表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王女と侍女  作者: 嬉遊
1/3

1,侍女の秘密


「え……あたしが……侍女として、姫さまにお仕えするのですか……?」

女官長であるアリアさまは、にっこりと笑った。

「ええ。年が同じこともあり、姫さまは貴女をお気に召しているようですよ」

「姫……さまが……」

表情は、初めての大仕事で戸惑っている侍女を繕っていたが、内心拍手喝采だ。

まさかこんなに早く、あの王女を殺す機会が訪れるなんて……。

「今日にでも来て欲しいとのことでしたから、しっかり仕事して下さいね」

そんなあたしの本当の目的も知らず、アリアさまは王女の部屋に案内していく。

……あたしの本当の仕事は、王女を殺すこと。

物心ついた時には既に、そういう殺しを商売とする一族の1人であり、殺しの方法を習っていた。

10歳の頃から殺しを始めて、6年たった今では、あたしは一族の中ではちょっとした有名人だ。

通称《血塗れのシェリル》とか、《サディストシェリー》とか……。

要するにあたしは、じわじわと苦しめる殺し方を好むのだ。

そして、今の標的は、エスティニア王国の第一王女である、アルツェルナ・ローザ・リア・エスティニアだ。




「あたし……いえ、わたくしは、本日から姫さまにお仕えすることになりました、シェリルと申します」

部屋で2人っきりになってから、あたしはそう切り出した。

黒い頭をぺこりと下げる。

「……………」

……無視か?

しばらくたっても返事がくる様子はないので、もう一度。

「あの……」

「私は」

やっと反応があった。

王女は緑色の瞳を細め、ゆったりと笑った。

「知ってると思うけど……アルツェルナ・ローザ・リア・エスティニア。親しい人達にはルーナって呼ばれてるの。だから貴女も、ルーナって呼んでね」

アルツェルナの最後をとってルーナか?……この王女らしい愛称だ。

「ルーナさまで……?」

「ううん、呼び捨てがいいわ。ルーナって。」

「ですが……」

王女は茶目っ気たっぷりにウインクした。

「いいじゃない。2人きりの時ぐらいは。ね?」

お願いっ!と手を合わせて言われたら、折れるしかないだろう。

「……っ、わかりました。2人きりの時だけ、ルーナとお呼びします」

「うんっ!そうして頂戴っ!」

すると、ルーナはふいに小さく首をかしげた。

透けるような金髪がきらりと光った。

「貴女は?シェリルだと……愛称はシェリーかしら?」

「はい。そうですね……」

まさかサディストシェリーですとは口が裂けても言えない。……王宮から追い出されちゃうかも。

「じゃあシェリーって呼ぶわね!あ、それから、無理に“わたくし”とか言わなくても良いのよ?“あたし”で全然構わない」

「え……はい。すみません……」

さっきあたしが言い直したから、気にかけてくれていたのかも……。

……なんか、結構いい人っぽくて、拍子抜けした。

何故、依頼人は、この王女を殺すことを望んだのだろう。

……なんて、考えても仕方が無い。あたしのような下っ端には、そんな事知る権利はないのだから。

「シェリー?どうしたの?ぼーっとして……」

「えっ、あっ、いえ。何でもないです」

……らしくない。こんな……人を殺すことをためらうなんて……。

大丈夫だ。多分、この程度の王女なら、すぐに殺れる。

「姫さま……」

「ルーナよ」

「……失礼しました。ルーナ、これからよろしくお願い致します」





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ