異世界でも外れスキル『妄想』を掴まされた不運な少年、役立たずと追放されてから流れが変わる。~覚醒したスキル『妄想具現』は、どうやら唯一無二の最強スキルのようです~
途中で力尽きたパターン_(:3 」∠)_
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『お前って、本当によく分からない奴だよな』
『可哀想だよ~! ほら、藤原くん泣いちゃうからさ~! あはは!』
学校の帰り道、クラスメイトから言われたことを思い返す。
彼らの言い方は決して、こちらを馬鹿にする意図はなかった。だけど問題は言われた内容であって、ボクは大きなため息をついてしまう。
何を考えているのか、よく分からない。
想像力が豊かといえば聞こえは良いけれど、要するはそういう意味だった。
「なにを考えているか、か……」
赤信号になったので立ち止まり、無意識のうちにそう呟く。
取り柄のないボクのような人間はそれこそ、掃いて捨てるほど世の中に転がっていた。それでもみんな、懸命に生きている。自分だってそのつもりだし、頑張っているつもりだ。
それでも、少しくらい良いじゃないか。
仮に自分の中に、他の誰も持たない力が眠っていたとして。
何かのキッカケでそれが目覚めて、大活躍するような物語を考えたとしても。どうせ何もできないのだから、そんな『妄想』くらい許してほしかった。
「ん……?」
でも、所詮は頭の中の絵空事で。
「え、あ……」
現実になんて、なりようのない夢物語で。
「ひっ……!」
ボクはなにもできないまま、ここで死んでしまうのだ。
物思いに耽っていたことによって、突っ込んでくる車から逃げられずに。
身体が宙に浮いたのが分かった。
世界が何度も回転して、全身がコンクリートに強く打ち付けられる。悲鳴が聞こえて、周囲がにわかに騒がしくなっていった。
そんな中でボクは、指先一つ動かすことができないで。
結局、最期まで何の取柄もないままに息絶えることになったのだった。
◆
「お前、本当に転生者なのかよ!? 仲間にしたのが間違いだったぜ!」
「この役立たず! 『妄想』とかいう使えないスキルしかない奴は、追放だ!!」
「……………………」
――言い返す気力も湧かない。
だって、彼らの指摘は至極もっともだったから。
何の因果か、ボクはあの交通事故で死んだことによって【異世界転生】をしたようだった。よくある夢物語の一つが現実になったことに、最初は喜んだ。……最初だけは。
心躍らせたのは、本当に最初だけだった。
ボクはすぐにこの世界での自分が、淘汰される側だと理解する。
周囲の人々は自分のことを転生者だと呼んで、それはもう喜んでいた。だけどそんな時間すらも一瞬で、ボクに与えられたスキルが使えないものだと分かると手のひら返し。
むしろ以前の世界よりも、ずっと厳しい扱いが待っていた。
まるで奴隷のように扱われる日々。
それでも、日銭を稼いで生きるには何かをしなければならない。
ボクはただただ傷だらけの身体に鞭を打って、労働に勤しむだけになった。
「なにが、異世界転生だよ……!」
思わず悪態が口をついて出る。
肉体労働から逃げ出して一念発起、冒険者となってみても世界は変わらなかった。それもそのはず、ボクに与えられたスキルは『妄想』という荒唐無稽なものだったから。
上手くどこかのパーティーに所属しても、役に立てなかった。
結果として、このように追放処分だ。
「……どうして。どうして、ボクばかりこんな目に遭うんだ?」
ダンジョンの中で仲間から取り残され、独りとなって拳を震わせる。
だって、そうだろう。
ボクはボクなりに、平凡なりに生きようとしていただけ。
それなのに、いつからかこの生涯はおかしくなってしまったのだから。どこに行っても邪魔者扱いされて、役立たずと罵られて、最後にはこうやって捨てられるのだ。
自分がいったい、何をしたのだろうか。
いったい、どんな悪いことをしてきたのだろうか。
「あぁ、そうだ。ボクは――」
そこまで考えて、ボクはようやく結論に至った。
その時だ。
「え、どうして……?」
地響きが鳴り渡って、絶望が目の前に姿を現したのは。
「こんなところに、ドラゴンが……!?」
立ち尽くすボクの前に出現したのは、身の丈二メートル以上はあるだろうドラゴンだった。そいつはゆっくりと、まるで舌なめずりをするかのようにこちらへ接近してくる。
そして、その大きな双眸でボクのことを見下すのだ。
膝から下が、いや――全身が、恐怖に震える。
「いや、だ……! もう死にたくない……!!」
その瞬間、脳裏に前の世界での死がフラッシュバックした。
耐えがたい痛みと、身体の至る場所から急速に熱が引いていく喪失感。あのような思いは、もう二度と経験したくなかった。だからボクは、いまの状況から抜け出そうと藻掻く。
しかし、それが間違いだった。
もとより力の入ってなかった脚を動かしたら、倒れてしまうのは当然。
「あ、あぁ……!」
手に持っていた剣を落としながら、ボクは無様に尻餅をついた。
そして、絶望そのものをただ見上げる。
ドラゴンはどこか、こちらを嘲笑っているように見えた。
それもまた、当然だろう。こんな間抜けな獲物は、そうそうお目にかかれない。だとすれば、人ならざる存在からも馬鹿にされて当然だった。
「………………」
そう、それが当たり前。
今までだって、何度も目にしてきた光景だ。だけど――。
「…………違う……」
そんな声が、無意識のうちにこぼれていた。
いったい何が違うのか。いったい、なにが間違っているのか。
その答えを探す。それはもしかして、自分は何も悪くないということか。
「……それも、違う」
だったら、いったい何だろうか。
ボクは今まで、何を間違えてきたのだろうか。それは――。
「ボクは、ずっと――」
きっと、とても単純なことで。
「自分からは何もせず、ずっと逃げていただけだ……!!」
きっと、とても大切なことだった。
◆
――スキル『妄想』の覚醒を承認します。
「え……?」
その時だった。
頭の中に、聞き慣れない声が響いたのは。
ボクは思わず呆気に取られるが、しかし次のそれを聞いて確信した。
――スキル『妄想』はこれより、ユニークスキル『妄想具現』へと進化します。
これはきっと『始まり』なのだ、と。
ずっと受け身だった自分から卒業して、一人の人間としてようやく旅立つため。そして、ずっと探し続けていた問いへの『答え』に他ならないのだ、と。
「『妄想具現:魔法剣』……!」
力の使い方は、分かる。
ボクは足元に転がっていた剣を拾い上げ、立ち上がった。
そしてそれを構えると、全身から今までに感じたことのない力が湧き上がる。魔法の才なんて、欠片ほどもなかった。だけどボクの力は、それすら凌駕する。
ボクには、やはり何の取柄もない。
だからこそ『妄想』するんだ。――『誰にも負けない自分』を!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ボクは駆け出して、力の限りに剣を振り上げた。
次の瞬間、剣は灼熱の炎を纏う。
そして――。
「これが、ボクだああああああああああああああああああああああ!!」
それは、まさに刹那の出来事。
火炎の剣を振り下ろすと、ドラゴンは瞬く間に焼失した。
あの大きな身体から断末魔の叫びを上げて、魔素の結晶へと還っていく。ボクはその輝きを見送って、しばし立ち尽くした後に――。
「あ、あれ……?」
思わず、またその場に尻餅をついてしまうのだった。
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