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第7話:「無人島に何を持っていく?の正答は誰のためか」


「無人島に何か一つ持っていけるとしたら、何持ってく?」


「ライター」


「えっ、もうちょい夢ない?」


「夢じゃ生きられない。火がなければ煮炊きも殺菌もできない。何より夜が怖い」


「いや、わかるけどさ。もうちょい、こう……たとえば本とか音楽プレイヤーとか」


「お前、サバイバルと修学旅行の区別ついてる?」


「じゃあ、俺が“お気に入りの小説”って答えたら即バッサリ?」


「即バッサリ。“紙”として使うなら可」


「……その小説の登場人物泣いてるよ、今」


「登場人物は死なない。“物語”が死ぬ」


「なんか言い回しが刺さるんだよ、毎回」


「お前は何持ってくの?」


「俺は……うーん……最初はスマホって思ったけど、充電できねーなってなって、結局“音が鳴る何か”が欲しいかも」


「意味は?」


「音って、人間の気配みたいじゃん。何もないとこに音があると、ちょっとだけ落ち着く」


「なるほど。“孤独に耐えるための人工物”ってやつね」


「そう。無人島って、“誰もいない場所”じゃなくて、“誰にも見られてない場所”だと思うんだよ」


「視点の喪失か。いいなそれ」


「だから、必要なのは“生きるための道具”より、“自分がまだ人間であることを思い出せる何か”なんだと思う」


「じゃあ、正解は?」


「え?」


「“無人島に何か一つ”の問いの正解。“人間としてのアイデンティティを保つ道具”なのか、“物理的に生存を確保するツール”なのか」


「それは……人による、って言いたいけど……」


「違う。“問いを出す側”によるんだよ。これは、“お前の性格を見たい”って意図で出されてる質問だ」


「つまり、俺が“お母さんの写真”とか言ったら、そういうキャラ認定される?」


「そう。“情に弱い”“メンタル重視”“実戦では役立たない”ってタグが貼られる」


「じゃあ、お前みたいに“ライター”って答えると?」


「“冷静”“実利派”“夢がない”って思われる」


「夢がない、はかわいそうじゃない?」


「でも実際、夢じゃ火は起きない」


「……ちょっと納得してしまった自分が悔しい」


「じゃあさ、逆に無人島から戻ってきたとき、“ああ、これ持ってってよかったな”って思えるものって何だと思う?」


「……“自分のままでいられた感覚”じゃないかな」


「それ、持ち物じゃないな。“誰かとの記憶”かもね。いないけど、ずっとそこにいるようなやつ」


「……結局、“人”が必要なんだよな」


「そう。だから私たちは、“無人島”という名前の社会に、人間の形をした火種を探し続けてるのかもしれない」


「……今の、ちょっとカッコよすぎない?」


「だから忘れていいよ。お前の小説、もう一冊持ってっていいから」


「……じゃあ、二冊目はお前のノートな」



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