妹の事情
今回だいぶ短いです。
屋上につながる階段の踊場。屋上は基本開放されないのでここは人のあまり来ない穴場だ。いつまでも教室の入り口でしゃべるのも邪魔になるのでここまで移動してきたのだ。
私は屋上につながる階段の一番下の段に腰掛けひざを支えに頬杖をついている。兄と城戸さんは立っているので私は自然と二人を目線だけで見上げるような形になる。兄が早く話せとばかりに私の方をガン見してきて居心地が悪い。こっちみんな。城戸さんはというと階段の手すりにひじをつき口元を手のひらで覆ってあらぬ方向を見ている。あんたはいったいどこ見てんだ。
「で、何の話だっけ?」
いい加減鬱陶しくなってきて話を切り出す。
「俺のおかげで酷い目に遭ったってどういうことだ?」
兄のその言葉に私は面倒くさいとため息をひとつつくと朝あった出来事を話し出す。話が進むにつれて次第に顔色が悪くなっていく兄とその兄を冷めた目で見つめる城戸さん。何この状況。全部話し終えると兄が私の肩をつかんでガクガク揺さぶってくる。
「お前それで手を握られた以上のことは何もなかったんだな?」
なす術もなく頭がぐわんぐわんと揺すられる。やめて吐く…。
「総司。雅白目むいてるから。いい加減離したげて。」
私が揺さぶられすぎて気持ち悪くなってきたところで城戸さんから待ったがかかる。助けるならもっと早く助けろや。私はほうほうの体で兄に言葉を返した。
「何も無いよ。しいて言うならどうでもいいようなメールが来るくらい。」
再び兄が私の肩をつかもうとしたところで城戸さんが兄を押さえ込み口を開いた。
「雅、会長とアドレス交換なんかしたの?」
「してないよ。勝手にお兄の携帯からアドレス控えてたの。」
それを聞くと今度は哀れみをこめた目で兄を見つめる城戸さん。一体何だってんだ。するとそのタイミングでどこからともなく聞こえるダ○スベ○ダーのテーマ。あわてた様子で携帯を取り出す兄。お兄の着メロかよ!
黙ってその様子を見てると彼は携帯を見て徐々に顔を引きつらせていく。最終的に真っ白に燃え尽きた。兄は死んだ魚の目をして「終わった、俺終わった」と延々とつぶやいている。えっこの人いきなりどうしたわけ?今までもたまにこういうことはあったけど何回見てもどん引きだ。兄の隣で木戸さんもどん引いている。この件に関しては気が合いますね城戸さん。これに懲りてお兄からは手を引いてください。切実に。
そんなことを考えていると今度は私の携帯が震えだした。心当たりを思い出してげんなりする。これはあいつだ変態バ会長。携帯を開くと案の定差出人は変態バ会長。返事をしてもしつこかった…。いい加減あきらめてくれ。こんなことなら最初のメールからシカトしたらよかった。面倒くさい。
メールボックスを開くとやたらデコデコしい文体で今何してるのといった内容のメール。イラッとして少し乱暴に携帯を閉じるとタイミングを計ったように予鈴が鳴り響いた。私は勢いづけて階段から立ち上がり兄に声をかける。
「ほらお兄、予鈴鳴ってるよ。いつまでも突っ立ってないで教室戻ろう。」
真っ白な兄を促し教室へと足を向けた。なんかこれ昼休み前より状態悪化してるよ…。なんか知らんが元気出せよ。そんな思いをこめてお兄の肩を叩いた。
前作および1,2話を読み返し雅の思い込みの激しさに作者がどん引きました(笑)こんな子じゃなかったはずなのに…誰かこの子の暴走をとめてorz
兄にメールを送ってきたのは前作登場の魔王です。兄にフルボッコフラグが立ちました。