嫌な物はオブラートに包んじゃえ? 三包
井戸から水を汲むみ、ボールに少しだけ水を注いだ私はさっきまで粉まみれだったデンプンで作った薄く少し乾燥した生地を水に浸す。 白濁したデンプン生地は段々と水に馴染み溶けていく。
水でここまで溶けるとしたら、服用して、吸収される頃には跡形もなくなくなっているだろう。
「まさか、止血剤を作るっていた時の失敗作がこんなところで役に立つとは……」
楕円系に整えた生地は薬包紙と同じ折り方ができるか試してみるが……
バリッと折れてしまった。
「うーん……どうしたら良いのかな……?」
デンプン生地はだいぶ放置されていたのか、かなり乾燥していたようだ。
そこで、エミールは大釜に馬鈴薯を投げ込み、またデンプンを分離し始めた。
「ぐつぐつーー」
沸騰しない位の火加減で、ぐるぐるーとかき混ぜずにグラグラする大釜を見つめる。
馬鈴薯は段々と崩れていき、数分もすれば分離が完了する。
実際この分離法はどのような原理なのかとか、エミールは知らない。それどころか、この大釜で作った物は料理で使えるのかが未だに分かっていない。
薬ならまだしも、料理をこの釜でしようとは思わないのだけど。
そんなことを考えていると、大釜のそこには白い塊が出来ていた。
「よーし 分離完了!」
玉網でデンプンをすくい取り、作業台に載せる。
それを手際よく処理をしていき、デンプンを楕円状に形を整える。
「多分、前作った奴は厚みがなかったからすぐに折れてしまったんじゃないかなー。水分量も少なくなってすぐにカサカサになっちゃうものね」
ころころと転がし、厚さを均等にしていく。
普通の人がみたら、パンやパスタでも作っているのかと思われるが……
「こーろこーろー」
ぐしゃ………
全ての作業を終え、日陰干しをする。
今回は、少しでも乾燥しすぎないように乾燥台の横に椅子を置き、そこで本を読みながら店番をして、乾燥状態を見ることにした。
今日読む本は「野草大全集」なる本。 日々薬草の勉強は欠かせないのだ。
「天草って海藻の一つなのは知ってたけど、赤い色してるんだ。それで乾燥したりなんだりすると、この黄色っぽい色になるのか……これなら殆ど流通してないだろうな……」
他にも、気になった植物は色々とあったが、どれも希少で高価なものだと記載されている。
お客さんもたまにしかこないこの店では大量入荷なんてできそうになさそうだし。それに失敗した時のダメージが大きそうっていうのも手を出さない理由なのだけれども。
「家に生えてる草花は簡単に栽培できるものばかりだからね。それでも、包帯とか大量に必要なものは自家栽培できてるから利益がそのまま出るのはいいね」
とはいえ、仕入れなんて一つもないのがこの「エミールの調剤薬局」なのだが……
一年を通して、温暖な土地柄なのか、綿花の栽培は容易で、軟膏の材料のみつろうなどは裏庭に養蜂箱もある。消毒液などの材料となる植物も色々と栽培している。
「ふあぁぁー 眠いなぁ……」
そろそろデンプンもいい頃合になったか確かめる。
試しに薬包紙を包む様に折っていく。
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