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第35話 戦いの終わり

カーラ 公爵令嬢 銀髪に翠の瞳

レフ  転生者 琥珀狐 カーラの相棒

コラン カーラの想い人(両想い) 王子 金髪碧眼

ヘルン コランの姉 王女 金に近い茶色の髪 碧眼

プラシノ  風の精霊


(ハク) 沼地に住む魔物 人の姿をしている

ハクリ 白の執事 白蛇の姿をしている


ロプト 悪神

 ロプトの突進を避けながら、反撃の隙を窺うレフ。


 ロプトが撒き散らす炎を避けて、プラシノがレフの隣に降り立った。


「レフ。チビを目覚めさせろ」


「えっ」


「俺が囮になるから、語りかけろ。

 魂を揺さぶれ。チビの意識を叩き起こせ。まだ、死んじゃいないから。

 チビは、ちっちゃくても神格持ちだろう。

 お前の声になら、応えるかも知らん」


 レフの声になら。レフにしか出来ない。


「ーーわかった。やってみる」


 フッと笑うプラシノ。

「気張れよ」


 レフを威嚇するロプトの前へ、進み出る。


妖緑刀(オリビン)


 プラシノの呼びかけに答えるように、緑色の剣が姿を現した。カーラの瞳の色より、少し黄緑がかった刀身の色をしている。


「俺とも遊んでくれよ、悪神サマ」


 言うが早いか、ロプトの眉間めがけて突きを繰り出す。

 拍子抜けするほど簡単に、切先が毛の奥に吸い込まれる。

 それもそのはずだ、ロプトは避けもしなかったのだから。

 

「効かねぇよ」


 血は流れている。手応えもあった。

 腐っても神、生き物ではないということか。


「なら、試せるもんはぜんぶ試してやる」




妖緑刀(オリビン)を複製ーー」


 プラシノのまわりに、緑の剣がずらりと、並ぶ。


(プラシノ)の名において命ずるーー」


 にやり、と笑って、悪役顔負けの合図を告げた。


「お前ら、串刺しにしてやれ」


 地を割って、大人の体躯くらいの太さはあろうかという木の根が、あちこちから飛び出す。


「ちっ」

 ロプトは逃げる。

 それら全てがロプトを追い、絡め取ろうとする。


 その隙間から、無数の剣もロプトを追っていく。


 プラシノ自身も剣をふるい、ロプトの尾を、足を、切りつけるーー。




「チビ! 起きて! 返事をしてーー!」


 レフは声に魔力を乗せて、叫んだ。


 逃げ回るロプトが、レフをちらと見て笑う。

「無駄だよ。チビは起きない。こんな世界、起きたって、何も良いことなんてないんだから。ーーおっと」


 キッとロプトを睨んで、レフは反論する。

 私自身は知らないけれど、この体が、元のレフの記憶が、教えてくれる。


「あの子はね! 自分の命をかけてでも、家族を! 友達を! 助けようと、できる子なの!

 あんたたちみたいに、損得で生きていないのよ!

 何でもかんでも駒扱いする、あんたたちと一緒にしないでよ!」


 あの子は優しい。

 優しいから、人を傷つける事を見たくなくて、眠ってしまったんだ。


「チビ帰ろう! ヨルズのところに帰ろう!」


 彼女は待ってる。でも、弱ってるはず。いつまで待てるか。

 これが、最後のチャンスかもしれないんだ。


「私と帰ろう! チビーー!!」


 レフの渾身の叫びに、ロプトが舌打ちをする。


「鬱陶しいんだよ! 嵐の意志(ケイモーン・ノテロス)


 ロプトが喚んだのは、雷を内包した竜巻だった。

 四方八方から発生したそれらのエネルギーに耐えきれず、プラシノが吹っ飛ばされる。


「プラシノ!」


 ひらりと受け身をとって転がった、プラシノ。


「大丈夫だ、ーー出てきたな」


 プラシノは見逃さなかった。ロプトの後ろに、微かにゆらぐ気配がある。

「あと少しだ」


 時は来た。


「コラン」


「ああ」

 わかっているというふうに、王子は頷く。


「こちらに引っ張れるかーー。やってみるよ」


 コランはゆらぎ(チビ)に照準を合わせて、力を解放する。

 プラシノが隣で、コランの力を誘導する。


「ーーーー空間魔力支配(ディアスティーマ)


「させるかよ」


 コランとチビのあいだに、ロプトが黒い魔力の渦を放つ。

 それを吸い取ったコランの手が、黒く染まる。

 激しい痛みが、手から伝わる。

「くっーー」


「私も、います」

 カーラがコランの手に、自らの手を重ねた。

 そこから、治癒の魔力を込める。コランの手の色が、痛みが、消えていくのがわかる。

 ありがたいが、しかし。


「大丈夫か」


 体は。毒の影響は。この力を使う自分のそばにいても大丈夫なのか。

 様々な可能性が脳裏をよぎったコランの心配を、カーラは笑って吹き飛ばした。


「はい! お供させてくださいませ」


「ありがとう。助かるよ」




 ーーきゃあああーー


 耳をつんざくような悲鳴が、響き渡る。


 泣いている。チビが泣いている。


 だから、泣くな。私は泣くな。


 レフは奥歯を噛み締める。


 コランたちの邪魔をしないよう、レフはロプトの足止めに全力を注ぐのだ。




「ーーっ、だいぶ離せたかと思うが、どうだ」


 コランがプラシノに問う。

 チビの魂が、コランに引っ張られて、もうすぐそこまで来ていた。


「ああ、そろそろだな」


 ーーきゃああぁぁーー


 痛そうに叫んでいる。

 まだロプトと繋がっているからだ。無理やり引き剥がしているからだ。

 しかし、意思は感じられない。ずっとロプトの中にいて、感情を溶かしてしまったのだろうか。

 レフは心の中で問いかける。




 ごめん。


 守れなくてごめん。


 弱くてごめん。


 探せなくてごめん。


 思い出せなくてごめん。


 ひとりぼっちにして、ごめん。


 もう、大丈夫だよ。


 一緒に、帰ろう。




 そして、すべてのちからをもって、高らかに叫んだ。


「最大出力ーー大地の鉄槌(ムジョルニア)!」


 レフの叫びに応じて、地面が盛り上がる。


「馬鹿が、チビもろともいくつもりか?!」

 ロプトの顔に焦りが見えた。チビが離れ始めたことによって、力を失ってきているのだろう。


「終わらせる! それが約束だ!」


 小山ほどもあろうかという大槌が、振り上げられる。


「やめーー」


 大槌はロプトのいた場所ごと押しつぶし、いや、一帯の全てを叩きつぶし、地に沈め、そのまま大地と一体化した。


 地震のような揺れが、しばし続いた。




「はぁ、はっーー」


 地面に転がって、レフは空を仰いでいた。


 どうなっただろう。


 チビは。


 ロプトは。


 からだじゅうが痛い。


 もう、一歩も動けないぞ。


 その時。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「ありがとう」


 声が降ってくる。


 夢できいた、声だった。


「ヨルズ」


「これで、あの子と一緒にいけます」


「ごめん、ごめんーーヨルズ」


 謝罪の言葉が、口から溢れていた。

 もっと早く、思い出していれば。


「あなたがいてくれて、よかった。レフの中に来てくれたのが、()()()でよかった」


 ーーーー!


 知って、いたのか。

 レフの中身が、レフではないと。


「あっーー」


 空に浮かぶ雲に、女神の姿がうつってみえた。


 優しい母親の顔をした女性だった。


 腕の中に、小さな少女が眠っていた。


 そしてその傍らには、小さな子狐も。


「レフ」


 そこにいたのか。ずっと。彼女と。


「そっか。そっかぁーー」


 よかった。ちゃんといけたんだね。


 もういいかな。少しだけ流しても。


 あたたかい涙が、あふれておちた。


 転生した先が、あなたでよかった。


 

「こちらこそ、ありがとうーー」

読んでくださってありがとうございます!


そろそろ締めに近づいてきました。


あと少し、お付き合いいただければ幸いです。

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