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【休載】このジジイ、最強につき!  作者: noah太郎
第1章 ジジィ、目覚める
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第31話 陰謀

薄い暗闇に灯る無数の光。

蝋燭たちの灯りが煌々と揺れながら作り出す光と影の合間で、神々しさを感じさせる椅子。その椅子に白を基調とした司祭服を纏った男が、静かに座っていた。椅子に背を預け、肘を置き頬杖をついて威光を放つその男は、几帳面さと狡猾さを感じさせる鋭い眼光を、目の前に立つ男に向ける。



「エウロさま……アルフロアが死にました。」



立っている男がそう告げると、椅子に座した男は眉をピクリと動かした。



「そうか。……で、例のアレは?」



アルフロアという人物の死を知らされたはずなのに、エウロと呼ばれた男は表情ひとつ変えず、だが不機嫌そうに自分がほしい言葉を欲する。

だが……



「それも消息不明と連絡を受けております。」



小さく舌打ちし、考え込むように目を閉じたエウロは、ため息と共に小さく呟いた。



「これも彼女が与えた試験と捉えるべきか……。」


「そうかも知れませぬが……そうなるとあの神託は……」



その言葉を聞いた瞬間、エウロは眼を見開き、男をジリッと睨みつける。



「彼女の意思は我らには計り知れない。ましてや、貴様などに……言葉を選べよ。」



立っていた男はその気迫に焦りを隠せず、エウロに詫びながら跪いた。その様子に鼻を鳴らし、エウロはゆっくりと思考を並べていく。


アルフロアは組織の中では確かに最弱だった。とはいえ、冒険者や帝国の騎士団に遅れを取るようなレベルではない。勝てるとするならば、帝国の皇帝であるエラルド。あの戦闘狂か、もしくは帝国騎士団の団長クラスなものである。だが、彼らがあんな辺境に出向くなど考えにくい。

では、アルフロアは誰に負けたのか。これは計画を揺るがしかねない問題だ、と。



「……で、調査はさせているのか?」


「ハッ……諜報部隊に例の村を調べてさせております。」



跪いている男は、エウロから発せられる怒りを感じ取ったようだ。下を向いたまま声大きく報告をするが、その声には焦りが残る。

だが、エウロ自身は特に気にした様子はない。



「……ふむ。で……?」



エウロからすれば、その問い方に特に意味はなかった。だが、部下からすれば、それは冷淡極まりないものに感じられたようだ。声を震わせながら報告を続けていく。



「は……はい。村の者たちはほぼ全滅でした。ただ、アルフロア様の指示で村を襲撃した魔物たちも、全滅しておりました。」


「……だからどうした?魔物のことなど今は関係なかろう。私が聞いているのは"アレ"の動向だ。」



エウロから、今度ははっきりとした怒りが溢れ出す。エウロにとっては、"アレ"が手に入らなかったことのほうがよっぽど問題なのだ。集落の全滅はもとより、魔物が全て死んでいたことなど知った話ではない。


あからさまに顔を歪めたエウロは、語気を強めて立ち上がった。



「あの"亜人の子供"に神託は降りたのだ。ならば、その足取りを掴むことが先決であろう。滅んだ村のことなどどうでもよい。早く探して見つけ出せ!」


「はっ……はい!ただちに!!」



エウロの希薄に気圧されて、部下の男はまるで尻尾を巻いた犬のようにその場を後にする。残されたエウロは大きなため息の後、ゆっくりと座り直して天井を見上げた。



「……シルガンマよ。おるか?」


「は……。こちらに。」



エウロの言葉を聞くや否や、目の前に外套を纏う男が1人、跪いた姿で突然現れる。



「上様……いかがいたしましょう。」



すでに状況を理解している口振りでシルガンマがそう尋ねると、エウロは安堵の表情を浮かべて優しく笑みを溢す。



「お前たちだけだ。私のことを理解して動いてくれるのは。」


「もったいないお言葉でございます。」



顔を上げることなく、シルガンマが謙遜の意を表すと、エウロは満足気に頷いた。



「アルフロアが死んだ。これは誠に遺憾な話であり、由々しき事態でもある。今はヴィータが亡骸の回収と村の調査を行っているが、まだ亜人の子の消息が掴めていない。」



そこまで告げると、少し悲しげな表情のままエウロは口を閉じた。その代わりにシルガンマが顔を上げる。



「件の亜人の捜索。そして、アルフロアの仇討ち……確かに承りました。」



全てを察して理解してくれる。そんなシルガンマの対応に、エウロは嬉しそうに口元を緩めた。



「頼むぞ……」


「御心のままに。」



シルガンマは再び頭を下げると、すぐにその姿を消す。後には静寂が残るのみ。エウロはゆっくり立ち上がると、椅子の後方にある大きな女神像の前へと向かう。そして、彼女の前で立ち止まると、その尊顔に眼を向けた。



「エリ様……もう少し……もう少しだけお待ちください。」



その顔には、まさに恍惚の表情が浮かんでいた。晴れやかな笑顔と親愛を向けた眼差しは、まるで恋人を見るかのような優しさと爽やかさに満ち溢れている。


それとは逆に、窓の外には真っ黒な暗闇が広がっている。そこに降り注ぐ黒雨は、まるでこれからの未来を想像させるよう静かに、そして、淡々と音を立てて。

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