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第28話 幸運と狡猾

カーラ 公爵令嬢 銀髪に翠の瞳

レフ  転生者 琥珀狐 カーラの相棒

コラン カーラの想い人(両想い) 王子 金髪碧眼

ヘルン コランの姉 王女 金に近い茶色の髪 碧眼

ロナルド(ロニー) カーラの兄


プラシノ  風の精霊


(ハク) 沼地に住む魔物 人の姿をしている

ハクリ   白の執事 白蛇の姿をしている

トッチョ  白に救われた少年


キャンディ 帝国第七王女

「黒騎士たちは、意識が戻ったものから捕虜として隔離しています。今のところ、精神への後遺症などは見受けられません」


 エリアスの報告を受けて、頷くコラン。


「レフ」


「ん? 何、コラン」


「体は、本当に大丈夫かい?」


「うん、絶好調」


「ならよかった。あちらに文句を言いに行くなら、私もお供するよ」

 にっこりと笑っているけど、おだやかな目つきではないな。


「私も」

 カーラが立ち上がる。カーラはいつも可愛い。


「俺も行くよ」

 プラシノも、レフの前に飛んできて、言う。


「コラン様が行くなら、俺も行くんでしょうね」

 行きたそうでも嫌そうでもなく、エリアスが言う。


「助かるよ、エリアス」


「慣れましたから」

 王子の無茶振りは信頼の証だと思っている。

 悪い気はしないエリアスだった。

 以前、そう言ったら、なぜかロナルドに哀れみの目を向けられたけれど。

 ……ヘルン殿下の無茶振りに比べたら、可愛いものである。






 国境の渓谷、その崖っぷち。


 向こうからよく見える位置に陣取って、レフは帝国側の兵たちを見据えた。


 一般の兵や魔道士は見受けられるが、目標の()は見えない。


 突然現れた琥珀狐ーーのような大型犬のような動物に、注目が集まっている。

 こちらを見る人々の顔は、興味本位が半分、不安が半分といったところか。


 外の空気を胸いっぱいに吸い込んで、レフは声を張り上げた。


「聞こえるか、鴉! 蛇男!」


 共鳴するように地鳴りがして、大地が揺らぐ。


 帝国兵士の陣営から、ざわめきが起こる。


「地震か?」


「川の水が減っているぞ! 何かの予兆かもしれない」


 何かもなにも、レフが仕掛けているのだが。


 彼らはまだ、所詮子狐ーーもう子狐ではないけれどーーと、侮っているのだろうか。


 ならば見せてやる、とレフは昂る。


 二度と、余計な事をする気になれないように。


「私は、この地に住まう女神の代理である。私はこの力を、この国を守るためだけに使う」

 次の言葉を考えていると、ついつい敵意が漏れ出てしまう。鴉や蛇男のやったことが、許せなくて。


「しかし、お前たちは、この地を血で汚した」


 レフが高らかに宣言する。


 魔力による拡声で、帝国の兵卒の末端まで声は届くだろう。

 レフが話している間、ずっと地面は揺れていた。

 この揺れに動揺せず耳を傾けられる豪胆な兵士以外は、耳に入っていないかもしれないが。


 ズズズズズ……


 川の水が減っている。


 いや、川の幅が広がって、嵩が減ったように、見えていた。


 ……バキバキバキ!


 大地が動き、離れる動きに耐えられなかった木々が、根元から裂けてゆく。


 川面が、どんどん急激に下がっていた。


 広がるだけではなく、深く深く裂けてゆく。


 レフは前足をどん! と地に叩きつけ、威嚇する。

「次にここを、一歩でも、越えてみろ。次は、お前らの帝都の真ん中を割ってやる」


 やっと、この揺れが狐によるものだと理解したらしい。


 兵士たちの顔に、畏れや嫌悪が見え隠れする。


「物騒ですな」


 ひとつの天幕から、鴉が飛び立った。

 崖の上を飛びながら、皇帝は言う。


「まぁ良い。我らは侵攻してきたわけではないのだよ。我が娘の臣下の失態を、わが娘の命で責任を取らせたにすぎない。我が国と貴国の争乱を誘発しようと企んだ侍女のロベリアーー実行犯も、そのあたりの森に潜んでいるだろう。煮るなり焼くなり好きにしてくれ」

 

 次のシナリオは、それか。

 負けそうになれば手のひらを返して。ならば最初から仕掛けなければ良かったのに。


 ペラペラと喋り続ける。

「これでも、娘が死んでしまったことは残念に思っているのだよ」


「お前が殺したんだろうが、どの口が言う」


「ふん。人間とは複雑なのだよ。獣にはわかるまい」


 バササッーーーー


 鴉は旋回して、帝国へ戻っていく。

 レフは追わなかった。

 本命は小物(あいつ)じゃない。


 ひらり舞い落ちた黒い羽が、大きく広がった大地の裂け目ーーその谷底に吸い込まれていった。






 レフが視線を正面に戻すと、そいつはいた。

 黒髪に貧相な黒ローブの少年ーーいや、蛇男。


「え、『幸運』お前、覚醒しちゃったの? 命に関わる怪我でもないと、覚醒はしないと思ったのだけど。あの程度で瀕死になるなんて、きみ、よっぽど弱くなってたんだねぇ」


 いちいち癪にさわる喋り方をする。

「私の名前はレフだ」


「レフ、ね。俺はロプト。『狡猾』のロプト。ねぇ、覚えてる? 10年前はさぁ、お前、あのちびっ子のことが守れなくて、ボロボロになって逃げたよねぇ。

 あいつを取り込んだおかげで、おまえにトドメをさせなくなったことが忌々しかったけれど。もう一度遊べるなら、悪くはないかなあ」


 ロプトと名乗った少年の言葉の端々が、レフの記憶を掘り起こす。

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