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軌道  作者: 小雨
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週明け出社した僕に、嫌な話が飛び込んできた。

現在取り組んでいるプロジェクトのクライアントが、予算の大幅な削減を提示してきたというのだ。

予算の話は随分前に詰めて合意していたはずだし、相手が新たに提示してきた額は余りに少なすぎるものだった。

その日は書類の作成を終わらせなければならなかったのだが、そんな事を言っている場合ではなかった。

書類どころか、今まで積み重ねてきたものが無駄になってしまう可能性もあった。

僕は急ぎ客先に向かった。


結果から言えば、クライアントの内部の問題だった。

試験運用が始まってしまっているにもかかわらず、話が全て上まで通っておらず、承認段階で止まっていたそうなのだ。

結果、予算を大幅に削るよう言われたとの事だった。

クライアントの担当者である鈴木氏は簡単に事情を述べ、提示した金額で対応するよう要求してきた。

僕は、提示された金額だと予定されていた物には程遠いものしか納められない事を説明したが、とりあってもらえなかった。

先日発見されたバグの事も影響しているのかもしれなかった。

鈴木氏は不遜な態度で、さっさと席を立って行ってしまった。

僕は肩を落として客先を出た。

提示された予算内で収まるよう、再度提案しなおさなければならない。

鬱々とした気持ちで、僕は地下鉄に乗った。


帰社すると、そのまま部長に呼び出された。

当然小言を言われると思っていたが、案の定予想通りだった。

初めて任されたプロジェクトという事もあり、部長とはきちんと情報共有していたつもりだったが、部長は一方的に叱責した。

それだけの事をしてしまったという意識もあり、僕は黙って聞いていた。

同僚達が周りで聞き耳をたてているのがわかる。特に、予算が少なくなると言う話をしたときに、ざわつくのを感じた。

一通り小言を頂戴し状況を説明した後、ようやく自席に着く事ができた。

僕は荷物を置き、ひと息つこうと思い喫煙所へ向かった。


喫煙所には信人がいた。

「あ…お疲れ」

部署が変わってから、仕事中に信人と話す機会は減った。それほど話していないわけではないのだが、なんだか懐かしい気がする。

「小山さん、禁煙したんじゃなかったんですか。それにしても疲れた顔してますね…大丈夫ですか?」

このプロジェクトが始まった頃から、僕の短かった禁煙生活は終わりを告げていた。

僕は信人にも状況を伝えた。

「それ、どう考えても相手側の情報共有ミスですよ。こっちのミスも影響しているかもしれないですけど、それは小山さんの責任ってわけでもないですし」

初めて慰められた気がした。

「後で部長にちょっと相談してみようと思うんだ」

右も左もわからない中でやってきたが、このままでは先方を納得させる事は難しいような気がした。

今までがんばってくれていた社の人間にも申し訳ない。

「あの人怒鳴り散らすばかりで無能だから、相談するだけ無駄だと思いますけどね。相談するなら同じ部署の経験豊富な人の方がいいんじゃないですか。小林さんとか」

他部署とはいえ、部長を無能呼ばわりしてしまうあたりさすがだと思った。しかし確かに、部長の評判はあまりよくなかった。ホウレンソウを叫んでいるくせ、状況を把握しているとは言いがたい節がある。

もっとも、部長もオーバーワーク気味なのかもしれなかった。

「そうしてみようかな…ありがとう」

「いえいえ。あ、そういえば僕今週末からちょっと実家に帰るんですよ。おみやげ何がいいです?」

信人の実家はN県だった。地理があまり得意ではない僕は、N県の特産品と言われてもすぐには思い浮かばなかった。

「まぁ、なんか適当に。じゃあまた」

僕は憂鬱な気持ちで、オフィスへ戻った。


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