フォーナスとエミールの調剤薬局 1年目 @1
第3章はエミールの幼少(本編から7年前)で、エミールの調剤薬局が出来るまでの話です。
薬ネタは頑張って仕入れたよ!
草原に流れ込む風は草花を踊らせ、木々の会話を運んでくる。
木々の囁きはもうすぐ春が来ることを知らせ、冬に蓄えた養分を惜しみ無く使い始める。
そんな自然豊かな中に一人の少女が家族とほのぼの暮らしていた。
名前はエミール・アロル 今年で10歳になるまだまだ可愛い女の子だ。
「エミール。学校を卒業したけれど、これからどうするの?」
「んー 私は今したいこととか無いからねー どうしよっか」
木の棒を削り、大きめのヘラを作る私は、実はちょっぴりだけどおばあちゃんに興味があった。
「お母さんは魔法とか使えないの?」
「使えないわよ。おばあちゃんは特別なの」
小刀で削られたヘラは細かいバリがあり、滑らかになるように仕上げる。
自分の身長位はあるだろうか、このヘラはだんだんとオールに見えてきた。
「なにもやること無いなら、おばあちゃんの所に行って魔法の勉強でもしてみたら?」
「それ良いかも。」
小刀を鞘に仕舞い、急いで部屋にもどる。
最低限の荷物を袋に詰め込み、台所に走る。
テーブルに乗せてあるパンのバスケットから二つパンを袋に詰め、さっきまで作っていたヘラと愛用の小刀を持ち、家を飛び出す。
「エミール。そんな格好してどこへ行くの?」
ベランダから顔を出すお母さんに私は一言
「おばあちゃんの所に行って来るね!」
それだけ言って足早に港町でおばあちゃんの住む町へ向かった。