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転生者と決闘状


「ごちそうさまでした」


「ごちそうさまっ!」


 夕飯のハンバーグを食べ終えた子供たちが、元気にそう言いながらテーブルの椅子から立ち上がる。テーブルの上に置いてあるデミグラスソースまみれの皿を持ち上げて先にキッチンの方へと向かったのはタクヤだ。私に顔立ちがそっくりな、まるで少女のような彼の後ろを、自分の使った食器を持つラウラが笑いながら追いかけていく。


 この2人を見ていると、幼少期の私と姉さんを思い出す。あの忌々しい魔剣のせいで一時的に姉さんは冷たくなってしまったが、今でも姉さんは私の姉だし、同じ夫を愛した大切な家族だ。


 小さい頃の私は両親からも虐められていたから、私の遊び相手は姉さんだけだったからな・・・・・・。でも、この子たちは当然ながら虐めなど受けていないし、近所の子供たちとも仲良く遊んでいる。


「なんだか、小さい頃の私たちみたいね」


「はははっ、そうだな。姉さんは小さい頃からしっかり者だったから、タクヤは姉さんに似たのかな?」


「何を言ってるの。今ではエミリアちゃんの方がしっかり者でしょ?」


「そ、そうか?」


「そうよ。それに、タクヤはエミリアちゃんにそっくりじゃない」


 近所の人にもよくタクヤが私にそっくりだと言われる。嬉しい事なのだが、初対面の人には必ずタクヤは女の子だと間違われているのだ。


 顔立ちは私にそっくりだし、男の子なのに髪型も私と同じポニーテールにしている。幼さ以外での違いは体格と、瞳の色が違うことくらいだろうか。


 前に髪を切って短髪にしていた時もあったんだが、髪を切って私服を身に着けていてもタクヤは男の子というよりは、頑張って男装した女の子にしか見えなかった。


 だから、もう初対面の人に「仲の良い姉妹ですね」と言われてから「いえ、姉弟です」と訂正するのには慣れてしまっている。


 皿の上に残っているレタスをフォークで口に運んでいると、廊下の方から子供たちが走り回る小さな足音が聞こえてきた。追いかけっこでもしているのだろうか。楽しそうに笑いながら遊ぶ2人の顔を想像していると、今度は大人の大きな足音と、力也の「こら、タクヤ! 俺のシルクハットを返せ!!」という声が聞こえてきた。


 ああ、またタクヤのいたずらが始まったのか。


 どうやら廊下で繰り広げられているのは、姉弟と父親の追いかけっこらしい。


「あらあら、3人とも元気ねぇ。ラウラとタクヤの元気なところはダーリンに似たのかしら?」


「はぁ・・・・・・」


 力也は最近、休日になると子供たちにも訓練をしている。先月に子供たちが誘拐されてから、ラウラが力也に訓練してくれとお願いしたから訓練をしているらしい。


 彼が仕事で帰りが遅い時も、子供たちは訓練の時と同じルールで鬼ごっこをやったり、私や姉さんから剣術を教わったりしている。


 まだ訓練を始めてから1ヵ月だというのに、子供たちの身体能力とスタミナは上がり始めているようだ。前までは家の中で追いかけっこが始まれば廊下や階段を走り回るだけだったのだが、訓練が始まってからの子供たちの追いかけっこは更に範囲が広がり、リビングの窓から外に出て屋根の上まで壁をよじ登ったり、いきなり寝室の窓を開けて家の外から家の中に入って来たりするのだ。


 しかも子供たちを追いかけて力也まで窓から入ってくることがある。


 窓が開く音を聞いて、今日も窓から子供たちが入ってくるのを想像した私は、苦笑いをしながら姉さんの方を見た。


「ふふっ、元気いっぱいね」


「ああ。だが・・・・・・いきなり窓から入ってくるとびっくりするぞ?」


「いいじゃないの」


「たまに力也も入ってくるのだぞ?」


「ふふっ、元気いっぱいなダーリンね」


 やっぱり、子供たちが元気なところはあいつに似たんだろうか。前に力也も、小さい頃は悪ガキだったと言っていたし。でも、どちらかというと悪ガキに近いのはタクヤの方だな。ラウラは性格が姉さんにそっくりだ。


 願わくば、姉さんのように美少女を襲ったりしないようなレディに育ってほしいものだ・・・・・・。


「ふにゃあー・・・・・・パパに捕まっちゃった」


「はっはっはっ、2人とも捕まえたぞ」


「くそっ」


 今日はすぐに追いかけっこが終わったな。


 タクヤに奪われたシルクハットをかぶりながらテーブルに腰を下ろした力也は、苦笑いをしながらティーカップへと手を伸ばしている。いつもタクヤのいたずらの被害者は彼なのだ。


「ふふっ。・・・・・・そろそろお風呂に入ってきなさい」


「はーいっ! タクヤ、一緒に入ろうよ!」


「えっ? ね、ねえ、ラウラ。そろそろ別々に入ろうよ・・・・・・。もう僕たち6歳だよ?」


「やだやだ! タクヤと一緒がいいのっ! 1人で入るのはやだっ!!」


「わ、分かったって・・・・・・」


 本当に仲の良い姉弟だなぁ・・・・・・。でも、そろそろ別々に入ってもいいんじゃないだろうか?


 ご飯を食べる時はいつも隣の席だし、お風呂に入る時もいつも一緒だ。しかも、小さい頃から眠るベッドまで同じベッドになっている。当然ながら、出かける時も必ずラウラはタクヤと一緒だ。


「うふふっ。ラウラはタクヤが大好きなのね」


「うんっ! ラウラね、大きくなったらタクヤのおよめさんになるのっ!」


「ブッ!?」


 にっこりと笑いながらラウラがそう言った瞬間、いきなり紅茶を飲んでいた力也が口から紅茶を吹き出した。私は紅茶を飲む寸前だったから噴き出してはいないが、もし口に含んでいたら彼と同じように紅茶を吹き出し、目の前に座ってまだハンバーグを齧っているガルちゃんに紅茶を吹きかけていたことだろう。


「ゲホッ、ゲホッ!」


「ちょっとダーリン、大丈夫?」


 姉さんに背中をさすられながら呼吸を整える力也。私は吹き出さないようにティーカップをそっとテーブルの上に置くと、苦笑いしながらラウラのほうを見た。


 仲の良い姉弟だが、ラウラは少々タクヤに依存し過ぎではないだろうか・・・・・・?








「よし、じゃあ今から今日の訓練を始めるぞ」


 目の前に並んでいるタクヤとラウラに言った俺は、ちらりと俺から見て右側に置いてある様々な武器を見た。家の裏庭に置かれているのは様々なサイズの木箱で、その木箱の中にはモリガン・カンパニーの技術分野に所属する社員たちが作り上げた様々な武器が入っている。


 モリガン・カンパニーはオルトバルカ王国騎士団や王国のギルドに武器を販売している。販売している武器は剣や新型のコンパウンドボウなどで、銃は一切販売していない。だから木箱の中に入っている数々の武器の中には、銃は含まれていなかった。


「今から始めるのは戦闘訓練だ。――――エリス」


「はーいっ!」


 妻の名を呼ぶと、エリスが楽しそうに俺の隣へとやって来た。先ほどまで食器を洗っていたのか、まだ私服の上に真っ白なエプロンを身に着けたままだ。


 これから戦闘訓練を始めるというのに、エリスは俺の隣へとやってくると、彼女の顔を見上げている子供たちの頭をいきなり撫で始める。


 おいおい、今から訓練を始めるんだぜ・・・・・・?


 少し呆れた俺は、エリスに撫でられながら俺の方をじっと見ているタクヤを見下ろしながら肩をすくめると、木箱を子供たちの近くへと持ってきた。


「見ての通り、この中に武器が入ってる。好きな武器を選ぶんだ」


「はーいっ!」


 元気に返事をしながら木箱の中に入っている武器へと手を伸ばすラウラ。にこにこと笑いながら彼女が真っ先に手を伸ばしたのは――――なんと、剣ではなくサバイバルナイフだった。隠密行動の際に刀身が反射しないように漆黒に塗装されているナイフを手にしたラウラは、にこにこと笑ったまま鞘の中からナイフを引き抜く。


 ラウラはナイフを使うつもりらしい。タクヤは何を使うつもりなんだろうか?


 そう思いながらタクヤの方を見てみると、タクヤは木箱の中からナックルダスターと仕込み杖を取り出し、2つの武器を交互に眺めていた。どうやらナックルダスターを選ぶべきか、仕込み杖にするべきか悩んでいるらしい。


 あの仕込み杖は、確か俺の仕込み杖と同じく2つに分離して2つの剣になるタイプの仕込み杖だ。射撃機能は持たないため、リボルバーのシリンダーの代わりに狼の頭を模した漆黒の装飾がついている。


 ナックルダスターは一部の警備部門の社員や、冒険者に人気のタイプだ。素材には日本刀と同じく玉鋼を使用しているため、普通のナックルダスターよりも非常に硬い。破壊力のテストではゴーレムの外殻を数発で叩き割っている。


 タクヤは仕込み杖のほうをじっと見つめると、静かにナックルダスターを木箱の中へと戻した。気に入ったのは杖の方か。


 杖の柄を両手で握って捻り、分離させながら柄にあるスイッチを押すタクヤ。すると分離した柄の中からサバイバルナイフの刀身を細くして伸ばしたような形状の刀身が出現する。


「武器は決まったな? では、今からその武器でエリスと戦ってもらう」


「え? ママと戦うの?」


「ああ。エリスは武器を使わない。鬼ごっこと同じく3分間逃げ切るか、ママに1発でも攻撃を当てられたらお前たちの勝ちだ」


 にこにこと笑いながらエプロンを脱ぎ始めるエリスを見ながら俺はそう言った。エリスはラトーニウス王国騎士団の精鋭部隊に所属していたことがあり、その時は絶対零度の異名を持つ最強の騎士だった。


 10年前に彼女と戦った時に、俺とエミリアが2人がかりで戦いを挑んでも苦戦するほどの猛者だ。結婚して仕事や家事をするようになってからも、彼女の実力は全く変わらない。


「分かってると思うが、ママはとても強いぞ。本気で戦えよ?」


「わ、分かった」


「うん。ママ、よろしくお願いしますっ!」


「はい、よろしくね。―――――じゃあ、いくわよ?」


 身に着けていたエプロンを俺に渡し、肩を回しながらそう言うエリス。そう言えば、彼女が子供たちと一緒に訓練をするのは初めてだったな。だから楽しそうなんだろうか?


 巻き込まれないように、俺はエリスのエプロンを片手で持ちながら後へと下がると、左手を振り上げてからすぐに振り下ろした。


「始めッ!」


 エリスは号令を聞いても全く動かない。呼吸を整えて突っ立っているだけだ。俺は先ほどから猛烈な威圧感を感じているんだが、子供たちは全くその威圧感を感じていないらしく、号令と同時に武器を構えてエリスに向かって走り出している。


 先にエリスへと攻撃を仕掛けることになるのは、足の速いタクヤの方だろう。俺と同じように仕込み杖を構えながら突っ走り、早速エリスに向かって右手の剣を突き出す。


 だが、エリスはくるりと反時計回りに回転しながらその刺突を躱し、剣を突き出したまま驚愕しているタクヤの頭を掴むと、タクヤが剣を引き戻すよりも先に右足を持ち上げ、まるで狙撃のように正確に彼のみぞおちに膝蹴りを撃ち込んだ。


 タクヤの小さな体が一瞬だけ浮き上がり、落下し始めると同時にタクヤが苦しそうな呻き声を上げる。がら空きの胴体に膝蹴りを叩き込まれたタクヤは、両手から武器を落とし、みぞおちを手で押さえながらそのまま崩れ落ちてしまった。


 早くもタクヤがやられたことに驚きながらも、今度はラウラがナイフを構えながらエリスに向かって突っ込んでいく。彼女は2本のサバイバルナイフを構え、姿勢を低くしながらエリスに突っ込むと、最初に左手のナイフを振り上げ――――振り下ろす途中で、ナイフのグリップから手を離した。


「!」


 ナイフの斬撃を放つにしては間合いが遠いと思ったが、あれは振り下ろして攻撃するのに見せかけ、投擲して攻撃するためのフェイントだったのか。タクヤのようにいきなり攻撃すればやられると警戒しているんだろう。


 エリスもラウラのフェイントは予想外だったようだ。目を見開きながらも上半身を横に逸らし、回転しながら飛んできたサバイバルナイフを回避するが、ラウラが手にしている得物はもう1本ある。


 回避を終えた直後のエリスに向かってナイフを構えて突撃するラウラ。いくらエリスがラトーニウス最強の騎士だったとしても、回避した直後では次の攻撃には対応できない。攻撃を回避し終え、振り返った瞬間に繰り出される攻撃を回避することは出来ないのだ。


 そう思っていたんだが、エリスはなんと今度はそのまま反対側に上半身を逸らし、ラウラが突き出したナイフの一撃を躱してしまった。


 フェイントは予想外だったらしいが、エリスはすぐに対応し、彼女の攻撃を回避してしまったんだ。当たると思っていた攻撃を空振りしたラウラが、自分の左側で攻撃を躱しながら微笑む母親の顔を見上げ、目を見開く。


「惜しかったわよ、ラウラ」


 娘の顔を見つめながらそう言ったエリスは、ナイフを引き戻してもう一度攻撃して来ようとする彼女の手からナイフを叩き落とすと、左足でラウラの小さな足を払って転倒させ、彼女の喉元に手刀を突き付ける。


「そこまでだ」


 まだ子供たちに戦闘訓練は早かったんだろうか。秒殺だったぞ。


 静かに突き付けていた手刀を引っ込めたエリスは、俺が号令を発した瞬間に放っていた威圧感も同時に引っ込めると、いつもの笑顔を浮かべながらラウラとタクヤを助け起こし、2人をぎゅっと抱きしめる。


「ああん、2人とも頑張ったわ! さすが私たちの子供ね!」


 呻き声を上げながらエリスに抱き締められる2人。俺は武器の入った木箱を片付けながら、母親に抱き締められる子供たちを見守っていた。


 きっとこいつらは、訓練を続ければ俺たちよりも強くなるだろう。


 俺たちの子供たちは、色んな才能を持っているのだから。


 







 ただでさえ重々しく殺風景な朝が、雨のせいで更に重々しくなっていた。社長室の窓から見える防壁は雨で濡れたせいなのか、黒ずんでいるように見える。薄暗い大通りでは今だに街灯が煌めき続けていて、その光が雨の中で必死に足掻いていた。


 紅茶を口に含んでから書類を片付け、新しい書類を机の上に置く。この書類は製薬分野から送られてきた書類らしい。エリクサーの改良のために新種の薬草を購入したいと書いてある。


 今の時点でもあのエリクサーは冒険者や騎士団の大きな助けになっている。一口飲むだけで一瞬で傷口を塞いでしまうほどの効果があるからな。どうやら今度はそれを応用した解毒剤や石化を解除するためのエリクサーも作成するらしい。


 石化かぁ・・・・・・。そんな攻撃をしてくる魔術師や魔物には出くわしたことが無いが、石化したら基本的に回復する手段はないらしい。もしその石化を解除できるようになれば、冒険者や騎士団の生存率もさらに上がることだろう。


 今のところ、予算にはまだ余裕がある。これは承認しておくべきだろう。


 承認のサインを書き込んだ俺は、再び雨が降り続ける窓の外を眺めながら、静かにスーツのポケットの中に右手を突っ込んだ。


「――――随分と久しぶりだな。10年ぶりか?」


 もちろん、独り言ではない。ノックをせずに入ってくるような背後の来訪者に向けて放った言葉だった。


「・・・・・・ええ、そうね。10年ぶりだわ」


 聞こえてきたのは、いつもこの部屋を訪れる社員たちの低い声ではない。まだ17歳くらいの少女の声だった。清楚そうな声音だが、気の強そうな感じがする。


 その声を発したのは、目の前のガラスに映る金髪の少女だった。


 まるで学校の制服のような純白の上着とスカートに身を包み、室内だというのに日傘を持っている。上着の両肩から背中に向かって伸びているのは、あの時と変わらない純白のマントだ。


 どこかの貴族のお嬢様ではないかと思ってしまうような可愛らしい少女。だが、その目つきは貴族のお嬢様の目つきではない。


「―――――人間というのは、やはり老いるのが速いのね」


「ふん」


 いつの間にか部屋の中に姿を現していたのは、かつて10年前にヴリシア帝国の帝都サン・クヴァントで戦った、アリアという吸血鬼の少女だった。あの時俺たちは帝都で人々を襲う吸血鬼を撃破する依頼を受けて帝都まで向かい、彼女と、彼女の主人であるあのレリエル・クロフォードと戦った。


 レリエルと最後に会ったのは、10年前のネイリンゲンだ。魔剣を持つジョシュアを倒しに行く際に、彼は俺たちに加勢してくれた。


「用件は?」


「これを渡しに来たわ」


 後ろを振り向きながらポケットに突っ込んでいた手を伸ばし、10年も経過したというのに全く姿が変わっていない吸血鬼の少女が手にしていた物を受け取った。


 彼女が手にしていたのは、1枚の手紙だった。


 目を細めながら手紙を受け取り、書いてある文字を凝視する。


「10年間の間、レリエル様は各地で眷族を集め続けた。今の規模は、もうこの世界をもう一度滅ぼせるほどよ」


「・・・・・・・・・」


「でも、あなたがいる限りこの世界は滅ぼせない。だから、レリエル様はあなたに決闘を申し込むことにしたの」


 なるほどね。もう一度この世界を蹂躙する前に、俺と一騎討ちがしたいってわけか。


 手紙に書いてある内容は、レリエルからの決闘状だった。既に眷族の規模は再び世界を滅ぼせるほどの規模になったが、この眷族を率いて再び世界を蹂躙する前に、まず俺と決闘がしたいらしい。


 今のところ、レリエルを止められるのは俺だけだ。


 決闘は今から一週間後に、魔界と呼ばれる場所で行われるという。もちろん、1人で魔界まで来いと書いてある。


 俺は罠かもしれないと思ったが、レリエルはプライドの高い吸血鬼だ。俺を1人だけ魔界に呼び出し、眷族たちと共に襲い掛かって来るような真似は絶対にしないだろう。正々堂々と戦うつもりなんだ。


 決闘か・・・・・・。悪くない。


「それで、魔界はどこにある?」


「一週間後になったら、その招待状に場所が表示されるようになっているわ。――――レリエル様からの招待状なんだから、必ず来なさい。いいわね?」


「分かった。受けて立とう」


「楽しみね」


 にやりと笑いながらそう言うと、アリアは背中から蝙蝠のように真っ黒な翼を生やし、まるで幽霊のように部屋の天井をすり抜けてどこかへと消えてしまった。


 彼女から受け取った手紙を凝視しながら、俺は頭を掻いた。


 一週間後に、レリエルとの決闘がある。それまでに決闘の準備をしつつ、子供たちにも訓練をしてあげなければならない。


 なるほどな。―――――ラスボスはお前なのか、レリエル。


 




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