第四十二話「とある侍と動き出した事態」
帝都中心部・キャッスル・オブ・ロードエルメロイ
白夜宮内部
その場は多くの貴族が儀式の成功を祝い祝杯を交わしていた。
今も帝都に降り注ぐ光が精霊の祝福を証明するかのように降り注ぐ。
「・・・・・おかしいな。」
そんな中、ソウマは宮中のパーティーから抜け出して会場の一角にあるバルコニーにいた。
ミナは儀式が始まった時点で姿が見えなくなった。
おそらく浄化の儀式がとどかないところに逃れたのだろう。
それは想定していた。
「ソウマ殿?この様なところでいかがされた?」
第一騎士団団長アヴァロン卿が話しかけてくる。
「アヴァロン卿、ひとつお聞きしたい。」
「かまわんよ、何なりと聞いてくれ。」
「感謝する。この国の儀式のことです。
私が事前に聞いていた話では件の儀式は、帝都で起きる怪現象を沈めるための浄化を行うためのものだという話だったが今年も怪現象が起こっていたという報告は上がっていたのですか?」
「ん?ああもちろんだ。我々騎士団も何度か鎮圧のために出動しているし冒険者ギルドからも報告が上がっている。先月はついに帝都の貴族街にある古屋敷に悪霊が出て大変だった。」
アヴァロン卿は少し遠い目をしている。
「ありがとうございます。
ではやはりおかしいですね。
帝都に霊がいない。」
ソウマはバルコニーから帝都の街並みを見下ろした。
その目はどこかを見据えている。
「霊がいない?ソウマ殿は霊視の魔眼を持っているのか?」
霊現象は一般には視覚でとらえられないものが多い。
魔術で擬似的に見ることができるが霊を直接見ることができる人間はかなり限られている。
それこそ高位の司祭やその分野に卓越した魔術師などだ。
「普段は難しいです。ですがこれほど大規模な浄化の儀式を行ったている最中なら浄化された霊から放出された魔力で≪ラップ現象≫や≪イオン臭≫がするはずなのです。」
「らっぷ現象?いおん臭?聞きなれない用語だね?」
今までに聞いたこともない単語に困惑するアヴァロン卿だったがソウマの表情から大事なことを伝えようとしていることだけは読み取れた。
「この際専門的なことは置いておこう。何が起こっていると君は考えているのかね?」
「・・・何者かが霊現象の中核となる魂を集めています。これににた現象を私は見たことがある。」
「それは?」
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帝都某所 あまり裕福でないとある地区にて
そこには冒険者ギルドの人間が集まってきていた。
「・・・これは。」
路地の一角にある壁。
そこには光が浮かんでいた。
光は文字をかたちどっている。
それは魔術をかじったことのある者には馴染みのある文字だった。
魔法文字、魔術に影響を与える力ある文字。ルーン文字などと呼ばれることもある。
「・・・”下へ”?」
魔法文字は学んだことがあるものなら誰にでも読める簡単な単語だった。
しかしギルド職員には何故そんな魔法文字がこんなところに書かれているのかがわからない。
「・・・こっちにも文字が。」
虚ろな目をした兵士が壁に文字を書いている光景だった。
見張りをしていた兵士がまた一人帝都の路地へと消えていった。
そしてそこには誰もいない地下水道への入り口だけが残されていた。
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多くの霊魂が地面へと逃れていく
帝都で行われた浄化の光から身を守るために
今だ輪廻へと帰ることの出来ない怨念
それが帝都の地下へと集まっている。
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帝都中心部・キャッスル・オブ・ロードエルメロイ
白夜宮内部
儀式後の祝賀会。その会場で今の帝都に起きつつある異変を感じている人物が三人いた。一人はソウマだ。
そして残りの二人は互いにてのとごく距離にいた。
(いいぞ!感じる!地下へと霊を誘導することには成功した!あとは≪あの方≫から頂いた霊珠が魂を吸収しつづければ!)
熟成された年代物のワインの注がれたグラスを手にし二人は向かい合っていた。
「アルドメア卿これは一体なんだ?何が起こっている?」
帝都に起こっている違和感を肌で感じることが出来るのはこの場において帝都そのものを護る結界と魔術的な繋がりのある皇帝アルバスそして・・・。
「陛下わかりませんか?儀式は確かに成功したのです!」
「ん?そなた何をいっている?」
皇帝には多くの側近がいる。
その中の一人にしてこの帝国の魔術師の頂点に君臨する魔術師技師長メイザーズ・フォン・アルドメアが不気味な笑みを浮かべていた。
「始まりますよ!」
この騒動の首謀者。




