プロローグ 「夢」
初めての投稿の上、自分の世界に入り込んで書いてしまうタイプです。
おまけに誤字脱字がひどいことが予想されますので気長にお付き合いください。
この話は剣と魔法の世界を駆け回る冒険ファンタジーです。
はやりモノのファンタジーの影響をちょくちょく受けるかもしれませんができるだけ自分の中のオリジナリティーを追求できればと思っています。
ちなみに最近流行の異世界転生、異世界転移はありません。
まずはオープニングをご覧ください。
ではよろしくお願いします。
それは多分『夢』なんだと思う。
私は夢を見る。
夢の中で私は玉座に座って『あの人』を待っている。
身にまとっているのは黒を基調とした豪奢なドレスだ。
手には流星をイメージさせる形状の銀の杖を持っている。
夢の中の私は広い空間の最奥で巨大な玉座に腰掛けて広間の反対側にある重く大きな扉が開かれ『あの人』が入ってくるのを今か今かと待ち望んでいる。
そして時は来た。
広い空間『謁見の間』の奥にある巨大な扉が開かれた。
心に満ちる至福が伝わってくるのがわかる。
『待ちわびたぞ』
その声は今の自分自身より大人びた女性の声だった。
そして夢の中の私は立ち上がる。
立ち上がった私の目の前には・・・夢の中の私・・・《魔王》と対峙する存在がこの場にはあった。
短い金髪を跳ねさせた癖のある頭。
強い意志を宿しここまで戦ってきた翡翠色の瞳。
青を下地にし金の意匠の施された鎧。
手に握られた剣は神々が作り出したとされる伝説。
魔王が放つ刺客をのけ、ここまでやってきた少年。
多くの人々を共感させその心を癒し励ます勇気。
人々は渇望し愛を注ぐ。
彼こそはまさに『勇者』と呼ぶにふさわしい存在だった。
私は『夢』を見る。
(・・・・・う~んやっぱり納得いかない!どうして私が魔王で勇者様と睨み会わなきゃいけないのよ‼)
・・・・・・・。
多分これは『夢』だ。私の見る『夢』だ。
だってこの私は私じゃない!まだこんなに背が高くないし魔法だってろくに使えない。
多少体を鍛えたりはしているがそれでもあの勇者が向けてくる闘気を正面から受けられるほど強くはない。
だからこれは『夢』だ。
(そうとでも思わないと納得いかない!)
なによりまだ成人の儀を済ませてもいない十四になる少し手前の私がこんなに成長してしまっている。
だからこれは『夢』だ。
でも、なんとなしにわかる。これは・・・いつか起こりえることなのだと。
そう私は感じた。この光景を覚えておかなくてはいけないと。忘れてはいけないと・・・
そしてこの光景の輪郭が崩れだす。
私はその光景を目に焼きつけ覚醒するのだった。
△▽△▽△▽△▽
私は目を覚ます。
見上げた先にあるのは寝台の天蓋。
全身に汗をかきどうしようもない有様になっていた。
分厚い羽根布団をのけ、寝台から降りると月明かりの差し込む窓辺に向かう。
窓を開けるのはためらわれた。今は秋の終わりで冬の初めだ。
風が入れば部屋の中はたちまち凍えるような寒さになる。
家具のなかから手ごろの拭き布を取り出し顔の汗をぬぐった。
時計を確認するとまだ4時を半分回っていない。
この程度のことでこんな早い時間に侍女の手を煩わせるのは忍びない。
窓の外には明かりの落ちた城下町が広がっている。
私は考える。なぜあのような夢を見るのだろうか?
日に日にその間隔は短くなる。夜を迎えるたびに私は・・・・
自身が魔王としてそこにある夢をみる。
この世界には魔王がいた。
もう五年ほど前の話だ。
人間の領土を切り取り、魔族たちの世界を作り出そうと戦争を仕掛けてきた魔王と人々の期待を一身に受け最前線で戦った英雄。
両者は戦い。
そして魔王が倒れた。
統率されていた魔族と魔物たちは霧散し各地に逃げ去った。
人々は魔族との争いに勝利したことに喜びこれから先の平和で豊かな生活を夢見た。
しかし、その夢はいまだにかなったとはいえない。
魔族が暗躍し蔓延していたはずの貧困や飢餓は改善されていない。
魔王軍との戦いで団結していた人々の心はすでに離れ始めていた。
国同士が互いを牽制しまさに人同士の争うが始まろうとさえしていた。
「これじゃあ魔族との戦争があったほうがまだましだったわね。」
戦争があったころは各国が手を取り合い、物資を分け合い、助け合っていた。
星光教会の法術では治療の難しい病気の研究がなされた。
軍備のための予備兵が雇用され職を得ることができた。
戦いが終わってからはひどいものだった。
国家は徐々に連携を失い勝ち取った土地を奪い合った。
最近はそれがようやく落ち着き、しかし今度は大規模は軍縮が始まった。
考えなしに軍備を増強した結果貴族たちは自分の軍隊を維持できなくなったのだ。
「今月だけで二千人の難民が帝都に押し掛けてきたわね。」
こんな城の片隅で独り言をいっていても始まらないとわかっていても頭を抱えたくなる。
城に住まうものとして、将来政治にかかわるものとしてこの国の未来を憂う。
しかし私には何の力もないのだ。
兄達のように国の貴族や軍との交流もなく、姉の一人のように城を出る覚悟もなかった。
この国の創設より千年がたったと言われている。
歴史の古い国だ。
私もいずれどこかの大貴族のもとに嫁ぎ国力を強めるための道具としてこの国に使い潰されるのだろうか?
それはまだいい。
だが恐らくそれは時間稼ぎにしかならない。
籠の鳥のような生活をしている私のもとにさえ暴動と反乱の噂が聞こえてくる。
国の重鎮たちは言う。
”勇者さえいれば”と
私が彼に始めてあったのは九歳の時だったと思う。
謁見の間でただ一人、父の前にかしずくことをしなかった騎士がそのひとだと侍女が教えてくれた。
これから魔王を討伐しに行くのだと・・・
私は思う。
彼にこれ以上何を頼るのだろうか?
彼は人類がもっとも恐れていた障害を取り除いて世界を救ってくれた英雄ではないか?
その彼に魔王を打ち倒した刃を暴徒と化した市民や農民に向けろと言うのか?
「お門違いもいいところね。」
すっかり目が覚めてしまった。
東の空はまだくらい、部屋の時計まだ日が昇るにははやい時刻であると告げている。
私には何が出来るのかしら?
最近私は考えるのだ。私に、ただの皇女でしかないこの私、”ニコルジア・セイン・アルト・オルデンロード”になにかできることはないのかと。