表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/39

第20話 ヘルンの帰還

「ヘルン殿、よくご無事で」


 ヘルンたちを連れて、沼地まで戻ってきた。

 白が心配そうな顔で、出迎えてくれる。


「心配をかけたわね。鏡も割れてしまって……」


「新しい物をこさえましょう」


「ありがとう。ーーそれに、悪いわね。大所帯を受け入れてもらって」


「あのような場所でよろしければ」

 何でもないことだと、白は静かに微笑む。


 居室空間に全兵士をいれるのはさすがに無理があったので、洞窟のような広い空間に野営スタイルで滞在してもらっていた。いまはコランとカーラやプラシノ、トッチョたちが、皆に温かい食事を運んでいる。戦場においては、立場や身分は関係ないという人たちだ。

 王子や公爵令嬢に食事を手渡される兵卒側の気持ちとしては、落ち着かないだろうけど。

 ちなみにレフが運ぶとお料理に毛が混じってしまいそうなので、こっちの方に来ることにした。

 レフとヘルン、そしてエリアスという魔道士の青年だけが、こちらに来たメンバーだ。


 ヘルンは首を振って、頭を下げる。

「雨風がしのげればじゅうぶんよ。本当に、ありがとう」


「私に居場所をくださったヘルン殿に、こんなに早く恩返しができるとは。思いませんでしたぞ」

 いたずらっぽく笑う白に、ヘルンも笑顔を返す。

「ある意味、怪我の功名かしら」


 さてーー。と、白の後ろに控えていた少女に目を移すヘルン。

「実際にお会いするのは初めてかしら。王宮にいらしていた時は、お会いできなかったから」


 そう言って、使者の書簡をキャンディに手渡した。


「こちらを、御一読いただける? あなたの気持ちの通りにして良いから」






 読み終わった書簡を握りしめて、喉の奥から絞り出すような声で言うキャンディ。

「私が、行きます。行かせてください」


「わかったわ。一応、コランと、このエリアスも付けさせるから」


 思い詰めたような表情で固くなっている少女に、ふわりと笑いかけるヘルン。


「ねぇ、そんなに深刻にならないで。こんなのはどーお?」


 そう言って、部下に指示を出す。

「エリアス」


「はい」


 ヘルンにエリアスと呼ばれた赤茶色の髪の青年が、レフにとっては少し見慣れた物体を、横抱きに運んできた。


(え、マネキン?)


 マネキン。だろう。

 デパートとかで服を着ている、あの。

 素材は木と布だろうか。顔はのっぺらぼうで、髪はない。


自動人形(オートドール)


 エリアスが唱えると、マネキンが自分で立った。


(やだ、気持ち悪い)

 夜道でこんなのに遭遇したら、さすがのレフもチビってしまう。


「憑依術を使って、あなたの精神をこちらに移せば、肉体はこの空間においたままで、沼地の方に出て行くことができます。憑依した段階で、自動人形の容姿及び服装は本体のあなたと同期いたします」

 澱みなく説明するエリアス。

 何だかこの名前、どこかで聞いたことがある気がするのよねぇ。会ったことがあったかしら。このお顔にも片耳のピアスにも、覚えはないのだけれど。

 あとでこっそりヘルンに聞こうっと。


「あっちだって、どうせ本体はでてこないでしょ? 鳥に憑依させるか、人形に憑依させるかの差。お互い様よ」


 悪びれずに言うヘルン。そういうところ、好きだわ。


「もし、あなたがーー自動人形(オートドール)が殺されたら。うちの国で、戸籍を作ってあげるから。一から生まれ直しなさいな」

 そう言って、優しくキャンディの髪を撫でた。


「その程度のフォローしか、できないけれど。たとえ仮の体だとしても、本体に痛みやダメージを受ける可能性は大いにあるけれど。それでも、行ってくれる?」


 無駄な争いを止めるために。


「はい。私は、責任をとれる人間になりたい。自分の望む人生に生まれ直すことができるなら。伴う痛みから逃げる事は、いたしません」

 しっかり前を向いて言うキャンディ。数日でとても頼もしく成長したように見えた。


(私、この子のことが好きになれそう)

 ぜんぶ終わったら、お友達になってと話しかけてみようかなと、レフは思った。


 ぜんぶ終わらせたら、皆で笑いあって、美味しいものを食べるのだから。ーー絶対に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ