始まりの一日
処女作です。拙い文章ですが、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。
誤字・脱字の指摘や感想、アドバイスなど是非お願いします!
鮮やかにピンク一色で染まった桜並木の街道で、俺は走っていた。 別にマラソン大会を意識しているのではない。遅刻しそうなのだ。始業開始まであと僅かしかない。
「はぁ、はぁ……」
俺の名前は桐谷秀司。ついこの間高校2年生になったばかりだ。 4月から遅刻して教師共に目をつけられるのはまっぴらごめんだ。
もう時計を見ると始業開始まであと十分を切っている。しかし、まだ可能性はある!と感じてメロスさながらの走りを見せている中、俺は小道の脇で厄介なものを見かけてしまった。不良(と見られる)の大男が華奢な少女に詰め寄っていた。
素通りしようかと思ったがメロスさながらの走りはいとも簡単に俺の体力を削りきってしまったので、休憩も兼ねて物陰から見物していくことにした。
大男はオールバックの髪にジャラジャラとした銀のドクロのネックレス。 見かけ脅し感が否め無い。
少女についてもしっかり見て目に焼き付けたいところだが、生憎大男が邪魔でよく見えない。 目の保養が出来無いじゃないか……!
「おい、お姉ちゃんよ〜 ぶつかってきたからには覚悟してるんだろうな……? 俺を怒らすと怖いんだぜ? 何が言いたいか分かるよな……? 」
あいつ絶対短気だ。不良をやっている時点でそうなのかも知れないが、バカが滲み出ているし話していることが支離滅裂だ。こういう奴は感情に任せて手を
出すクズが多い。
大体、初対面の人に分かるよな、みたいなノリが分かるわけないだろ。よく会う飲み友達じゃある
まいし!
これだから近ごろの不良は…! 不良をやるからにはもっとその道のことについて勉強するべきではないだろうか?カツアゲの仕方や、ぶつかって来た人の対処などテンプレ過ぎて教科書の始めに載っているに違いない。
「そ、それは嫌です! ほんとにすいませんでした…… 急いでたんです……! お、お願いします‼︎許していただけませんか……? 悪気は無いんです……‼︎ 」
不良談義に一人で花を咲かせている間に話は進んでいた。なんか昭和の学園ドラマみたいだな。
「んだと……! 早く選べ! 金か身体、どちらを渡すかな……! 」
なんだその選択肢、どっち選んでも損じゃねえか。
「選べないなら俺が決めてやるよ! 」
「きゃっ──‼︎ 」
おっと、俺の予想を裏切らずあいつ短気だった。 流石にこのまま傍観者に徹するのは良心が痛むな、、、
遅刻した言い訳はどうしようかなんてことを考えながら俺は彼女に襲いかかろうとする大男に向けて走り出していたーーー。
大男との戦闘はあっけなく終わった。 昔習ってた柔道がこんなとこで役に立つとはね、、、
のびてる男は端に寄せておけば大丈夫だろう。
「あ、あのー……」
ふと顔を上げるとそこにはさっき不良に絡まれていた少女がいた。かなり美少女だ。黒髪のショートヘアーに意思の強そうな瞳。真面目そうな雰囲気……頼りになる学級委員、という肩書きが似合うそんな美少女だった。
まぁ頼りになりそうとは言え、不良に臆しない少女なんてそうそういないだろうしな。
「? 私の顔に何かついてます? 」
「いや、違う違う! ところで怪我は? 」
「無事です! あの……ありがとうございました‼︎ 」
「いやいや、とんでもない。 ……まぁ気をつけて
な。」
「はい!私は神奈川志保と申します!
学校に遅刻しそうだったので急いでついぶつかってしまいました……。」
俺はあなたのおかげで遅刻確定ですよ、と心で半ば八つ当たりで毒づきつつも、異変に気付く。
「あれ? 登校中なのに私服なのか? 」
「はい! うちの高校は制服が無いので。」
制服が無い学校か……。今風でおもしろそうだな。
「何はともあれ無事で良かったよ。 神奈川さんは美人だからそういう輩には気をつけろよ。」
何だか神奈川さんの顔が気のせいだか赤く熱っぽくなってきた。 ……具合が悪いのかもしれない。
「じゃあ、俺はこの辺で」
「‼︎ ま、待ってください! 名前……今度お礼がしたいので名前を教えてください! 」
「いやいや! 俺は名前を名乗るような大層なことしてないから 。ではこれで! 」
俺は残りの体力を振り絞って猛ダッシュした。名前を名乗るほどのことはしてない、だとさ!漫画くさくて恥ずかしいセリフだけど一度でいいからこういうセリフ言ってみたかったんだよな〜♪
そんなささやかな願望が叶ったことに浮かれながらも遅刻の説教は免れない現実に落胆していた俺は、その後ろで誰かが観察するかのようにこちらを見ていたことなど気付きもしなかった。
◆◇◆◇
「ってことがあってな……」
「お前ほんと漫画か何かの主人公みたいだな 」
今は4時間目が終わって昼休み。 俺は学食で今日の朝の出来事を悪友の滝島明に話していた。
いつもは学食は混んでいて使えないことが多いのだが、今日はすんなりと座ることが出来た。朝の奮闘(?)の賜物だろうか。
「ってか今どき……どころか昭和のドラマでもそんな設定無かったんじゃねぇの? そんなんじゃ視聴率とれねぇぜ」
だそうです。昭和のドラマの関係者様、
ごめんなさい。
「俺も流石にびびった。 これで明日告白でもされたら最高だけどな‼︎ 」
「告白? 秀司に?? 秀司に限ってそれは無いだろ〜な」
くっそ……!ニヤニヤと人の希望を潰しやがって……! 異世界にでも転生したらコイツに彼女が出来ない魔法をかけてやる……! そう堅く決意したのだった。
「なぁ、美少女と言えば城宮さんが今年の芸術選択音楽にしたらしいけど 、秀司はどうし……秀司も音楽か」
「もちろんだ! 」
正直、運任せだったが、同じ「音楽」を選んでいるなら何の問題も無い。
彼女──城宮結姫は超大金持ちのお嬢様でいて、校内で一二を争う美少女、腰ぐらいまでかかる黒髪に、目尻が少しだけ垂れていて、つぶらな瞳はみたものを惹きつけ
癒すという。(俺氏談)
「清楚」という文字がぴったりな彼女は学校のお姫様として多くの男子生徒に崇められている。(俺も彼女のことを心密かに「姫」と呼んでいる。)
これでいて、運動も勉強も出来るというのだから非のつけどころが無い。両親は海外で事業を展開していて、家はお手伝いさんとかがたくさんいるらしい。
俺が何故ここまで彼女に詳しいかというのは俺も彼女の熱狂的なファンだからだ。 それ故に俺はよく彼女のストーカーもしているが彼女にとって危害は無いはずだし問題無いだろう。
「ずいぶん彼女のこと知ってるんだな……ってかお前ストーカーまでしてるの……? それは引くわ……」
あれれ⁉︎なんで明が俺のストーカーのことを知ってるんだ⁉︎
おかしいな……この件はまだ誰にも話して
無いのに。
「いや、バリバリ口から出てたからな! さっきの! だだ漏れもここまでくるとすげぇよ! 」
何故だか褒められたが、明がため息を付いているのを見ると、きっといいことなのだろう。 考えこむアキラを置いて、俺はそそくさと教室に帰ったの
だった。