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第19話 狐と鴉

「お、いたいた」


 森の中、少しひらけた広場のようなところに一行はいた。

 聞いていた特徴にあうのは、一際目を引く金に近い茶色の髪の美女。あれが、中央国のヘルン王女か。


(げぇっ)


 よく見たら、ついこのあいだ、殺されかけた、見た目は美しい魔力の化け物ーー銀髪の令嬢も一緒ではないか。

 体が、彼女に近づくのを拒否している。この身に恐怖が染み付いているのだろうか。


(嫌やけど、仕事せなどっちみち首飛ぶしなぁ。しゃあないなぁ)


 意を決して、ヘルンたちの前に降り立った。


「えぇっと。はじめまして。使者です」


 一斉に、注目を浴びる。


 銀髪の彼女が細剣の柄に手をかけたので、背中を冷や汗が伝うような気分になった。


 最初に口を開いたのは、琥珀色の子狐だった。

「鴉が喋った」


「いや君も喋っとる狐やん!」

 しまった。思わずツッコミをいれてしまった。


「なんだかちょっとプラシノっぽい鴉ね」


「やめろよ、俺はこんなんじゃねぇよ」

 侮蔑の色を含んだ目でこちらを見下ろしながら、そう言い捨てたのは緑の髪があざやかな精霊だ。


「アンタら、初対面で失礼すぎひん……?」


 しかしこのノリ、嫌いじゃない。

 ボケのひとつも懲罰の対象になりかねないような帝国軍の体質が、そもそも自分には合わなかったのだ。


(いっそこっち側に転職したいわぁ……)


「初めましてじゃ、ないですよね」

 銀髪の娘の目が、恐ろしい光を湛えている。


(ひぃ! バレてたんか!)


 しかし、ということは、バレていたのに殺されなかったということだ。

(実は優しい上司……しかも美人……本気で考えようかな、転職)


 帝国がそれを見逃してくれたら、だけれど。

 うん、現実的ではないなと、我にかえる。


「えぇっとぉ。その節は、どうも。今日は使者としてきてますんでぇ、ちょっと読ませてもらいますねぇ」


 腰は低く。誰よりも低く。使者が生き抜く為の基本だ。


「帝国皇帝からですぅ。ーー我が娘キャンディが、中央国にて行方不明とのこと。コラン王子自ら、しっかり説明をしていただきたい。そして娘の消息いかんによっては、相応の謝罪と弁済を求める。こちらの条件が飲めない場合、じ、実力行使に出るものとするーー。ちゃいます、これ書いたのオレちゃうんで! 今にも切り捨てそうな睨みきかすのやめてください!」


 銀髪娘の目が怖い。目線だけで魂が燃やされそうだ。

 どこの上司も、こんなに短気なのだろうか。

 来世は穏やかな上司のもとで働きたいなと思いながら、読み終わった書簡をヘルン王女に手渡す。


「……っちゅうわけなんで、オレはこれでぇ」


「待ちなさいよ」

 がっつり肩を掴まれた。

 肉球の先からのびた鋭い爪が、いまにも喉元に食い込みそうだ。


「あんた、ガチの鴉なの? それとも、憑依しているの?」


 そんな事を敵陣で答えられるか。

 この体が憑依した仮のものだと知られたら、容赦なく斬られるかもしれないではないか。

「それは企業秘密っていうかぁ」


「魔道士の憑依術だな」

 プラシノの一言がばっさりと切り捨てた。彼の必死の抵抗を。


「精霊の兄さん、冗談きついて〜」


 揉み手をする勢いでへりくだったのだが、緑色の精霊には、何故か舌打ちをされた。解せぬ。


「あなたにそれを命じたのは、皇帝の意思かしら? それとも黒い髪の少年かしら」


 書簡を受け取った王女は、彼を見据えて問う。

 あの小僧はこの王女を倒したと言っていたが、彼女の目はまだ負けていないと言っている。


「わかってるんやったら、意地悪いわんとってくださいよ。王女さま。オレも自分の命は惜しいんで」


「まぁ良いわ。レフちゃん、はなしてあげて」


 やっと解放された。


 ヘルンが言う。


「キャンディ王女の件は検討いたしますわ。こちらの用意するものが、皇帝に納得いただける答えかはわかりませんが。明日、国境に使者をやります。ーーそう、()に伝えてくれる?」

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