04 The name of the power… ~その力の名は…~
お久しぶりです。………どうも一人だけのようですが。
「…また此処か」
『失礼だな、オイ!』
また黒い世界にいた。神はオレに苦難を与えたいらしい。
「とりあえず帰してくれ。オレは疲れたんだ…」
『おいおい、良いのか?知りたい事があるんじゃないのか?例えば…』
オレの正体とか
そう「オレ」が言った。
確かに「オレ」にいつ会えるか、もしくはこれが最後の出会いなのか一切分からない。なら聞ける事は今聞いた方が良い。
そう判断したオレは質問をするため口を開く。
「で、誰なんだお前。オレの別人格とか?」
『今はそういう形で落ち着いてるがな。「オレ」はオレの本当の名を知ってるはずだ』
「嘘つけ。知ってたらとっくにそれで呼んでる」
『いやいや、呼んだじゃねぇか。一度だけ、大声で』
「オレ」はニヤニヤと笑いながらそう言った。はっきり言ってぶん殴りたい。………しかし一度だけ?それも大声で?言っちゃなんだがオレは(表面的には)冷めた性格だと自負してる。正確に言えば無気力的と言った良いが…。そんなオレが大声?思い当たる節があるとすれば………。
………………………あ。
「…冗談だよな?」
『それは神のみぞ知るってね』
「寝言言ってと殴るぞ『スサノオ』」
…と言うわけだ。たぶん合ってる。さっきも言ったがオレは冷めた性格をしている。そんなオレが大声で思い当たる節があるとすればあの時しか思い当たらない。あのアドレナリンの大量分泌で起きたであろう興奮状態。その時オレは一人?の神の名を叫んだ。それが答えって事だ。
『おぉコワッ!そんなだからカノジョが出来ねぇんだよ』
「うるせぇよ暴れん坊!」
『ケケケケケッ!………とは言ってもオレは本物じゃないから名前だけなんだけどな』
「本物じゃない?どういうことだ?」
オレがそう聞くと「スサノオ」は驚く事を教えた。
『おいおい、まさか普通の人間程度の精神で神を宿す事が出来ると思っているのか?オレみたいな「分霊」って呼ばれる存在がいるから「オレ」はまだ「スサノオ」に乗っ取られずに済んでるんだぞ』
「の、乗っ取る!?」
『好む、好まざると係わらず、な。………とは言ってもオレは本来の分霊と比べて弱い存在だからもうしばらく大丈夫だが』
「…それを先に言えよ」
『ケケケケケッ!サーセン!』
……………。
『おいおい、何だその拳は(ニヤニヤ)』
「ほう…身に覚えが無いと…」
『無いなぁ。何かしたっけ?』
「そうか。なら…お話ししようか」
肉体言語で。
☆★☆★☆★☆★☆★
「ゼェ…ゼェ…ゼェ…」
『ケ、ケケ…。ホ、ホントにヤル奴がいるかよ…。あぁそこにいたな…』
「う、うるせぇよ…」
肉体言語を使って大いに語り合った。………が友情も達成感も生まれなかった。どうでもいいけど。
それより気付いた事を出来たのでその事を聞く事にした。
「神様なのに、何で、疲れてるんだよ…」
『言ったろ…。オレは名ばかりの神様だって。オレの存在定義は「スサノオ」より「荒岸怜士の別人格」に近いんだよ』
「んで、それが?」
『要するにスペックはお前と対して変わんないって事だ』
「あぁそう」
肉体的にも精神的にも疲れ果てたためテキトーに返事しておいた。
………起きた時にこの疲れが無いことを祈るばかりだ。
『ヒッヒッフー…ヒッヒッフー…』
「何を生むつもりだ…」
『せっかくボケたのにツッコミがおざなりだぞ…』
「無視しないだけマシだろう…」
『…フゥー。まだ聞きたい事があるんじゃないのか』
「あ、あぁ。…何だっけな」
話し合い(肉体言語)のせいで何を聞こうとしたか忘れてしまった。「スサノオ」の事、あの力の事、そしてあのバケモノの事。あと何だっけ…。まぁとりあえずは聞くか。
「あの力は何だ?」
『アレはな…』
「アレは…」
「スサノオ」は一度タメを作ってこう言い放った。
『知らん!!』
ドンガラガッシャーン!!!
『ケケケ!良いコケっぷりだな!』
「引っ張っといてソレかよ…」
『ケケケ!だがどう呼ばれているか知ってるぞ。確かこう呼ばれてたな、「憑依」って』
「ふーん。じゃあオレは『憑神』って呼ぶか」
『…せめて「神降ろし」とか』
「却下!」
『即答かよ…』
当然だ。別人格に「神降ろし」とかありえない。これでも敬意を払っているんだぞ。
そういう意味を込めて「スサノオ」を見る。すると理解したらしく何も言わなくなった。
さすがオレの別人格。
『褒めても何も出ないぞ』
「何も言ってないのに!?」
『ケケケッ!心を読んだからな』
読むなよ!
『神たる証明になるだろ?』
「だから読むなと…まぁ良いけど。………?」
そう返事をしたときある変化が起きた。「スサノオ」の姿が水面のように揺らいだ。
『あ~、もうそンな時間カ』
「時間?」
『お前がソろそロ起キる時間ッテ事ダ』
そういえばこれって夢みたいなものだったな。
聞こえ辛くなった「スサノオ」の声を聞きながらそう思った。
『時間が無さソうだシ最後の質問ヲ答エておクぞ。お前ハ「アの化け物は何なンだ」って事だロ?返事シなイで良いカらそのママ聞け。あレは堕ちタ分霊「禍津狂神」。元々憑依しテいた分霊ガ何かノ原因で憑依体かラ離レ、姿を変えたモのだ。憑依体から離れタ分霊は自身ヲ維持すルたメに人間ヲ喰らう。喰エば喰ウほど堕チテいク、最後ニハ「禍津狂神」にナリ何ノタめニ人間ヲ喰らウノか忘レル』
おっかない話だな…。でも聞きたいのはそれだけじゃないんだが。オレが聞きたいのは「鐘が鳴ったあとの異変」もあるんだが。
そう思っていると聞きづらい声で答えを言った。
『ソッチニツイテハ知ラン。自分デ調ベロ』
「投げやり!?」
その発言にツッコミをした直後さらに変化が起きた。
「何だ?……ッ!?」
遠くで急に閃光を放たれ、思わず目を閉じる。そして気が付くと…。
☆★☆★☆★☆★☆★
「………あさ?」
窓から光が差していた。オレは一言だけつぶやいた。
「………寝た気がしない」