フォーナスとエミールの調剤薬局 1年目 @4
港の近くには、小さな森が広がっている。
調剤いで必要な薬草の一つ、ハッカが自生している丘が森の向こうにあるという事で、私は竹で編まれたカゴをぶら下げ今向かっている。
すっかり町は小さくなり、海の青さも段々と遠ざかっていく。
「今日はお天気だなー♪」
海の青さを映す空は、青く、黄昏を迎えていたオレンジの世界が物語の中の事ではないかと、今でも思っていて。
日陰と日向が映し出す森の芸術は季節により、その色を変えて行く。
森には、こごみやコシアブラなどの山菜が私を待っていた。
色もよく、丁度よい固さだ。
「コシアブラは天ぷらかなー? こごみは茹でてマヨネーズが定番だね!」
晩御飯に必要なだけ、山菜を摘んでいく。
春の味覚の一つだ。
「たろっぺやらワラビもあるかな?」
いわば、自然の畑見たいに群生する山菜達に、本来の目的も少し忘れ、山菜摘みに夢中になっていた。
小さなカゴに半分ほど摘んだ山菜を詰め込み、やっと丘に上がったのはお昼過ぎだと思う。
海からの風が心地よく、潮の匂いに混じり、スーっと鼻を通す匂いがした。
「いい匂い……」
丘に広がるハーブは、少しだけ甘い香りもする。
お花畑ならぬハーブ畑だ。
「ご飯食べたら少しだけ景色を眺めようかな♪」
丘の向こうには青い海が広がっていた。
カゴからコッペパンと麦芽飴を取りだし、麦芽飴をパンに塗りたくり、たべる。
「んー?んー……」
おばあちゃんが好きな食べ方なのだが、私には微妙なラインだ。
当時は貴重だったのかな……
おばあちゃんの過去では考えられないほど、今は豊かになっているということなのかもしれない。