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第1話 続きの始まり

カーラ 公爵令嬢 銀髪に翠の瞳

レフ  転生者ーヒロミ 琥珀狐 カーラの相棒

コラン カーラの想い人(両想い) 王子 金髪碧眼

ヘルン コランの姉 王女 金に近い茶色の髪 碧眼


ロナルド(ロニー) カーラの兄

シーミオ カーラの母

ロイル  カーラの父


ジャスミン 町の料理店の店主

ケイト   転移者ーマミ ジャスミンの店の店員

プラシノ  風の精霊

 スマラグドスの本邸に、楽しげな声が響いている。


 どこの世界も、結婚式の準備は一大イベントだ。


「やっぱりさ、カーラの綺麗な髪に映えるのは、長ぁいレースのヴェールだと思うのよ!」


 その姿を思い浮かべて、うっとりとしながら提案するレフ。

 琥珀色の尻尾が忙しなく揺れる。


 美しい銀髪を覆う極薄のヴェールが、床まで広がる。ベースは無地のほうが、カーラの美しさを引き立てると思う。

 裾のほうには、繊細な刺繍のレース。

 ところどころに、白い小花の刺繍も要るな。

 

 細かく伝えた内容を、ケイトが絵に起こしてくれる。


「レフちゃん、センス良い〜!」


 黒髪の少女ーー実年齢はもう少し上なのだがーーが、歓声を上げる。ケイトは元の世界では、マミという名で、レフーーヒロミの店の店員だった。

 絵を見ながら、はしゃぐふたり。


「ふっふっふ。ダテに数多の友人達の花嫁姿を見送ってはいないのよ!」


「ヒロミさん、ずっとパートナー募集してたもんね……」


 ケイトが急に遠い目をするので、なんだかいろんなことを思い出してしまった。


「やだ、しんみりしないでマミちゃん。そんなつもりじゃないのに、悲しくなっちゃう」


 そうよ、と握りこぶしに力を込める。肉球だけど。


「私は幸せだったわ?! 大好きなマミちゃんと、友達と、常連さんとに囲まれて。人に恵まれた人生だったわ?!」


「私も。ヒロミさんだった頃も、レフちゃんになってからも、大好きー!」


「マ……ケイトちゃん……!」


 ふたりで抱き合っていると、応接室の扉が開いた。

 

 ガチャ


 噂をすれば。

 式の主役、カーラの登場だ。


「あ、カーラさん! お邪魔しています!」


 ケイトが勢いよく立って、挨拶をする。

 それに、カーラが手を振って応える。

 翠色の瞳は今日も美しいし、腰までの髪は枝毛のひとつもない。

 うん、推しが今日も最高に可愛い。


「いらっしゃい、ケイトちゃん。今日は私たちのために、ありがとう」


 カーラの後ろから、使用人のメイが、お茶菓子と紅茶を運んでくれる。テーブルに並べるのを機敏な動きで手伝いながら、ケイトが言う。


「こちらこそです! いつもありがとうございます! カーラさんの結婚式のお料理を担当させていただくなんて、感無量です!!」


 そうなのだ。


 つい、ドレスにヴェールにと脱線してしまったけれど、今日は、お料理の打ち合わせなのだった。


 結婚式は、1年後。


 しかし、貴族のそれともなると、準備は大変だ。

 まぁ、前世の友人たちも、そうだった。庶民だけれど、半年から1年くらいは準備にかけていたっけ。


 こちらの世界では、ホワイトウエディングの習慣はないようだ。

 本来のやり方だと、ヴェールを被ることもないし、バージンロードのならわしもない。


 縁のある者を招待し、お披露目するのが目的である。


 食事は出たり、出なかったり。


 お酒は出る。必須。

 なんだかこの世界の人々は、お酒が大好きかつ強いのだ。


 さすが貴族社会というか、新郎と新婦のダンスも必須らしい。


 まぁ、地球とは違う進化を果たした、異世界の文化圏なのだから、いろいろと違って、当たり前か。


 しかし、レフとケイトは、前々からこっそりと密談をしていたのだ。


 薄く透ける純白のヴェールからこぼれでる、カーラのきらめく銀の髪。


 女神のような、細身のマーメイドラインのウエディングドレスをまとったカーラ。


 家族や、親しい友人たちに見守られて。


 ロイルの腕をとり、一歩、また一歩と、コランのもとへ歩くのだ。


 そして、最愛の人の前で、初めてその美しい顔をヴェールから出して……。


「「いい!! 推せる!!」」


 ドン! とテーブルに突っ伏した衝撃で、ティーカップがカチャリと音を立てた。


 やだ、私たち、興奮しすぎたわ。失礼。


「オセ……?」


「あ、ごめん、前世語なの」


「あちらの言葉は複雑なのね……」


 カーラが楽しそうに笑う。それだけで幸せを感じることができるレフである。

 

「あ、これ、ケイトちゃんが描いてくれたの?」


 ひら、と手に取った一枚の紙。

 あーでもないこーでもないと言いながら、最終的に出来上がった、ウエディングドレス案だ。


 マミちゃんはあっちの世界ではbarで働きながら、デザイナーの勉強もしていたから、とっても絵が上手なのよね。


「素敵……! 異世界のドレスって、洗練されているのねぇ!」


「あ、ママさん」 


「奥様! お邪魔しております」


 シーミオが、いつの間にか覗き込んでいた。

 亜麻色の髪がゆるやかに波打つ、優しげな目をした美女。

 しかしその実は、この国で一番怒らせてはいけない人間だとレフは思っている。

 スマラグドス家の人たちはいちいち気配を消すので、心臓に悪い。

 前世の事は、スマラグドス家の皆には話していた。

 シーミオは興味津々で、異世界のことを聞きたがった。主に食事と酒と洋服についてだが。


「ね! お母様。本当に、素敵よね。二人とも、ありがとう」


「素敵なお式にしますから」


「楽しみにしててね!」


 この国では、結婚を神に誓う習慣はないので、人前式だろうか。

 進行は誰にしてもらおう。

 ブライズメイドはミーリとミルティアにお願いしたい。


 夢が膨らむわ!


 毎日が楽しくて仕方ないの。


 もし今、ふたりの邪魔をする奴があらわれたら、何をしちゃうかわからないくらいに。

読んでいただき、ありがとうございます。


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