外用消炎鎮痛剤は森の中? パート3
お店から離れ、約二日。
気候は徐々に暖かくなり、目的の土地まではもう少しだ。
ルーアはだいぶ私に慣れて、いろいろ聞いたり話しかけてくるが、自分の事は思い出せないで居る。
「エミールお姉ちゃんはくすのきって物を探しているけど、どんなもの?」
「大きな木だよールーアよりもずっと大きな木だからびっくりするかもね!」
はわわわー と驚くルーアは表情も豊かになり、安心している。
クスノキから抽出される油を乾燥させ、粉末に仕上げる。
防虫剤などにも利用されている。
微量の服用なら問題ないけれど、毒性はある。
「くすのきは大きいけど、葉っぱは私にも取れるのかな?」
「大丈夫だよー 肩車してあげるから」
「エミールお姉ちゃんは優しいし、大好き!」
「うん。 ありがとー!」
軽く頭をなでなですると、満面の笑顔をみせる。
私も自然と笑顔になる。 ルーアは凄く可愛いなぁ♪
「あーっ! だんだん木が大きくなってきたよ!」
目的地までは後少し。初めて訪れる土地なだけに不安とワクワクが混ざり、変な気分だ。
「この地方は特別で秋は暖かく過ごしやすいし、冬は暑い 私が住んでいる街とは真逆なんだよ」
「へー?」
植物達の成長も同じで、この環境に合わせる様になっている。
気温も徐々に上がり、暖かくなってきた。
今まで見ていた木々も枯葉から若葉に移り変わって、春を感じさせる。
黄昏を超えた世界の木々は暗く、濁っている葉っぱが多くある。特に広葉樹林は黄昏前より色が汚くなったと聞く。
それでもこの辺の木々の葉は透き通るような緑で、見ているだけで心が浄化されるようだ。
黄昏の被害が少なかったのか、特別な地域なのだろうか……
「エミールお姉ちゃんー くすのきってどんな形なの?」
「葉っぱの形? 革みたいに硬くて、つやが出てる葉っぱかな? あと、葉先は尖ってるから気をつけてね?」
「つや??」
「うーん……つやつやしている? すべすべ? なんて言えば分かるかな……?」
クルッと私を見るとにこにこした顔を見せ、
「見れば分かるかなっ!」
なんて、初めてのものを楽しむ気持ちが凄く伝わってきた。
私もにっこりと返し、森をどんどんと進んでいく。
目的の場所まではそう遠くはないと思う。