臨した最古の竜の威圧感だ。


「―――――ほう? 小僧レリエルの眷族は、幼女とドラゴンの見分けもつかんのか?」


「何ですって・・・・・・?」


「私はこいつの決闘を見届けに来ただけじゃ。横槍を入れる気は毛頭無いわ。・・・・・・ほれ、小娘。さっさと小僧レリエルの所へと案内せい」


 よくあの恐ろしい吸血鬼の王を小僧と呼べるもんだ。確かにガルちゃんはあいつよりも大昔からずっと生きているから、ガルちゃんからすればレリエルは自分よりも遥かに年下のガキ大将のような存在なんだろう。


 自分が忠誠を誓っている主君を小僧呼ばわりされたことにアリアは腹を立てているようだったが、彼女は目を細めながら「・・・・・・レリエル様がお待ちよ」と言うと、日傘をさしたまま踵を返して歩き始める。


 俺は隣で胸を張るガルちゃんをちらりと見下ろしてから、歩き始めたアリアの後について行った。


 魔界の街の中には、当然ながら人は誰も見当たらなかった。露店には品物が並んでいるんだが店主や買い物客の姿は見当たらないし、道端には無人の馬車が放置されているだけだ。馬車を引く馬も見当たらないし、御者もいない。


 まるで大都市が丸ごとゴーストタウンに成り果ててしまったかのようだ。これはレリエルの眷族が住む街なんだろうか? もし彼の眷族の街ならば、建物の中から吸血鬼や怪物たちが顔を出してもおかしくはない。


 いつでもホルスターからリボルバーを引き抜いて早撃ちをお見舞いできるように、ホルスターに片手を近づけながら歩き続ける。


 大通りを通り過ぎ、広場へと出る。広場の向こうは坂になっていて、その坂の左右には真っ白な石の柱が何本も等間隔に並んでいた。その坂を登り切った先に見えるのは、巨大な宮殿への入り口だった。


 入口へと続く坂には、剣を手にして甲冑を身に纏った騎士たちが整列しているのが見える。兜をかぶっているせいで顔は全く見えないが、明らかにあの騎士たちは人間の騎士団ではない。レリエルや眷族のための大都市に人間がいるとするならば、それは彼らの食糧か、奴隷のどちらかだけだ。そんな扱いを受ける人間が、魔界で甲冑に身を包んで宮殿を警備する筈がない。


 その騎士たちの列の奥から、黒いコートに身を包んだ黒髪の男がゆっくりと歩いて来るのが見えた。右手に漆黒の槍を持ちながら、左右に並ぶ騎士たちの間を通って坂を下りて来る。


「レリエル・・・・・・」


 かつてこの世界を支配した、伝説の吸血鬼。数多くのお伽噺や小説の題材になるほど有名な人類の天敵と、今から俺は決闘するのだ。


 アリアは日傘を畳んでレリエルに道を譲ってから跪くと、ブラック・ファングを持ちながら歩いてきた彼に「魔王をお連れしました、レリエル様」と報告する。


 従者の少年と共に歩いてきたレリエルは頷くと、俺の顔を見つめた。


 この男と出会うのは10年ぶりだ。ネイリンゲンでジョシュアを迎え撃った時は加勢してくれたが、今の彼は俺の敵だ。この男を打ち倒さなければ、俺は家族の元へと帰る事ができない。


「・・・・・・久しぶりだな。会いたかったぞ、魔王(力也)


「相変わらず見た目が変わらねえな。羨ましいもんだ」


「ふん」


 楽しそうに笑ったレリエルは、次に俺の隣に立っている幼女の姿をしたガルゴニスを見下ろした。アリアはガルちゃんの正体に気付いていないようだったが、この男ならばこの幼女が最古の竜だと気付いていることだろう。


 すると、レリエルは今しがたアリアが跪いたように、いきなり俺の隣にいるガルちゃんに向かって跪いた。プライドが高いと言われる吸血鬼の王が、たった1人の幼女に跪くという光景を目の当たりにした彼の眷族たちは、目を見開きながら自分の主君とガルちゃんを凝視しながら騒ぎ始める。


 確かに、ありえない光景だ。世界を支配した吸血鬼の王が、幼女に向かって跪いているのだから。


「――――封印から解き放たれたようで何よりだ。偉大なる最古の竜ガルゴニスよ」


「なっ・・・・・・!?」


「が、ガルゴニスだって・・・・・・!?」


 ガルゴニスという名を聞いた眷族たちが更に騒ぎ始める。彼の傍らに跪いていたアリアも顔を上げてガルゴニスを凝視し、目を見開いている。


 吸血鬼たちもガルゴニスという名前は知っているのだ。この世界で一番最初に誕生したあらゆるドラゴンの始祖。アリアたちがガルゴニスだと気付かなかったのは、俺たちとの戦いでガルちゃんの体内の魔力が大量に失われているからなんだろう。


 あのレリエル・クロフォードが跪くような偉大な存在を、俺のエリスは襲おうとしていたのか。あの時は必死に止めていたが、彼女はかなり恐れ多い事をしてたんだな・・・・・・。


「私は貴様らの決闘を見守りに来ただけじゃ。横槍を入れるつもりはない。・・・・・・安心して戦うが良い」


「おお、あのガルゴニスが見守ってくれるとは。なんと誉れ高い」


 静かに再び立ち上がるレリエル。彼はまだ跪き続けているアリアの方をちらりと見てから槍を構える。


 そろそろ決闘を始めるということか。跪いていたアリアが立ち上がり、宮殿の方にいる騎士たちの列へと向かって下がっていく。


「・・・・・・勝てよ、リキヤ」


「おう、任せろ」


 隣にいるガルちゃんにそう言いながら笑った俺は、彼女が建物の方へと歩いて行ったのを確認してから、ホルスターから引き抜いた2丁のプファイファー・ツェリスカをくるくると回してからグリップを握り、巨大なリボルバーの銃口をレリエルへと向ける。


 俺を睨みつけてくるレリエル。俺もリボルバーを構えたまま、レリエルと睨み合う。


 いつでもトリガーを引けるようにしたままレリエルを睨みつけていると、槍を構えているレリエルが、一瞬だけ姿勢を低くしたように見えた。


 先制攻撃を仕掛けるつもりか――――。


 俺も目を一瞬だけ細めると、レリエルが姿勢を低くして走り出す前に、彼に向けていたリボルバーのトリガーを引いていた。


 猛烈な2つの轟音が、魔界へと響き渡る。レリエルが先制攻撃を繰り出す前に逆に弾丸を叩き込むつもりでぶっ放したつもりだったんだが、リボルバーの銃口から飛び出していった2発の.600ニトロエクスプレス弾は、レリエルの肉体を食い破る前に漆黒の槍の柄に阻まれ、壁に当たって跳弾するような音を立てながらとこかへと弾き飛ばされてしまう。


 レリエルは俺が飛び道具を多用する事を知っている。だから俺が銃を向けた瞬間に、俺の得物は剣などの近距離武器ではなく飛び道具だと察していたんだろう。だから今の射撃を見切り、恐ろしい速さで弾き飛ばしたんだ。


 間違いない。レリエルは、10年前よりも強くなっている。


 にやりと笑うレリエルが突き出して来た槍を上半身を傾けて躱し、その隙に親指で撃鉄ハンマーを元の位置へと引き戻す。すぐにもう一度ぶっ放してやろうかと思ったが、もし弾切れを起こしたら端末を操作して別の武器に切り替えなければならない。その隙を作らないためにあえて様々な武器を身に着けた状態で戦いを挑んでいるんだが、がむしゃらにトリガーを引いていればすぐに銀の弾丸は底をつくだろう。


 だから、正確に叩き込まなければならない。


 銀の弾丸を使う銃は何度もアップグレードしているため、帝都での戦いの時よりもレリエルにダメージを与えることは出来るだろう。だが、レリエルは弱点である銀の弾丸を叩いこまれてもすぐに再生する怪物だ。複数の弱点で同時に攻撃するしかない。


 もう一度トリガーを引くことを断念している間に槍を引き戻したレリエルは、もう一度俺に向かって得物ブラック・ファングを突き出してくる。彼の漆黒の槍をもう一度辛うじて躱し、左手のリボルバーをレリエルに向けて発砲。槍を引き戻しながら弾丸を弾いている隙にもう1発ぶっ放し、撃鉄ハンマーを元の位置へと戻す。


 弾丸を弾いたばかりのレリエルの身体がぐらりと揺れた。彼の左足の膝の上には、やけに大きな風穴が開いている。4発目の.600ニトロエクスプレス弾が、レリエルに弾かれた3発の弾丸の仇を取ったんだ。


 石畳を肉片と鮮血で真っ赤に汚したレリエルがにやりと笑う。先に傷をつけたのは俺だが、弱点の銀で風穴を開けたというのに、その傷口はすぐに塞がってしまう。ズタズタにされた筋肉たちが伸び始め、他の筋肉繊維と結びつく。それと同時に砕けた足の骨も再生し、再び生成された皮膚へと呑み込まれていく。


「やるではないか!」


「くっ!」


 拙いな。接近戦になるぞ。


 再生を終えたばかりのレリエルが、今度は槍を振り回してくる。咄嗟に左足の義足からブレードを展開して槍の先端部を蹴り返した俺は、足を引き戻すと同時に後ろへとジャンプしつつ、リボルバーをホルスターへと戻して腰に下げていた仕込み杖を引き抜く。


 柄を捻って分離させ、スイッチを押して銀の刀身を展開した俺は、レリエルが続けざまに突き出してきた槍を右手の剣で右へと受け流す。


 俺が武器を切り替えている間に串刺しにするつもりだったレリエルは、慌てて槍を引き戻そうとするが、レリエルは槍を引き戻してから攻撃するか回避しなければならない。それに対し、攻撃を受け流したばかりの俺はすぐに攻撃できる。


 いくらレリエル・クロフォードでも、次の一撃は喰らうしかないようだった。


「はぁっ!!」


 左手の剣を突き出し、銀の刀身をレリエルの胸の左側から突き入れる。胸筋をあっさりと貫通した銀の刀身はレリエルの胸骨を木端微塵に粉砕し、その次に彼の心臓を蹂躙した。


 吸血鬼の弱点の1つである銀を心臓に叩き込まれたレリエルが、俺の耳元で呻き声を上げる。


 しかし、吸血鬼の王はこの程度では死なない。普通の吸血鬼ならば既に死んでいる筈だが、レリエルは心臓を銀の刀身で貫かれても再生してしまう怪物だ。


 レリエルの鮮血が噴き出す中で、槍の柄を握っていた彼の手がぴくりと動く。この怪物には恐ろしい再生能力があるが、俺はサラマンダーの血を体内に持つキメラとはいえ元々は人間だ。ドラゴンの外殻を生成して硬化することは出来るが、さすがに再生は出来ない。


 だから、致命傷を負うことは許されなかった。


 彼の手が動いた瞬間、俺はすぐにレリエルの心臓を貫いていた剣を引き抜いていた。血で真っ赤になった刀身を振るい、レリエルが槍の先端部を向けて来るよりも先に右上から左下へと振り払う。今度は右手の剣を同じく右上から左下へと振り払い、レリエルの右腕を断ち切ると、そのまま反時計回りに回転しながら左足のブレードを展開し、ブレードを出した状態の左足で再生している最中のレリエルの心臓を思い切り蹴りつけた。


「ぐっ・・・・・・!!」

 

「レリエル様ッ!!」


 この怪物は、この程度では死なない。


 俺に蹴り飛ばされたレリエルが、傷口から噴き出した鮮血を石畳にぶちまけながら広場の反対側にある宮殿の方へと吹っ飛んでいく。宮殿の真っ白な壁を自分の血で汚し、大きな穴を開けて宮殿の中へと放り込まれたレリエル。俺は剣に付着したレリエルの血を振り払うと、刀身を収納してから杖を連結させ、仕込み杖を腰に下げてからアサルトライフルを腰の後ろから取り出す。


 ブルパップ式のSaritch308ARを構えた俺は、もう一度ちらりとガルゴニスの方を見てからにやりと笑うと、俺を睨みつけてくるレリエルの眷族たちを無視しながら、レリエルが開けた壁の穴へと向かって走り出した。




 


 



 あの男は10年前よりも腕を上げている。


 失ったばかりの右腕を再生させながら笑った私は、心臓の再生が終わったのを確認してから静かに立ち上がった。


 私が放り込まれたのは宮殿の書斎らしい。眷族を集めながら各地で購入した書物が並ぶ本棚は床に倒れ、本は瓦礫や壁の破片と共に床に転がっている。


 力也の武器は殆ど飛び道具ばかりで、接近戦は不慣れだろうと思っていたのだが、逆に奴の仕込み杖で返り討ちにされてしまった。しかも、奴は義足にブレードを仕込んでいるようだ。


 接近戦が苦手というわけではないらしい。


「ふむ・・・・・・」


 ―――――本当に、面白い男だ。


 だからこそ私は、誰にも邪魔されないこの魔界に彼を招待し、一対一で戦おうとしたのだ。彼は決闘を引き受けてくれたし、なんとあのガルゴニスもこの魔界での決闘を見守ってくれている。


 この戦いは最高の戦いになるに違いない!


 彼に向かって槍を突き出し、受け流された得物を再び叩き込もうとする度にぞくぞくしてしまう。こんなに刺激的な戦いは、昔の大天使との戦い以来だ。


 素晴らしい・・・・・・! いいぞ、速河力也!


 もっとこの戦いを楽しもう! この戦いを邪魔する者は誰もいないのだから!


「・・・・・・」


 ニヤニヤと笑いながら、私は書斎を後にした。書斎は戦闘のせいで滅茶苦茶にされてしまったが、ここに蓄えられていた書物の中にはこの戦いのように私を楽しませてくれる書物は存在しないだろう。


 再び外で戦うべきだろうか? それとも、このまま宮殿の中で戦うべきだろうか?


「はははははは・・・・・・・!」


 宮殿の中で戦う事にしよう。私の宮殿の中に彼を誘い込み、ここで戦いを楽しむのだ。飽きたのならば再び外に出て、そこで戦いを堪能すればいい。


 たまらない。


 この戦いは最高だ・・・・・・!


「いいぞ・・・・・・かかって来い、速河力也・・・・・・!!」


 私は笑いながら、宮殿の廊下を歩き続けた。



 

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