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物語は続くよ、世界の果てまでもEXTRA

「ふー、やっと終わった。そして始まった」

「……どうして、長い長い労働を終えて爆睡している時に呼び出すんだ? 叩き潰されたいのか?」

「それは勘弁してほしいな」

ピョン、ピョン、ピョン、ピョン。

「言っておくけど、ボクはキミの何倍も寝ずに頑張っているんだからね。爆睡出来るだけ恵まれてるんだって感謝してほしいものだ」

「知るか。こんなふざけた(ものがたり)を続けるのに飽き足らず、自分の分身を登場させるような自己顕示欲の塊には相応しい生活だ。それに付き合ってやってる俺に感謝してほしいものだ」

「何て無礼な子だろう。君なんていつでも退場させられるんだから」

「勝手にしろ。どうせ妄想の産物だ。消えようが増えようが関係ない」

 ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。

「待ってよー。感想とか疑問とか聞かせてよ」

「あぁ? そうだなぁ……まず、あのカラクリ時計は何だったんだ? 最初にかなり描写されていたから(ものがたり)に関わってくるのかと思っていたが」

「関わるよ。でもそれはだいぶ後になってから」

「赤い蝶も気になったな。あれは何なんだ? 継橋 明正を磐井 珠の夢に導いていたが、あんなのがいるなんて聞いてない」

「だって言ってないもん。言うまでもないし。ただの案内人だもん」

「……二番目の(ものがたり)はやたら長かったが、もっと短縮は出来なかったのか?」

「あれはしょうがない。あそこ以外でちゃんとした説明を入れられる場面はないから」

「……他にも」

「あーもう、多過ぎ! エジソンかい、キミは?」

「お前が聞かせろって言ったんだろ」

「疑問はあと一つだけにして。これ以上答えちゃうと興覚めしちゃうかも」

「誰がだ。……段々、現実の文章が夢と同じ構成になっていたな。継橋 明正は語りのくせに全く気づいていなかったが」

「それは完全に小林泰三先生をリスペクトしてだよ!」

「本当か? 文化祭や二番目の夢でページ使い過ぎただけなんじゃないか?」

「ギクッ!」

「情けない……。先が思いやられる」

「はいはい! じゃあ次は、友人キャラを演じた感想を聞かせて!」

「一言で言えば『面倒』だな。あんなウジウジした奴とは思わなかった。説教している時、あと少しアイツが言い訳していたらぶん殴ってたところだ」

「ごめんよぉ……。歴代主人公は皆そんな感じなんだよ」

「話がなかなか進まない上に、おかしな言い回しとかよくわからない例えが多くて、理解が困難だった」

「それは彼の個性だと割り切って、これからも付き合ってやって」

 ヒラヒラ。

「綺麗な桜だね。全部、マキ──湯之原(ゆのはら) 乙芽(おとめ)のために咲いて、そのまま何もせずああやって花びらを(いたずら)に散らすだけ」

「そんな奴らが何百も続けたせいで俺がこんな目に遭ってんだ」

「その清算をつけるためにこの物語は始まったんだ」

「早く終わらせてもらいたいものだ」

 ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。

「そういえば、湯之原 乙芽が創っていた縫いぐるみはどうなったんだ?」

「質問の受付は終了してるけど、特別にお答えしよう。あれはもう、乙芽の手が加わった時点で磐井 珠の(ゆめ)ではなくなり、ああなった」

 ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。

「さっきから何か聞こえると思ったらコイツらか。湯之原 乙芽の姿をしているのはそういうわけか」

「彼女には申し訳ないけど、縫いぐるみはここで管理させてもらってる」

「……? だが、継橋 明正と磐井 珠が東屋で会話するくだりで、最後の(ものがたり)が作用しているような描写があったが」

「それはわかんない。登場人物の全てを作者(ボク)がコントロール出来るわけじゃないから。よく言うでしょ? 『キャラが勝手に動いた』って。それと似たようなものだよ」

「制御できないとか、作者も大したことないな」

「胸が痛い……。けど、キミだって例外じゃないんだからね。実際、ボクを相当舐めているけど、そんな性格にした覚えはないよ」

「知るか。用はもう終わったか? 次の(ものがたり)まで寝させろ」

「わかったよ。お疲れ様」

 ヒラヒラ──



(きみたち)も来てたんだ。お疲れ様」

 ヒラヒラ。

「うん? どうして(わたしたち)のことを知ってるのかって? そりゃ、この(せかい)の創造主だからね。それに、そうなるようにカラクリ時計を置いたんだから。厳密にはボクじゃないけど」

 ヒラヒラ。

(きみたち)明正(かれ)を案内してたのも把握済みだよ。別にそれぐらいの勝手なら問題ないしね。それくらいしか、今のところ(きみたち)が出来ることもそれしかないし」

 ヒラヒラ。

「あ、そうだ。まだちょっとだけやることがあったんだ。僕はこの辺で帰るよ。(きみたち)も本の間に戻りなよ?」

ヒラヒラ──



 多武さんの家をお暇した後、僕とウメタカは駅近くの図書館に寄った。予約していた『世界(あなた)に恋したオトメ達』の二巻を受け取るためだ。

「ウメタカ、眠そうだね」

「……あぁ」

 ご機嫌斜め?

 カウンターで本を待っていると、

「あれ? 珍し。ウメタカが小説を借りるなんて」

「偶には……な」

 やっぱりご機嫌斜め?

「何て本?」

 ウメタカが見せてくれたのは、

(ものがたり)は続くよ、世界の果て(あなたのもと)までも』

 著:妻木(つまき) 春雪(はるゆき)

 へぇー、ちょっと親近感──

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