05 The legend that is presented again ~再演される伝説~
この作品は時間が結構飛びまくります。注意してください。
「腹、減ったな…」
(ホントずいぶん慣れたな「オレ」…)
あれから約一ヶ月。何度か禍津狂神に襲われたがとりあえずはオレは元気にやっている。最近は刀の扱いも慣れてきている………と思う。衣・食・住の心配も、金の心配もとりあえずは無いから暮らすに困る事は無い。………まぁその金の半分ぐらいは宝石なんかに変えているからあんまり「金?捨てるほどありますが?」みたいなことにはならないが。
さて現在だがまたも禍津狂神に狙われ、姿を隠している。
(正直に言えば逃げたいんだけどな…)
(ケケッ!なら逃げようZE☆)
(それやって苦労した事、忘れたとは言わせんぞ…!)
実は二度目に巻き込まれた時にスサノオからだいだい禍津狂神がどの辺りにいるかを聞き出し、基本的に逆方向に逃げていた。………のだが盛大に失敗した。その後変化した空と消えた人々は戻らなかった………三日後オレが禍津狂神を殺すまでは。その後数回に分けて調べてみたがとんでもない事が分かった。
空が紅く染まり、人々が消える現象は禍津狂神が食事を行うためのエサ場の証明だったのだ。さらに憑神使い(この呼び方はオレの自称だ。念のために言うと憑神使いはオレ以外にもいる)はこのエサ場を創られる時ある程度近くにいると巻き込まれる。どの程度近くにいると巻き込まれるかは知らないが。
知らなかったからしかたないと言えばそれまでだが恥ずかしい事この上ない。
(知らなかった以上気に病んでもしかたないぞ)
(お前に言われると何かムカツク)
(恐悦至極で御座います。ケケケッ!)
………さて、気分を変えて問題に当たるとするか。まず隠れている理由をハッキリさせておく。今回のターゲットはいつもみたいにはいかない。補足をとして言うと、いつもは先手必勝で相手の急所だろう頭を狙う。今回もそれが有効なのだろうが…。
「さすがに頭が8つ、尾も8つもある蛇なんてどうすれば…」
(………それ冗談で言ってないよな?)
「何か良い案でも?」
そう言った瞬間スサノオが呆れた声を出した。………何かバカにされている気がする。
(バカにしてんだよ。頭が8つ、尾も8つある蛇なんて1匹しかいねぇよ)
(1匹いる時点でおかしいけどな)
(うるせぇバカ。「ヤマタノオロチ」でまだわからねぇとか言わないよな?)
ヤマタノオロチ………?ゲームで聞いた事あるな。
(………あぁうん、良く分かった。お前に憑いてる神に対する知識がどれだけ無いのか)
(何だよその言い方)
(普通ならヤマタノオロチで気付くもんだがな…。まぁ良い。オレが言いたいのは………げ!)
(何だ)
よ、「げ!」って。
そう聞こうとしたがそんな暇は無かった。何故なら
サワサワサワ…
「……………」
頬を生暖かいモノを当てられて鳥肌が立つ。恐る恐る後ろを向く。そこにいたのは
「う、ぁ…」
(タイミング悪い、な)
チロチロ、チロチロ
噂をすれば影。話に出ていた八頭八尾の蛇、ヤマタノオロチがそこにいた。
「シャアァァァアアア!!!」
「うあぁぁぁああああ!!!」
(おー!中々早いなぁ)
「余裕シャクシャクなのがさらにウゼェ!!」
なりふり構わず必死で逃げた。………が中々距離が離れない。
「だー!また命の危機かよ!?」
(ケケケッ!ちゃんと神の事を調べないからだ。とりあえずそこのビンを床に叩きつけろ)
(りょ、了解!)
オレは言われたとおり近くにあったビンを床に叩きつけた。すると中に入っていた液体が床に飛び散った。するとヤマタノオロチがその液体に反応し動きを止めた。その間にさらに距離を取るため全力で走り去った。
「ハァハァ…ハァ…。あの液体は?」
(酒だよ。たぶんだけど日本酒じゃないか?)
「………何で酒?」
思わずそう聞いた。ここは食料品売り場だから気を引くなら別の物でもできると思ったからだ。答えは…
(酒はヤツの好物だからな)
「そ、そうですか…」
(…ちょうど良い。オレの言うとおりに動いてくれ)
☆★☆★☆★☆★☆★
「…これで大丈夫なのか?」
(たぶんな)
そう言われて、もう一度用意した仕掛けを見る。そこには一般家庭ではお目にかかれないような大なべが8つあった。なかにはアルコール濃度が高い酒が入っている。
(あとは「オレ」が女装してくれれば…!)
「冗談じゃねぇ!!」
こんな濃い顔の男が女装なんてやったらギャクキャラになるだろ!!
そう意味を込めて思いっきり叫んだ。男の娘は見目麗しいから許されるのである。オレみたいなのがやってみろ。この世の終わりだ。
(言いたいことは分かるが静かに頼む)
(………分かったよ)
言い出しっぺが注意するなと言いたいが事実なので静かにしておく。しばらくすると…。
(き、来た…)
(ちゃんと隠れてろよ)
ヤマタノオロチが現れた。オレは物陰から様子をうかがう。
(警戒してるな)
(まぁ当然だろ。………すぐに解くと思うが)
そうスサノオが言った。しばらくすると言った通りに警戒を解き、酒を飲み始めた。
(頭から突っ込んで飲んでるぞ…)
(酒好きだからな、あの駄蛇)
(そもそも何でこんな事を?)
オレはそう聞くとスサノオはスサノオのヤマタノオロチ退治の話を簡単に説明してくれた。
(………で、酔いつぶれて寝たところを襲って退治し、きれいな嫁さんをもらってめでたしめでたし。…って話)
(へぇ~…。って今の状況と似てるような…)
(そりゃ話になぞってやってるか…
ズズゥン…!
…らな)
話をしている最中に酔いが回りヤマタノオロチは寝てしまった。オレは隠れるのをやめ、近づいていく。
「で、これで終わりじゃないんだろ」
(当然だ。最後の仕上げとしてそいつを切り刻め)
オレは言われたとおりにヤマタノオロチを切り刻んでいく。あぁ命を奪う事に慣れてしまったオレ自身に恐怖する今日この頃。そんな事を考えつつ剣を振る。すると尾の部分を斬ったとき異変が起きた。
バキンッ!
(おっ!)
「ゲッ!?」
折れた。折れてしまった。こんな事に関わるようになってから手に入れ愛用していた刀が根元からきれいに折れてしまった。
「どうするんだよコレ!?素手か!?素手でアイツらと戦わなくちゃいけないのか!?」
(HAHAHAHA!まぁ出来なくは無いから頑張りたまえ!)
「お前が斬れって言ったんだろ!!どうすんだよ!!」
(フハハハハァ!愉快愉快!………と、まぁ冗談は置いと)
「シネ」
(じょうだんがすぎましたごめんなさい。………それと最後の切り傷を調べてくれ)
くだらない事を言っているスサノオを黙らせる。そして言われたとおり切り傷を調べるとそこには…。
「き、金属?…ってか刃物??」
(引っ張り出してくれ。怪我しないよう気をつけろよ)
オレは切り傷から覗いていた刃物をつかみ引っ張り出す。………おいおい。
「今まで使っていたのよりデカいな」
(まぁ野太刀だしな。大事にしろよ)
そう言ってスサノオは静かになった。オレはその野太刀を軽く振って感触を確かめ、その場をあとにした。
こうしてオレはこの先ずっと愛用していく野太刀を手に入れるのだった。そしてこの時は知らなかったのだがこの野太刀の銘は「都牟羽ノ太刀」。のちに「草薙ノ剣」とも「天叢雲剣」とも呼ばれる「三種の神器」の一つだ。
補足
スサノオのヤマタノオロチ退治ですが少し本来の内容と違うところがあります。
都牟羽ノ太刀は別名「都牟刈之太刀」とも呼ばれる天叢雲剣の前の名前です。あとこの小説では野太刀(MHの太刀みたいな刀)となっていますが本来は違います。
以上、補足でした!