第23話 呪いのたまご
カーラ 公爵令嬢 銀髪に翠の瞳
レフ 転生者 琥珀狐 カーラの相棒
コラン カーラの想い人(両想い) 王子 金髪碧眼
ヘルン コランの姉 王女 金に近い茶色の髪 碧眼
ロナルド(ロニー) カーラの兄
プラシノ 風の精霊
白 沼地に住む魔物 人の姿をしている
ハクリ 白の執事 白蛇の姿をしている
トッチョ 白に救われた少年
キャンディ 帝国第七王女
少し時間は遡りーー
キャンディたちが旅立ったすぐあと。
気持ちの糸が切れたように、ヘルンが床にへたり込んだ。
「ヘルン!」
「ヘルン殿」
呪いを受けた場所を、押さえている。
年若い王女に余計な心配をさせないように、ずっと気丈に振る舞っていたのだ。
「顔色が悪い。客室に戻りましょう」
ヘルンが使っている部屋に移動して、寝台に横にならせる。
カーラが思いつくすべての治癒や解呪の魔法を試してみたが、結果は思わしくなった。
ヘルンの傷口を、白とレフ、プラシノが順に診ていく。何か突破口はないだろうかと。
状況は、良くない。
患部が腫れたように盛り上がっている。
「なんだか、疼くのよ」
眉をひそめて、ヘルンが言う。
レフがそっと触れると、微かな鼓動のような脈拍のようなものを感じる。
白は難しい顔で言った。
「取り出して、みましょうか」
「そうね……試してみようかしら。お願いできる?」
「下手に魔力で切らない方が良いかもしれない。麻酔をして切除しましょう。手術道具をとってくるよ」
研究も臨床もいける医者のようだな、白さんは。と、レフは思った。
この世界の医療は、レフがいた元の世界よりだいぶ遅れている。
治癒魔法があるから、比べることが違うのかもしれないけれど。
そんな中で、白は魔力に頼らない医療も研究しているのだと言っていた。
白とヘルンがいれば、きっとこの国はもっと良くなる。
異世界人にだってわかる。
この最強美人は、この国の未来に絶対に必要だ。
こんなところで、失ってはいけない。
「私も、お手伝いいたします」
白の後を追う、カーラ。
カーラと白がいったん退室した、すぐ、あとのことである。
しこりが、みぶるいをしたーーように、見えた。
次の瞬間。
しこりから、何かが飛んだ。
「ーーっつ!」
ヘルンが、苦悶の表情を浮かべる。
「あぶなっーー」
レフは叫んだ。
「ひゃあっ!」
ちょうど扉が開いたところだった。湯を運んできたミルズに向かい、玉は飛んだのだ。運が悪かったのか、それとも弱いものを狙ったのか。
(まるで映画の中の地球外生命体じゃない! このままじゃ、ミルズに当たっちゃうーー!)
その玉は飛びながら、元のたまごのような形から、鋭い鱗のような形に変化したように、レフの目には映った。
一瞬の事だったと思うのだけれど、まるで世界がコマ送りになったようだ。
走馬灯って、こういう時に見るのだっけ?
あれ、でも走馬灯って、昔の記憶よね。
ああ、走馬灯だなんて、縁起でもなかったわねーー。
そんな事も思っただろうか。
レフは咄嗟に、ミルズの前に走り出ていた。
ガシャン!
ミルズの手から器が落ちる。
湯が飛び散る。
「あ、あ……」
レフが突き飛ばしたミルズが、真っ青な顔でこっちをみている。
「ミルズ……だいじょうぶ? どこもいたくない……?」
「レフちゃん!」
ヘルンが叫ぶ。
レフの脇腹に、痛覚が遅れてやってきた。
結界魔法を、はる時間もなかった。
自分の迂闊さを呪う。
呪いを仕込むような相手だ、もっと慎重になるべきだった。
こんなところで、安全な国で生きてきた自分の甘さが、足を引っ張った。
ぐるる、と唸って歯を食いしばろうとしたけれど、何だか力が入らない。
毒だろうか。力が抜けて、目を開けていられない。
体から血が流れる感覚は、いつぶりだろう。
ああ、そうか。
カーラと初めて出会った時だ。
「レフ!」
あれ、カーラの声がする。
あの時もこうやって、カーラはレフを腕に抱いて、回復魔法をかけてくれて。
それでーーえっと、なんだっけ……。
みんなのこえが、とおくなっちゃう……。
レフは温かい腕のなかで、意識を失った。




