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軌道  作者: 小雨
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「小山さん、今日遊べなくなるかもしれない。また連絡しますよ」

信人がそんな事を言った。

騒ぐのが好きな彼がそんな事を言い出すのは珍しい事だった。

その日僕は、信人と鳩を見に行く約束をしていたのだ。


鳩を見に行く。


多くの人にとって鳩という鳥類はわざわざ見に行くものではなく、自然と目に入ってくるものだろう。

平和の象徴などと大層な呼ばれ方をしているが、現代においては駅前や公園に行けば大抵うろついており、それほどありがたさは感じない。

一般人にとってはわざわざ見に行くほどのものではないが、しかし彼の場合は少々違っていた。

純粋に鳩が好きなのだ。


僕はというと、別に好きでも嫌いでもなかった。要するになんの感情も抱いたことはなかったのだ。信人と出会ってから、僕は一般人が耳にする一生分の(あるいはそれ以上の)、鳩に関する情報を手に入れたと思う。

僕はその日、参加しているプロジェクトの会議が予定されており、あまり余裕がないスケジュールだったため了解した。

遊びに行くのは構わないのだが、僕も一般人と同じ。鳩にそれほど興味はないのだ。


信人とは同期入社だった。

彼は頭が良かった。単純に知識が豊富というだけではなく、彼が本当に頭がいいと思うのはその柔軟さにあるように思う。

頭が柔らかく、機転が利き、空気を読む。

このプロジェクトに信人ではなく僕が抜擢された時は驚いたが、何のことは無い、彼自ら打診を断ったそうだ。出世には興味の無い男だった。

信人は、独自の価値観を持っているようだった。

こういうタイプの人間は、物事の本質を理解しているんじゃないかと僕は思う。

世界と絶妙な距離感で付き合っていけるのだろう。


プロジェクトは難航していた。

試験運用に入った新ツールに、致命的なバグが発見されたのだ。ただでさえタイトだったスケジュールはさらに厳しくなり、開発者達は帰宅できない日々が続いていた。僕は開発組みほどではないにしろ、スケジュール管理や顧客への進捗状況の説明に追われ、終電で帰宅する日が続いていた。

その日も会社を出たのは、23時を回っていた。

週末であったため、ほろ酔いスーツ姿の男性をたくさんみかける。街はまるで、祭りか何かが催されているようだった。路地に目を向けるといたるところに吐瀉物が撒き散らされており、僕は顔をしかめた。

僕は飲み会というものがあまり好きではなかったし、よほど気を許した仲でもない限りプライベートで同僚と会うのも気が乗らなかった。

飲み会で楽しそうにしている同僚や上司の気持ちが良く分からなかった。

僕は何か食べて帰ろうかとも思ったが足が向かず、満員電車に押しつぶされそうになりながら帰宅した。

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