ネイリンゲンの傷痕
「ひでえ・・・・・・」
ネイリンゲンの生存者のために用意した医療所は、身体中にやけどを負った人々や、破片が突き刺さって血まみれになり、包帯を巻かれている人々で満員になっていた。血の臭いや膿の臭いと薬品の臭いが混ざり合う空気の中で、傷ついた人々が呻き声を上げている。
ここで治療魔術師の治療を待つ人々の中で、五体満足で済んでいるのは4割くらいだろう。残りの6割の生存者は手足を失っている。
信也も右腕を失った。ミラを庇って右腕を失ったらしく、あいつをここに連れてきたミラは泣きながら「シンを助けて下さい」と何度も魔術師たちに言っていた。
ミラをあいつに任せるのは何だか不安だったが、幸せになったミラを見てみたいという気持ちはあった。いつかミラがあいつと結婚すると言い出してもいいように、反対している自分も説得していた。
だが、その2人の幸せを、勇者の野郎が踏みにじりやがった。
信也は一命を取り留めている。だが、あいつの右腕と共に2人の幸せを奪ったのは勇者だ。片腕を失って弱っている信也と、彼にすがり付いて泣き続ける妹の姿を見た瞬間、俺の心の中に真っ先に生まれたのは勇者への復讐心だった。
何とか彼は一命を取り留め、今では鍛冶屋のレベッカと義手の相談を始めているらしい。レベッカは他の街に出張に行っていたため、何とか無傷で済んだようだ。
まだ安静にしておいた方が良いと思うんだが、信也が焦っているかのように義足の移植を考えているのは、すぐに旦那が勇者への報復攻撃を決行するだろうと思っているからだろう。
旦那は敵には容赦しない。命乞いをしてくるような奴でも、表情を変えずに撃ち殺すような男だ。そして、仲間を傷つけるような奴は皆殺しにする。
治療が終わった時、信也は勇者の居場所がファルリュー島だと言っていた。ラトーニウス王国の南側にある海に存在する小さな島だ。かつて魔王を倒した伝説の勇者は、そんな小さな島に隠れていたというのか。
水を欲しがる負傷者に水の入ったコップを渡す治療魔術師の少女を見守りながら、俺は顎鬚を弄り始めた。勇者が転生者で、核兵器を使おうとしているという話を聞くまでは、俺もあの勇者を英雄だと思っていた。旦那たちについて行けば、もしかしたら俺たちもあの勇者みたいな英雄に慣れると思った。
だが、あの勇者は英雄なんかじゃない。ただの虐殺者だ。
「ギュンター様」
屋敷の使用人に呼ばれ、俺はやっと負傷した人々を眺めるのを止めた。きっと彼が声をかけてくれなかったら、誰かに呼ばれるまでずっと傷ついた人々を見つめていたことだろう。
後ろを振り返ると、メガネをかけた初老の執事が俺の後ろに立っていた。
「ハヤカワ卿がいらっしゃいました。外までお願いします」
「分かった、すぐ行く。・・・・・・それと、薬草と医療品の手配を引き続き頼む。このままじゃすぐになくなるぞ」
「かしこまりました」
国王には娘を助けた貸しがある。モリガンの傭兵たちが薬草と医療品を欲しがっていると伝えれば、優先的にこっちに回してくれる筈だ。
あと4日くらいで物資が足りなくなってしまうだろうと思っていた俺は、執事にそう伝えてから医療所を後にした。
薬品と血の臭いのする医療所を出た瞬間、いつも通りの温かい風が流れ込んできた。エイナ・ドルレアンは城壁に囲まれているためネイリンゲンのように解放感はないが、ネイリンゲンよりも大きな街であるため、いろんな店がある。
もうネイリンゲンのあの開放的な景色が見れないのかと思いながら外に出ると、杖を持った赤毛の紳士が、街路樹の近くに置いてある休憩用の椅子に腰を下ろしているのが見えた。赤毛は女性のように長く、後ろ髪は結んである。だが、その体格は明らかに女性の体格ではない。やけに筋肉の付いたその紳士への傍らへと歩いて行くと、彼は俺に気付いたらしく、にやりと笑ってから少し隅へと寄った。
俺も椅子に腰を下ろし、目の前でいつものように営業を続けている雑貨店の入口を眺めた。
旦那に何と言えばいい? 弟の片腕を奪われ、ネイリンゲンで惨劇を見てきた旦那に何と声をかければいいのか分からない。親しい仲間である筈なのに、まるで初対面の人と話すことになったかのように、俺は何と言えばいいのか椅子に座ってから考え始めた。
「だ、旦那・・・・・・その・・・・・・」
「・・・・・・ああ。受け入れてくれてありがとう、ギュンター」
その声音は、いつもと同じだった。低くて優しい旦那の声音。
「その・・・・・・生存者は、100人くらいだったよ・・・・・・」
「そうか・・・・・・」
ネイリンゲンは小さな街だが、20000人くらいは住んでいた。だが、旦那が助け出した生存者はたったの100人だけ。しかもほとんどの人が重傷を負っていたから、慌てて用意した薬品はもうかなり減ってしまっている。
「そういえば、旦那が前に言ってた放射能ってのは・・・・・・大丈夫なのか? 旦那は確か、ネイリンゲンで戦ったんだろう?」
「俺は大丈夫だ。毒物完全無効っていうスキルを装備してるからな。そいつが放射能も防いでくれるかは分からないが・・・・・・。それより、生存者の方は大丈夫か?」
「ああ。今のところ、放射能で苦しんでいる負傷者はいない。重傷で苦しんでいる奴らばかりだ・・・・・・」
「そうか・・・・・・」
旦那は悲しそうにそう言うと、頭にかぶっていたシルクハットを取った。旦那の頭の角は髪に隠れてしまうほどの長さだから、髪の長い旦那ならば感情が昂らない限り角がバレることはないと思っていたんだが、旦那の頭の角は少々伸び始めているようだった。
確か、旦那の角は1本だけだった筈だ。だが、今の旦那の長い赤毛かた少しだけ突き出ている角は、いつの間にか2本になっている。
角が増えたことが気になったが、それは勇者に報復した後で聞くことにした方がよさそうだ。ちらりと旦那の頭を見た俺は、頭を掻いてから再び正面の雑貨店の入口を眺める。
「そういえば、姉御たちは? まだ家か?」
「いや、放射能が危ないからな。国王に頼んで、王都に家を用意してもらった」
「ということは、これからは王都で暮らすのか?」
「ああ。・・・・・・あの開放的な景色は気に入ってたんだが」
「ああ、俺もだ。残念だよ・・・・・・」
もうあの景色を見ることは出来ない。あの開放的な景色は、もう焼け野原になってしまっている。
仲間たちとネイリンゲンで過ごした日々を思い出していると、旦那は脇に立て掛けていた杖を拾い上げて立ち上がった。
「信也の様子を見てくる」
「おう。医療所の2階にいる筈だ」
「はいよ」
もうあいつの傷は塞がっている。今頃はレベッカと義手の移植について相談している筈だ。
シルクハットをかぶって医療所の入口へと入っていく旦那を見守った俺は、まだ目の前の雑貨店の入口を見つめていた。
「ああ、兄さん」
「よう。元気か?」
信也の顔からは、傷が完全に消えていた。フィオナが魔術で治療してくれたらしい。
いつもと変わらない弟の顔だったが、やっぱり彼の右腕は見当たらなかった。信也の右肩から先は、包帯が巻かれているだけだ。
「・・・・・・李風は?」
「李風さんは、自分のギルドの所に戻ったよ。兄さんがいつでも報復攻撃を始められるように、部隊を編成するって言ってた」
「そうか」
できるならば、すぐに報復攻撃をしたいところだ。だが、信也は重傷を負っているし、まだ作戦も考えていない。李風からは敵の拠点が南ラトーニウス海にあるファルリュー島である可能性があると聞いているから、海兵隊を編成する事ができれば攻撃を仕掛けることは出来る。だが、編成するには時間がかかるだろうし、作戦もない。今すぐに攻撃を仕掛けるのは不可能だ。
それに、敵はおそらく駆逐艦や航空機を配備しているだろう。海兵隊だけでなく、上陸を支援する部隊も用意しなければ危険だ。
「ところで、いつ攻撃を仕掛けるの?」
「え・・・・・・?」
ベッドの上に横になりながら問い掛けてくる信也。彼の傍らで包帯を準備していたミラとフィオナも驚き、いきなり攻撃開始はいつなのかと聞いてきた彼の顔を見上げた。
片腕を失い、全身の傷も塞がったばかりで、これから義手を移植するというのに、信也はもう彼らに攻撃を仕掛けることを考えている。信也には作戦を立案してもらい、ここで治療を受けていてもらおうと思っていた俺は、少し驚いてしまった。
「・・・・・・まだ、分からん」
「分かった。作戦を考えておくよ。リハビリも急がないとね」
『無理はしちゃダメですよ、信也くん』
(そうだよ、シン。力也さんみたいに無茶しちゃダメだよ?)
「おいおい・・・・・・」
確かによく無茶をするから、妻や仲間たちに心配をかけている。
苦笑いする俺の顔を見て笑っている弟の顔を見た俺は、少し安心して窓の外を眺めた。
もっと落ち込んでいるのではないかと思って、励ます方法を考えながらここまでやってきたんだが、励ます必要はなさそうだ。それに、余計な事を言うわけにはいかない。逆に落ち込んでしまう可能性がある。
だから俺は、あまり励ますようなことは言わなかった。
「そういえば、ガルちゃんは?」
『えっと、先に王都に戻っているそうです』
「分かった。それじゃ、俺はそろそろ帰るよ」
「うん。またね、兄さん」
「おう。・・・・・・ミラ、信也を頼んだぜ」
(任せてください!)
長い耳をぴくぴくと動かしながら微笑むミラ。信也は彼女に任せておけば問題ない筈だ。それに、治療魔術が得意なフィオナも一緒だ。
俺はポケットからエイナ・ドルレアンに来る前に王都で購入してきたメガネを取り出すと、信也のベッドの傍らにあるテーブルの上に置いた。確か、こいつのメガネは割れてしまっていた筈だ。新しいメガネが必要だろう。
「ありがと、兄さん」
「気にすんな」
そう言ってにやりと笑った俺は、信也の医務室を後にした。
部屋を出て扉を閉め、木の床が軋む音を聞いた俺は、左手で顔を押さえながら目の前の壁を睨みつける。今すぐにこの拳であの壁をぶん殴って八つ当たりしたいところだが、この医療所にはあの惨劇で傷ついた人々がいる。この怒りは、もう少し抑えておくべきだろう。
よくも俺の弟の片腕を・・・・・・!
何とか目の前のぶん殴る前に怒りを抑え込んだ俺は、ため息をついてから薬品と血の臭いがする1階へと下りて行った。
国王に用意してもらったのは、少し大きめの家だった。ネイリンゲンの屋敷よりも少し小さな2階建ての家で、装飾はあまりついていない。庭もあの屋敷ほど広くはないが、子供たちが遊んだり、剣術の訓練をするには十分な広さだった。
森に行くには防壁を越えて行かなければならないから、ラウラとタクヤを連れて狩りに行くには少々不便になってしまったが、魔物や肉食動物に襲われる心配はない。
タクヤに絵本を読んであげているラウラを微笑みながら見守っていた俺は、近くに立て掛けておいた仕込み杖を拾い上げ、肩を回しながら裏口のドアへと向かった。少し剣術の訓練でもして来ようと思って立ち上がったんだが、俺が椅子から立ち上がる音を聞いたラウラが、いきなり本を読むのを止めて心配そうな顔で俺の顔を見上げてきた。
どうやらまたどこかに行ってしまうのではないかと心配しているようだ。娘が泣きだす前に「大丈夫だよ。ちょっと裏庭で剣の練習をしてくるだけだから」と言って安心させてから、俺はリビングを後にする。
前に使っていたサラマンダーの仕込み杖は、今頃2階でエリスと一緒に洗濯物を干しているガルちゃんに借りパクされてしまったため、俺が持っているこの仕込み杖は端末で生産したものだ。杖の中に細身の剣が仕込んであるのは同じなんだが、柄から刀身を引き抜くのではなく、杖が真ん中から2本に分かれる仕組みになっていて、その2本に分かれた杖の柄の中から、収納されていた細身の刀身がスライドして姿を現すという方式になっている。
つまり、1本の杖が2本の剣になるということだ。やっぱり二刀流が一番使いやすい。
新しい我が家の裏庭に出た俺は、柄頭にドラゴンの頭を模した装飾がついている漆黒の杖の柄を両手で握ってから捻り、杖を2本に分けてからボタンを押した。
その瞬間、柄の中から火花を散らしながら漆黒の刀身が姿を現す。刀身の長さは一般的な剣よりも少し短い。刀身は両刃で、形状はスペツナズ・ナイフの形状に似ている。
素振りを始める前に、俺はちらりと2階のベランダで洗濯物を干している妻の顔を見上げた。エリスは子供たちの小さな服を干しながら、俺を見下ろしてにっこりと笑っている。彼女の隣には、背伸びをしながら何とか真っ黒な靴下を干しているガルちゃんの姿が見えた。
多分、あの靴下は俺のだ。
苦笑いをしてから、俺は仕込み杖の素振りを始めた。この家には地下室があるが、あの屋敷のような射撃訓練場はない。勇者との戦いが終わったら、カレンに頼んでまた改装してもらおう。
左手の剣を振り上げ、その間に右手の剣を左から右へと振り払う。そして左手の剣を振り下ろしながら一歩前へと踏み込み、重心を低くしながら右手の剣を突き出す。この刺突の目標は相手の喉だ。
右手の剣を引き戻しながら反時計回りに回転し、左手の剣を一気に左へと振り払う。
李風たちの編成はいつ終わるのだろうか? 彼らの編成が終わり、信也の作戦の立案が終われば、いよいよ勇者たちの拠点であるファルリュー島に攻撃が仕掛けられるようになる。子供たちにはまた心配をかけてしまうかもしれないが、勇者を放っておくわけにはいかない。奴らはネイリンゲンの人々を虐殺したのだから、報復しなければならない。
もし作戦が始まれば、俺は妻たちは戦場に連れて行かないつもりだ。妻たちは転生者を瞬殺してしまうほどの実力を持つ猛者たちだが、もし命を落としてしまったら、子供たちが悲しんでしまう。だから2人には子供たちの世話をお願いし、俺が海兵隊としてファルリュー島に同志たちと攻め込む予定だ。
「力也」
「お、エミリア。どうした?」
素振りをしていると、裏口のドアからエミリアがやってきた。蒼い髪をいつものようにポニーテールにしていて背中にはクレイモアを背負っている。服装も、子育てをしている時に着ている私服ではなく、動きやすいようにモリガンの黒い制服姿だった。大きな胸が剣を振るう度に揺れて邪魔だからと作ってもらった防具は一切身に着けていない。
彼女も素振りに来たのだろうかと思いながら、妻に素振りをするスペースを空けようと隅の方に歩こうとしていると、俺の隣へとやってきたエミリアが背中から大剣を引き抜いて、その切っ先を俺へと向けてきた。
「――――久しぶりに、相手をしてもらえるか?」
「ハハッ。子育てばかりやってて腕が鈍ったんじゃないか?」
「侮るなよ? 私は元ラトーニウスの騎士だ。・・・・・・それに、お前の妻だぞ?」
それはそうだ。彼女は実際に転生者を圧倒した事がある。俺の妻たちは転生者よりも手強いのだから、侮れる相手などではない。
俺はにやりと笑うと、右手の剣を伸ばしてエミリアのクレイモアの切っ先に軽く当てた。キン、と軽い金属の音が裏庭に響き渡り、俺とエミリアは少々狭い裏庭の中で睨み合う。
いつもならば彼女が先に攻撃を仕掛けて来る筈なのだが、今回は攻撃を仕掛けて来ようとはせず、自分の目の前にクレイモアを構えたまま黙って俺を睨みつけていた。おそらく、俺が斬り込んだ瞬間にカウンターで反撃するつもりなんだろう。彼女の大剣よりも細身で短い剣を2本持つ俺の方が接近戦では小回りが利くが、連続攻撃に失敗すればこちらが不利になる。
いつまでも睨み合っているわけにはいかないので、今回は俺から攻撃を仕掛けさせてもらうことにした。姿勢を低くしながら踏み込み、斜め下からエミリアに向かって両手の剣を突き出す。
彼女はこの一撃を受け流すのか? それとも躱すのか?
「ふんッ!」
「!」
すると、エミリアは思い切り大剣を横に振り払った。サラマンダーの角で作られた頑丈な彼女の大剣は俺が突き出したばかりの仕込み杖の切っ先を横から思い切り殴りつけ、エミリアに向かう筈だった切っ先を50度も左にずらしてしまう。
俺は慌てて剣を引き戻そうとするが、体勢を立て直す前にエミリアのタックルを喰らい、更に体勢を崩す羽目になった。
妻が大剣を再び振り下ろす前に横へとジャンプし、今度は側面から攻撃を仕掛ける。右手の剣を突き出して攻撃するが、この一撃は見切られていたらしく、エミリアはこちらを振り向かずに剣を構えてガードする。
ならば、もう片方の剣で攻撃するまでだ。左手の剣を振り上げ、ガードしている最中のエミリアに向かって振り下ろす。
だが、これはフェイントだ。エミリアが引っ掛かった瞬間に右手の剣を引き戻し、こっちで勝負をつけるつもりだ。
エミリアはこの一撃もガードするつもりらしく、構えていた剣を少しずらして俺の左手の剣を防ごうとする。
俺の作戦通りに左手の剣はエミリアにガードされる。散った火花の向こうでエミリアがにやりと笑うが、俺も彼女と同時ににやりと笑っていた。
「!?」
「引っかかったな!」
すぐに右手の剣を引き戻してから、先ほどとは別の角度で突き出す。エミリアは左手の剣を大剣でガードしてしまったため、すぐにこの一撃をガードする事ができない。
仕込み杖の漆黒の刀身がエミリアの脇腹に突き刺さる直前で、俺は刀身をぴたりと止めた。
「くっ・・・・・・負けてしまったか・・・・・・」
「全然鈍ってないじゃないか」
「当たり前だ。結婚してからも毎朝の素振りは欠かしていないぞ」
大剣を背中の鞘に納めてから胸を張るエミリア。久しぶりに妻の大きな胸が揺れたのを見て、俺は少しだけ顔を赤くしてから目を逸らした。
すると、いつの間にか裏口のドアが少し開いていて、その影からラウラとタクヤがこっちを見ていることに気付いた。どうやら俺とエミリアの模擬戦を見ていたらしく、こっちをじっと見ながら「おかあさん、すごーい・・・・・・!」と小声で言っている。
エミリアも子供たちに見られていたことに気付いたらしく、少し恥ずかしそうに顔を赤くした。
夫婦喧嘩をするつもりはないが、もし夫婦喧嘩になったら家がぶっ壊れそうだ。
俺は子供たちを見てにっこりと笑うと、杖を元に戻しながら「ママはとても強いんだぞ?」と言った。
この子たちのママは、転生者を瞬殺してしまうほどなんだからな。
俺と同じように頭から角の生えている子供たちの頭を、俺は優しく撫でた。
でも、まだ俺の心の中には、勇者に対する怒りが残っていた。