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お姫様は回復魔術が得意な!?《旧版》  作者: 無花果
第一章 『アルドメア鎮魂際』
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第三話「とある皇女と異変の片鱗」

帝都南方に位置するギルド本部は三階建ての建物で一階は受け付け、二階は酒場、そして三階には会議室といくつかの個室がある。その中の一つであり帝国ギルドのトップを勤める人物の仕事部屋・・・つまりギルド長室には現在三人の人間が座っていた。


一人目はガラシャ。ブラウンの髪をした二十六・七歳程の冒険者で冒険者としてのランクは八段階評価のしたから二番目、七つ星だ。腰にはショートソードが一振りとナイフを幾本かさしてい。


二人目はニコラ。プラチナゴールドの長い髪を後頭部で三つ編みにしてたらし頭には白い丸帽子。七分丈のズボンとシャツといった身軽な服装だ。腰にポーチをつけている以外に特に何かを持っている様子はない。


そして三人目は・・・。


「ギルド長。俺たちに何のようですか?俺はともかくニコラちゃんまで一緒なんてアルベンの怪我のことなら依頼を達成したあとのことなんだから特に問題ないだろ?」


帝国ギルド統括アガサ・オーリマンは首を横に降った。

燃えるような赤毛のこの人物は帝国ギルドの最高責任者である。かつて槍の使い手として名をはせた冒険者であったが右足の怪我を理由に引退し以後は後進の育成と裏方に回っている。


「ガラシャ、あんたからも話を聞きたい。ニコラちゃんにも傷の様子を詳しく聞きたかった。少なくともこの件は冒険者が簡単なヘマをして大怪我をしたとかそんな単純な話じゃすまないと私は考えている。」


「そりゃかまいませんがあんまり詳しくは把握してませんよ?何せ直接ことにかかわったのは相棒だけなんですから。」


「・・・私もおかしな傷だなと思ったぐらいで特には・・。」


ニコラの言葉を聴いたアガサが『おかしな』の部分に反応した。


「どうおかしいと思った?」


その口調はどこか詰問しているような厳しいものだった。


「えっと・・・その・・直りがすごく悪かったんです。今までにも何度〈噛み傷〉の治療はしてきましたがあんなに直りが悪いのは初めてでした。」


「・・・〈噛み傷〉・・・やっぱり君をここに呼んだのは正解だった見たいね。そのことについては後で詳しく聞くわ。それよりガラシャあんたの話を先に聞いてもいいかしら?」


ガラシャうなずいた。


「ええわかりましたギルド長。おれとアルベンは昨日から外周区で騎士団とスラム街の住人の仲裁をしてたんです。ご存知かと思いますが依頼先は騎士団でスラムの難民たちがもう少し支援物資を回してほしいっていう嘆願をしに騎士団の詰所に押しかけてきたのがそもそもの始まりだったみたいでした。最初は騎士団が対応してたんですがどうにも反感をかっちまったみたいで、俺たちが仲裁に入って何とか事なきをえまして。それぞれの代表者が具体的に何が起こってるのかを話し合う場を設けると、ここまでが仕事でした。」


ギルドの仕事は多岐にわたる。庭園の手入れや雑事の手伝いといった何でも屋から魔物の討伐、要人の護衛までさまざまな仕事がある。それぞれの適正に応じた仕事を仲介し冒険者にまわすのがギルドの役割だ。ガラシャとアルベンは主に交渉ごとやトラブルの仲裁を担当するギルド専属の交渉人ネゴシエーターをしていた。腕にも多少の覚えがあり少々込み入った事情の現場にも派遣できる有用な人材としてギルドにも認識されている。


「綺麗に解決とまではいきませんでしたが双方の落としどころを模索して何とか揉め事は収まったんです。その帰り道にアルベンが少しスラムの現状を見たいっていいまして。情報収集もかねて二人で手分けしてスラムのテント街見て回ったんですわ。そしたら集合場所にもどるとあいつはもう怪我をしていました。後はギルド本部に帰るまでは特に何も。」


「・・・そうか。大体はわかった。それでニコラさっき噛み傷といったな。それは傷の様子を見て判断したのか?」


「はい。そうですね傷の感じは・・・」


そういうとニコラは自分の前腕にちょうど噛り付いた。アガサギルド長とガラシャはは突然の行動にギョッとしていたが


「こんな感じでした。改めて自分でやってみて思ったんですけど多分私ぐらいの背格好の人間が文字通り肉を噛み千切ったような傷跡でした。」


話を聞いていた二人は難しい顔をした。


「噛み跡ってんならわかるんだが食い千切られてるってのが穏やかじゃないよな。」


「それにニコラほどの体格の人間というのも不可解だ。男ならかなり小柄な部類に入るだろうし不振な人物をアルベンが懐に入れるとは考えづらい。」


ニコラはさらに続きを話す。


「それとこれはあくまで私の私見というか治癒術師としての意見なのですがとても直りの悪い傷でした。少なくとも見た目どおりの外傷ではないかと思います。」


「というと?」


「おそらく通常・・の治癒術では効果がかなり制限されるかと。」


できれば自分の手の内はあまりさらしたくないのだが何かおやな予感のしたニコラはできる限りの情報をこの場で提示する。


「私も経験がないのでよくわからないのですがまるで呪いでついた外傷を治療しているような感じがしました。」


「「・・・・・」」


二人の沈黙がこの場を覆う。


△▽△▽△▽△▽△


結局それ以上は収穫がなかったので今回は解散となった。


アガサギルド長は。


「もしかしたら似たような案件が教会にも届いているかもしれないので問い合わせてみる。」


といっていた。

ガラシャはそのままアルベンが寝ている治療室に向かうとのことだったのでニコラは今日は城に戻ることにした。せっかく抜け出してきたのだがなにやらキナ臭いのでおとなしくしておこうと考えてのことだった。


「あーあーせっかく上手く抜け出せたんだけどなー。」


彼女の独り言が午後の中ごろに差し掛かった帝都のひとごみにとけていった。







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